(No.136)

ジカウイルス感染症の流行状況(8)
平成28年6月16日更新

国際保健規則 (IHR)(2005)に基づくジカウイルスと増加する神経学的障害及び新生児奇形に関する世界保健機関(WHO)第3回緊急会議での声明
 国際保健規則(IHR)(2005))に基づくジカウイルスと増加する神経学的障害及び新生児奇形に関する
世界保健機関(WHO)第3回緊急会議が2016年6月14日にテレカンファレンス形式で開催されました。
 委員会では、ジカウイルスが小頭症やGBSの原因となり、結果としてジカウイルス感染とそれに関連した
先天的およびその他の神経学的障害が国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)であるということが
国際的な科学的コンセンサスであることについて意見の一致を見ました。委員会は、小頭症やその他の
神経学的障害とジカウイルスについての公衆衛生学的研究、サーベイランス、媒介蚊のコントロール、
リスクコミュニケーション、患者の治療、旅行に際して取られるべき処置、研究および製品開発といった
分野において、前回の第2回会議で事務局長に宛てたアドバイスを再提言しています。最近のジカウイルスの
アウトブレイクによるエビデンスを踏まえると、ウイルスは国際的に拡散し、媒介蚊が存在する地域では
新たな感染の連鎖が確立され得ることが知られています。
 オリンピックとパラリンピックに関連した潜在的なリスクに焦点を当てつつ、委員会は、ブラジルおよび
アルボウイルス専門家、感染症の国際的拡散の専門家、渡航医学、マスギャザリングや生体倫理の
専門家などのアドバイザーによって提供された情報を再吟味しています。また、委員会は、今回の
オリンピックとパラリンピックについて、ホスト国であるブラジルが、デングやジカウイルスといった
アルボウイルスの現地感染の激しさが最低となる時期である冬季であり、試合の開催地および周辺において
媒介蚊対策が強化されており更なる感染伝播の危険性が下がっていることから、ジカウイルスの更なる
国際的な拡散を起こすリスクはきわめて低いと結論づけています。

要約
・6月15日現在、蚊の媒介によってジカウイルスの感染伝播が、合計60の国と地域で報告されています。
 蚊の媒介による感染伝播の内訳は以下のとおりです。
・ 2015年以降に初めてジカウイルスの流行発生が46か国において発生しました。これらの国では以前に
 流行が発生した証拠はなく、現在も蚊による感染伝播が続いています。
・ 2007年から2014年までに14か国においてジカウイルスの感染伝播が報告されました。これらの国は
 現在も感染伝播が続いています。
・2007年から2014年までに4つの国と地域において流行の発生が報告されましたが現在は終息しています。
 これらの国と地域はクック諸島、フランス領ポリネシア、チリのイースター島、ミクロネシア連邦のヤップ島です。
・10か国(アルゼンチン、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、イタリア、ニュージーランド、ペルー、
 ポルトガル、アメリカ合衆国)においてジカウイルスのヒトからヒトへの感染伝播が起きていた証拠が
 報告されています。感染経路は性交渉によるものとみられています。
・6月15日の週は蚊からヒトへの感染伝播もヒトからヒトへの感染伝播も新たに報告された国はありません。
・2016年6月15日時点でジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される
 小頭症やその他の中枢神経(CNS)奇形が、12の国と地域から報告されています。これらの最近に
 報告された小頭症3人は、ブラジル(スロベニア、アメリカ合衆国)ベネズエラ・ボリバル共和国、
 コロンビア(スペイン)への渡航歴のある母親から生まれました。さらに、ラテンアメリカの何処の国で
 感染したかが正確に判別できない新たな事例が1例あります。
・エルサルバドルにおいてジカウイルス感染と関連した小頭症が初めて診断確定されました。
・最近ホンジュラスへ渡航歴のあった母親から生まれた子供に小頭症と他の神経学的異常のあった症例は
 現在アメリカ合衆国においてジカウイルス感染を検証中です。
・6月15日の時点で、カーボベルデ共和国において血清学的指標から過去にジカウイルス感染の既往がある
 合計6人の小頭症と他の神経学的異常の症例を報告しました。
・ジカウイルス感染症の流行を背景に、13の国と地域において、ギランバレー症候群(GBS)例および
 (あるいは)GBS患者でジカウイルス感染確定例が増加していることが報告されています。
・グアドループにおいて、重篤な神経学的異常のある患者1例がジカウイルス感染症と診断されました。
・カーボベルデ共和国でのジカウイルス感染症流行の原因となったウイルスの遺伝子配列を検索したところ、
 アジア系統のもので、ブラジルで流行したものと同じものであることが判明しました。しかし、この所見が
 示す詳しい意味はまだ明らかではありません。
・現在までの研究を踏まえると、ジカウイルスは小頭症とGBSの原因であるという、科学的コンセンサス
 があります。
・2016年2月にWHOが立ち上げた戦略的な対応の枠組みには、サーベイランス、対策活動および研究が
 内包されています。この公衆衛生上の緊急事態に対して、WHOが国際的パートナー、地域および国家の
 パートナーとともに着手している、いくつかの主要な活動に関して中間発表が公表されました。
 2016年7月から2017年12月の期間における対応戦略の改訂が現在もパートナーと共に行われており、
 6月中旬に公表される予定です。
・WHOは、ジカウイルスを背景とした様々なテーマに関して新たな勧告や情報を展開してきました。
 WHOの最新情報である統合されプログラムに従ったリスクコミュニケーションやコミュニティーへの
 関与を支援するためのニュースおよび情報源についてはオンラインで利用可能です。

【出典】
WHO, Zika
ZIKA Situation Report - 16 June 2016
http://www.who.int/emergencies/zika-virus/situation-report/16-june-2016/en/