(No.112)

南スーダンにおける出血熱
2016年5月19日更新

 2015年12月末から2016年5月上旬までの間に南スーダンの国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関
(WHO)に対して出血熱のアウトブレイクが発生していることを報告しました。
 5月9日現在10人の死亡例を含む51人の疑い患者が報告されています。北アウェルで10人の死亡を含む
45人、西アウェルで6人となっています。医療従事者は含まれていないとのことです。また、多くの例
(74.5%)が20歳未満です。最新の死亡例は2月28日に発生しています。
 症状として不明の出血傾向、発熱、全身倦怠感、頭痛、嘔吐などがあります。症状は重篤ではなく対症
療法で急速に改善に向かいます。これまでのところ、ヒトヒト感染は確認されていません。33人の患者から
得られた検体はWHOの協力機関であるウガンダのウイルス研究所、セネガルのダカールにあるパスツール
研究所、南アフリカの国立感染症研究所に運ばれ、プラーク減少中和試験、ポリメラーゼ連鎖反応、酵素
結合免疫吸着検定で検査されています。結果はクリミアコンゴ出血熱、エボラ出血熱、マールブルグ病、
リフトバレー熱、黄熱、ウエストナイル熱、ジカウイルス感染症ともに陰性でした。5検体でオニョンニョン
ウイルスが陽性、3検体でチクングニアウイルス陽性、1検体でデングウイルス陽性でした。病原体決定の
ための詳細な検査が実行されています。他に検査中の病原体としてレプトスピラなどの細菌感染症や
マイコトキシンなどの食中毒等があげられています。生態学的にみた危険因子としてアルボウイルス疾患の
感染はこの地域でみとめられています。

公衆衛生対策
 WHO のサポートのもと国家の専門家は多くの公衆衛生対策を実施中です。それらには新規に報告された
疑い患者の調査と治療、サーベイランスの改善と感染予防とコントロールの強化などが含まれます。さらに
国民の出血熱に対する注意喚起のための会合が実施されています。WHOの同国における事務局の要望に
応じてWHOのアフリカ地域事務局から検査資源が投入されています。

WHOによるリスク評価
 今回の検査結果では現在の所、不明の出血傾向や高い死亡率について説明のつく原因は認められて
いません。今回の公衆衛生上の問題の特定原因が不明のままであるので今後詳細なモニターと更なる疫学的な
調査が必要です。今回のアウトブレイク発生地域は2015年8月から11月にかけて120人の死者を含む469人
の診断不明のウイルス出血熱が起こったスーダンのダルフールと接しています。スーダンと南スーダンとの
間では人の往来が激しいために国際間での本疾患の拡大の危険性はぬぐえません。WHOは引き続き利用
可能な最新情報をもとにリスクアセスメントと疫学的状況のモニターを継続して行きます。

WHOによるアドバイス
 WHOは現在入手可能な情報に基づき、南スーダンとのいかなる渡航や交易の制限を推奨はしていません。

【出典】
Emergencies Preparedness,response
Haemorrhagic fever syndrome – South Sudan
Disease Outbreak News
19 May 2016
http://www.who.int/csr/don/19-may-2016-hf-south-sudan/en/