(No.133)

アメリカ合衆国におけるチクングニア熱
2016年6月14日

 2016年6月2日、アメリカ合衆国(米国)の国際保健規則(IHR)担当窓口は、汎アメリカ保健機構/
世界保健機関(PAHO/WHO)に対して、テキサス州において初めてとなるチクングニア熱の現地感染者
1人が検査で陽性と確認されたことを報告しました。

 この患者はCameron郡の住人で、2015年11月に発症し、2016年1月にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法で
チクングニアウイルス(CHIKV)が陽性であることが判明しました。この診断は、アメリカ疾病管理予防
センター(CDC)において、2016年5月に再確認されました。

 テキサス州の住人の間で以前報告されたチクングニア熱感染例とは異なり、この患者は直近の旅行歴が
ありませんでした。しかし、この患者が感染症を発症したのは6ヶ月以上前であり、昆虫学的な調査では
CHIKVが不在であることが確認されていることから、現時点において米国における一次感染のリスクは
渡航関連に限定されたままです。

公衆衛生上の取り組み
 テキサス州におけるCHIKVの現地感染の成立を防止するために、テキサス州保健当局(DSHS)は、
CDCに相談した結果、CHIKV感染者あるいは疑い患者が同州で発生した場合、時間と資源が許すかぎり
以下のような対策をとることを推奨しています。
 ・媒介蚊対策
 ・蚊のサーベイランスと検査
 ・啓発活動

WHOのリスク評価
 この事象は、米国におけるCHIKVの現地感染例の報告として2例目になります。:CHIKVの現地感染は、
2014年7月にフロリダ州において12人が報告されたのが初めてです。米国におけるCHIKVの大規模な
アウトブレイクの危険性は低いと考えられています。しかしながら、入国してくる渡航者の間で感染例の
報告が時折あるのに加え、感染を伝播し得る媒介蚊(ネッタイシマカおよびヒトスジシマカ)が
米国の異なった地域に存在していることを考慮すると、現地における感染サイクルの成立の可能性について
完全に除外することができません。更に、媒介蚊が存在するその他の国々への感染拡大の危険性もあります。
WHOは、直近に利用できる情報を踏まえ、引き続き疫学状況を監視しリスク評価を行っていきます。

WHOからのアドバイス
 居住地域と媒介蚊の繁殖地域が近接していることは、チクングニア熱感染の危険因子となります。
感染症予防対策として重要な事は、繁殖地の除去や改変を通して蚊の繁殖を抑制し、蚊との接触を
極力避けることです。これは、幼虫の生息地となる自然および人工の水源を減らすことで危険地域の
成虫蚊の数を減らし、防蚊ネットを使用し窓や戸口を閉め、長袖の着用や防虫剤を使用することで
達成されます。この感染症の主要な媒介蚊となるヤブカは日中に活動することが知られており、
小さい子供、病人や老人など日中に睡眠をとる人々は、殺虫剤が塗布された、あるいは未塗布のもので
あっても蚊帳を使用して睡眠をとることが推奨されています。また、蚊取線香やその他の殺虫剤用噴霧器も、
蚊に刺される機会を減らすのに役立つでしょう。

 感染が流行している間は、殺虫剤の散布がWHOの技術指南のもと実行される場合があります。
技術的に適応のある場合に、WHOの殺虫剤評価体系によって推奨されている適切な殺幼虫剤が、
大きな貯水タンクに対して使用されるでしょう。

 蚊咬傷を防止するための基本的な予防策が、危険性の高い地域に旅行する人々、特に妊婦に対して
実行されるべきです。この予防策として、忌避剤の使用、明るい色の服、長袖、長ズボンの着用、
蚊の侵入を防ぐために隙間なく網戸を設置する、等が挙げられます。

 WHOは、米国に対する、現在の情報に基づいたいかなる旅行や貿易の制限を推奨しません。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
Chikungunya – United States of America
14 June 2016
http://www.who.int/csr/don/14-june-2016-chikungunya-usa/en/