(No.126)

ペルーにおけるオロポーチ熱
2016年6月3日更新

 2016年5月2日、ペルーの保健省はオロポーチ熱の患者57人を報告しました。患者のほとんどは
アマゾンの熱帯雨林である、クスコ州の北部の町からの報告です。
 報告された患者のほとんど(79%)は1月に診断され、7%は2月に、14%は3月に診断されました。
現在までに死亡者はなく、全ての患者は対症療法により回復しました。
 2016年2月、ペルー保健省と汎アメリカ保健機構(PAHO)/世界保健機関(WHO)が共同して
マドレ・デ・ディオス州へ派遣した現地調査団は、デング熱(デングウイルス2型)とオロポーチウイルスが
混在したアウトブレイクを明らかにしました。マドレ・デ・ディオス州はすでに1994年に
オロポーチウイルスのアウトブレイクを経験したことがありますが、2月の派遣の時点で直近の
アウトブレイクは120人に達しており、より重大な事態にありました。

公衆衛生上の取り組み
ペルーの保健当局は以下の公衆衛生案を実施しました。
・患者への治療を提供
・疫学的および昆虫学的調査の指導
・媒介虫のコントロール

WHOのリスク評価
 オロポーチ熱はペルーですでに以前から報告されていました。しかしクスコ州では初めての症例でした。
この特定の地域での疾患の発生を説明するためには、媒介虫であるヌカカがクスコ州に存在するかどうかを
明らかにすることが重要になってくるでしょう。現時点では、クスコ州とペルーの他の地域でさらに患者が
発見される可能性例は無視できません。アメリカ大陸での媒介蚊の広大な地理的分布を考慮すると、
他国で症例が見つかる危険性はかなり高いです。WHOは利用可能な最新の情報に基づいて引き続き疫学的な
発生状況の監視とリスク評価を行います。

WHOからのアドバイス
 オロポーチ熱の臨床症状を考えると、この疾患は他のアルボウイルス疾患(チクングニア熱、デング熱、
黄熱、ジカウイルス感染症など)との鑑別疾患に含まれるべきです。ヌカカの繁殖がヒトの居住区に
近いことは、オロポーチ熱の重要なリスク因子となります。感染予防と防御は、ヌカカの繁殖環境の除去や
修正を通じて繁殖を減らすことと、ヌカカとヒトとの接触を断つことに懸かっています。
これは、ヌカカの幼虫を増やすことになる自然および人工の池などの生息地の数を減らすことや、
リスクのあるコミュニティの周りで成虫を減らすこと、蚊帳の使用やドアや窓を閉め、
長袖の衣服を着用し防虫剤を使用することにより達成されます

背景
 オロポーチ熱はオロポーチウイルスが原因です。ヒトでは、主としてヌカカに刺されることで感染します。
ヒトからヒトへの感染は報告されていません。
 オロポーチウイルス熱の潜伏期間は4日から8日(3日~12日の範囲)で、デング熱と似た症状を呈します。
症状には、突然の高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、嘔吐などがあります。患者の中には無菌性髄膜炎の
臨床症状を呈するものもあります。
 アメリカ大陸では、オロポーチウイルスのアウトブレイクはブラジル、エクアドル、パナマ、ペルー、
トリニダート・ドバコの都市部及び地方で報告されています。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response
Oropouche virus disease - Peru
3 June 2016
http://www.who.int/csr/don/03-june-2016-oropouche-peru/en/