(No.127)

中国における鳥インフルエンザA(H5N6)のヒト感染例
2016年6月8日更新

 2016年5月30日、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)は世界保健機関(WHO)に対し、
新たに1人の鳥インフルエンザA(H5N6)のヒト感染確定例を報告しました。

症例の詳細情報
•50歳の男性です。湖南省の湘西自治州在住で2016年5月23日に発症しました。患者は5月24日に
村の診療所を受診し、5月28日に病院へ搬送され報告を受けた時点で危篤状態でした。5月28日、
臨床症状と疫学的調査と合わせて、検査により患者は鳥インフルエンザA(H5N6)と診断されました。
患者との濃厚接触者は発症していません。調査は継続中です。

公衆衛生上の取り組み
 中国政府は以下のサーベイランスと感染制御対策をとっています。
•アウトブレイクに対するサーベイランスと状況分析の強化
•治療のためのあらゆる取り組みに対して補強を行うこと
•住民に対してリスクコミュニケーションと情報の周知を実施すること

WHOのリスク評価
 この報告により鳥インフルエンザA(H5N6)の公衆衛生上の全体的なリスクが変化するわけでは
ありません。同ウイルスはこれまでにもヒトに対して重篤な感染症を引き起こしてきましたが、
現在まで同ウイルスへの感染は連続的にヒト-ヒト感染を起こすことなく散発的で濃厚接触者も
発症していません。しかしこのウイルスの特徴については研究中であり、その進化とパンデミック株の
発生については不明です。現時点において国際的な拡大の危険性については低いと考えられています。
WHOは疫学的な発生状況を監視し、最新の情報に基づいて引き続きリスク評価を行っています。

WHOからのアドバイス
 WHOは、鳥インフルエンザのアウトブレイクが知られている国への渡航者に対し、養鶏場への立ち入り、
生鳥市場での動物との接触、及び家禽が屠殺される可能性のある地域への立ち入りを避ける他、
家禽やその他の動物の排泄物で汚染されているように見えるいかなる地面との接触をも避けることを
勧めています。渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、安全な食べ物を衛生的に摂取することを勧めています。
 WHOは、この事象に関連して、入国地点における特別なスクリーニング及び渡航や貿易のいかなる制限も
推奨しません。これまでと同じように、鳥インフルエンザ感染の診断は、鳥インフルエンザが
懸念される地域を渡航中あるいは同所からの帰国後すぐの時期に、重篤な急性呼吸器症状を発症した人
において考えておくべきです。
 WHOは加盟国に対して、国際保健規則(2005)に準じてヒト感染を確実に報告するために、
重篤な急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを含めた、インフルエンザのサーベイランスを
継続して強化し、いかなる異常な事象に対しても継続して注意深く調査し、国家レベルでの健康対策を
継続することを推奨しています。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Human infection with avian influenza A(H5N6) virus – China
Disease Outbreak News (DONs)
8 June 2016
http://www.who.int/csr/don/08-june-2016-ah5n6-china/en/