(No.123)

コンゴ民主共和国における黄熱
2016年6月2日更新

 2016年3月22日、コンゴ民主共和国(DRC)の国際保健規則(IHR)担当窓口は、世界保健機関(WHO)に
対して、アンゴラで引き続き発生しているアウトブレイクに関連した黄熱(YF)感染例を報告しました
(DON4月13日更新情報〈関空HP:海外感染症情報2016 No.80〉をご参照下さい)。

 5月31日現在、同国のサーベイランスシステムによって全ての州から63人の死亡者を含む合計700人の
感染疑い例が報告されています。検体が689人から採取され、検査で確認するために首都キンシャサにある
国立生物医学研究所(INRB)と隣国セネガルの首都ダカールにあるパスツール研究所(IP)へ送付されました。
現在まで、合計52人の検体において、YFが陽性であることが確認されています。

 52人の感染確定例が、5つの州から報告されています。:コンゴ中央州(36人)、キンシャサ特別州
(11人)、クワンゴ州(3人)、低ウエレ州(1人)、ツアパ州(1人)。低ウエレ州とツアパ州からの2人は森林型で、アンゴラのアウトブレイクとの関連性はないと考えられます。52人の感染確定例のうち2人は、
現地感染例として分類されており、それぞれキンシャサ特別州とコンゴ中央州から報告されています。残りの46人の感染確定例はアンゴラからの輸入例に分類され、コンゴ中央州(34人)、キンシャサ特別州(9人)、
クワンゴ州(3人)で発見されています。

公衆衛生上の取り組み
 アウトブレイクへの対策として、国家調整委員会が立ち上げられました。これには「アウトブレイク対策
としてのワクチン接種」、「サーベイランスと検査」、「媒介蚊対策」、「社会動員」、「症例管理」の
5つの小委員会が含まれる予定です。

 YF感染疑い例に関して、連日引き続き調査が行われています。5月12日、ダカールのIPの支援を受けてDRC政府当局は、感染者の確認を促進するために、モバイルラボを同国内に設置しました。5月26日、
アウトブレイク対策としてのワクチン接種キャンペーンが、コンゴ中央州の9つの健康管理区域と
キンシャサ特別州の2つの健康管理区域の1,983,597人を対象として開始されました。ワクチン供給の
国際調整グループ(ICG)は、DRCに対するワクチンの請求を承認し、2,200,000回分のワクチンと
キャンペーンの運営資金を配布しました。

 WHOは、緊急対策フレームワーク(ERF)に従って、今回のアウトブレイクをグレード2の緊急事態に分類しました。またWHOは政府当局に技術的な支援を行うために、コンゴ中央州とキンシャサ特別州に対して
多くの学問領域にわたる専門家チームを派遣しました。WHO国内事務局は、アウトブレイク対策として
更なる技術的および財政的な資源を動員するための計画を完成させています。

WHOのリスク評価
 DRCは、YF伝染の危険性が判明している地域に位置しています。感染者は定期的に報告されていますが、
人口密度の高い地域におけるYFアウトブレイクは異常事態です。キンシャサ特別州とその他の州において
感染者が確認されたことは、DRCにおける更なるYF拡散の危険性を鮮明にしています。アンゴラからの
継続的なYFの輸入、YFワクチン接種地域の範囲が現状不十分であること、環境因子および媒介蚊が
高密度に存在すること、などから、同国における新たな現地感染例の発生が予想されます。更に、
近隣国においては、DRCとの間に多くの住民の往来があるために感染の拡散の危険性があります。
そのため、更なる感染の拡散を回避するためにDRC政府当局が適切な感染対策とサーベイランス、
特にアウトブレイク対策としてのワクチン接種キャンペーンおよび国境を越えた介入を行うことは
大変重要です。WHOは、利用可能な最新の情報に基づいて、引き続き疫学的な発生状況の監視とリスク評価
を行います。

WHOからのアドバイス
 YFは、旅行の最低10日前に投与されたワクチンによって提供される免疫によって、簡単に
防ぐことができます。WHOは、その加盟国、特に地域の感染サイクルが完成し得る(例えば感染を伝播
しうる媒介蚊が存在している)地域の国々に対して、流行が発生しうる全ての地域への旅行者に対する
ワクチン接種状況の管理を強化するように強く促しています。

 WHOは、このアウトブレイクに関して現在入手可能な情報を踏まえますと、同国に対するいかなる旅行や
貿易の制限をも推奨しません。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
Yellow fever – Democratic Republic of the Congo
 2 June 2016
http://www.who.int/csr/don/02-june-2016-yellow-fever-drc/en/