(No.134)

国際保健規則 (IHR)(2005)に基づくジカウイルスと増加する神経学的障害及び新生児奇形に関する
世界保健機関(WHO)第3回緊急会議での声明
2016年6月14日

 IHR(2005)に基づいて、事務局長によって召集された小頭症及びその他の神経学的障害とジカウイルスに
関する第3回の緊急会議が、6月14日、中央ヨーロッパ時間の13時から17時15分までテレカンファレンス
形式で開催されました。今回の事象が引き続き国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)に
該当するかどうかに関し、事務局長に意見の上奏を行うことに加えて、委員会は、今年8月と9月に
予定されているブラジルのリオデジャネイロでのオリンピック、パラリンピックを含めた、
マスギャザリングにおけるジカウイルス感染の潜在的なリスクについて考察するように求められました。
 委員会に対して、3月8日に事務局長によって発表された暫定的推奨事項の実施経過についての簡単な
報告が有り、ジカウイルス感染、小頭症、ギランバレー症候群(GBS)の疫学的状況との関連性についての
最新情報が提供されました。以下の条約締結国は、ジカウイルス感染伝播が発生している状況での小頭症、
GBSやその他の神経学的障害についての情報を提供しました:ブラジル、カーボヴェルデ、コロンビア、
フランス、アメリカ合衆国。委員会のアドバイザーは、マスギャザリングや今度のオリンピック、
パラリンピックに関連したジカウイルス感染伝播の潜在的リスクに関する更なる情報の提供を行い、
委員会は、この事項に関して最近吹聴されている大衆の見解、意見および懸念等について徹底的に
再吟味しました。
 委員会では、前回委員会が開催されて以降に達した結論ですが、ジカウイルスが小頭症や
GBSの原因となり、結果としてジカウイルス感染とそれに関連した先天的およびその他の神経学的障害が
PHEICであるということが国際的な科学的コンセンサスであることについて意見の一致を見ました。
委員会は、小頭症やその他の神経学的障害とジカウイルスについての公衆衛生学的研究、サーベイランス、
媒介蚊のコントロール、リスクコミュニケーション、患者の治療、旅行に際して取られるべき処置、
研究および製品開発といった分野において、前回の第2回会議で事務局長に宛てたアドバイスを
再提言しています。
 委員会は、オリンピック、パラリンピックといったマスギャザリングとなるイベントにおいて、
相当数の易感染性の人々が集まり、各個人に対する感染の危険性が発生し、感染の拡大が起こり、
そこに存在する危険因子や鎮静化戦略といった疫学的状況次第で、感染症が国際的に拡大する要因となり得る
潜在的な可能性があることについて言及しています。また委員会は、ジカウイルスを背景として、
マスギャザリングの有無に関わらず感染症流行地域における各個人の危険性は同じであること、
また、良好な公衆衛生学的手段を行うことでその影響を最小限にすることが可能であることに
言及しています。次に委員会は、以下のように、国際的な旅行者の感染予防に関する事務局長への
アドバイスを再確認し最新のものへ更新しました。 

 •妊婦に対して、ジカウイルスのアウトブレイクが引き続き発生している地域への渡航をしないよう
 勧告すべきです。妊婦のパートナーがジカウイルスのアウトブレイクの発生している地域に居住しているか
 渡航した場合、安全な性行為の方法を確実に行うか、妊娠期間を通じて性行為を控えるべきです。
 •ジカウイルスのアウトブレイクが発生している地域への渡航者は、潜在的な危険性と蚊刺や性行為に
 よる感染の可能性を減らすための適切な手段に関する最新のアドバイスを供与され、帰国と同時に安全な
 性行為の方法を実行することを含め、感染を拡げる危険性を減らすための適切な手段をとるべきです。
 •WHOは、ジカウイルス感染症の性質とリスク期間に関して、変化していく情報に従い、渡航についての
 ガイダンスを定期的に更新し続ける必要があります。

 最近のジカウイルスのアウトブレイクによるエビデンスを踏まえると、ウイルスは国際的に拡散し、
媒介蚊が存在する地域では新たな感染の連鎖が確立され得ることが知られています。オリンピックと
パラリンピックに関連した潜在的なリスクに焦点を当てつつ、委員会は、ブラジルおよびアルボウイルスの
専門家、感染症の国際的拡散の専門家、渡航医学、マスギャザリングや生体倫理の専門家などのアドバイザー
によって提供された情報を再吟味しています。また、委員会は、今回のオリンピックとパラリンピック
について、ホスト国であるブラジルが、デングやジカウイルスといったアルボウイルスの現地感染の
激しさが最低となる時期である冬季であり、試合の開催地および周辺において媒介蚊対策が強化されており
更なる感染伝播の危険性が下がっていることから、ジカウイルスの更なる国際的な拡散を起こすリスクは
きわめて低いと結論づけています。
 委員会は、オリンピックおよびパラリンピックのホスト国であるブラジルの都市を含めて、ジカウイルスの
流行している地域や国との交易や渡航を一般的に制限すべきでは無いという前回のアドバイスを
再確認しています。また、委員会は事務局長に対して、マスギャザリングとオリンピックおよび
パラリンピックに関して、以下の様に新たに勧告しています。

 •ジカウイルスのアウトブレイクが発生している地域で、マスギャザリングとなるイベントを開催する
 予定の国、共同体、組織はイベントの開催に先だってリスクアセスメントを実施し、ジカウイルスへの
 曝露の危険性を減じるための手段を強化すべきです。
 •ブラジルは、媒介蚊対策をオリンピックおよびパラリンピックの行われる都市およびその周辺で続け、
 これらの対策のあり方やその好ましい影響が公に利用可能とし、この開催地におけるジカウイルスの流行と
 媒介蚊についてのサーベイランスを強化したうえで、適時的な方法でその情報を公開し、選手や来訪者に
 対して、コンドームや蚊の忌避剤を確実に十分に利用できるようにするべきです。
 •オリンピックおよびパラリンピックへ往来のある旅行者がいる国では、その旅行者に対して、
 ジカウイルス感染のリスク、リスクを下げるための個人防御手段、感染が疑われる場合にとるべき行動
 についての十分な情報を提供すべきです。また、各国はWHOのガイダンスに基づき、ジカウイルスに
 感染した帰国者に対する対応プロトコールを作成すべきです。
 •各国は、ジカウイルスのアウトブレイクを背景としたマスギャザリングに関するWHOのガイダンスに
 基づいて行動すべきですが、このガイダンスは、ジカウイルス感染に関連したリスクや国内および国際的な
 感染拡大をおこす要因についての新たな情報が入手可能になるに伴い更新されるでしょう。
 
 これらのアドバイスを踏まえ、事務局長はPHEICの継続を宣言しました。事務局長は第2回会議での
暫定的推奨事項を再度発出し、今回の第3回会議における新たなアドバイスを裏書きしたうえで、IHR(2005)に基づく暫定的推奨事項として発出しました。事務局長は、これらのアドバイスを受けたことで、
委員会のメンバーとアドバイザーに対して謝意を表しました。

【出典】
WHO
WHO statement on the third meeting of the International Health Regulations (2005) (IHR(2005)) Emergency Committee on Zika virus and observed increase in neurological disorders and neonatal malformations
WHO statement
14 June 2016
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2016/zika-third-ec/en/