(No.141)

黄熱の流行状況(アンゴラ、コンゴ民主共和国、ウガンダ他)
平成28年6月23日更新

 2016年6月23日、世界保健機関(WHO)は黄熱の流行状況を更新しました。

要約
・2016年初め以来、アンゴラにおいて黄熱(YF)患者が増加しており、6月17日時点で3,294人の患者
(うち861人は診断確定例)が報告されています(表1)。また347人の死者が報告されており、うち115人が
診断確定例です。全ての州において疑い例が報告されており、診断確定例は18州中16州、123郡中79郡
において報告されています(表2)。
・ルアンダにおいてワクチン集団接種キャンペーンが始まり、現在同国内のその他のほとんどの流行地域を
カバーするために同キャンペーンが拡大しており、最近では国境地域に焦点が置かれています。大規模な
ワクチン接種の努力にもかかわらず、このウイルスの感染伝播は続いています。
・6月20日時点でコンゴ民主共和国(DRC)の5州における22の保健行政区から1,106人の疑い例(うち68人が
診断確定例で75人が死亡)と61人の診断確定例が報告されています。68人の診断確定例のうち59人が
アンゴラからの輸入例、2人が森林型黄熱例、6人が国内発生例です。
・DRCにおいて調査活動が強化され、ワクチン接種キャンペーンがキンシャサとコンゴ中央州の流行地域
において集中して行われています。
・新たに2か国からアンゴラから輸入された診断確定例が報告されました。:ケニヤ(2人)、中国(11人)。
これは予防接種を受けていない渡航者を介して国際的にリスクが拡大していることを強く示唆しています。
・現在6か国(ブラジル、チャド、コロンビア、ガーナ、ペルー、ウガンダ)においてYFの流行、または
散発例が報告されていますが、アンゴラにおける流行とは繋がりがありません。
・2016年5月19日に招集された緊急委員会(EC)からの助言に基づき、事務局長はアンゴラとDRCにおける
都市型YFの流行が国の行動を結集し、強化した国際支援を確保するべきである、公衆衛生上の深刻な事態と
判断しました。しかしこの事態は現時点では国際的に脅威となる公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)には
該当しないとも判断しています。

リスク評価
 アンゴラの集団感染は以下のような理由で大きな懸念があります。:
・1,100万人近くの人々がワクチン接種を受けているという事実があるにもかかわらず、国内感染が
持続しています。
・国内感染はルアンダ州を含む人口が密集する12州で報告されています。
・新たな州や郡に流行が拡大し続けています。
・近隣諸国への拡大のリスクが高まっています。国境において実質的に社会生活および経済活動が国境を
越えて自由に行き来できるため、さらなる感染伝播の危険性を排除できません。ウイルス血症となった
渡航者は、地域感染の確立させるリスク、特に適度に媒介する蚊が生息し、感染を受けやすい住民が
住んでいる国においてリスクをもたらします。
・国内感染患者が報告されていない他の州においても地域の感染伝播が確立されるリスクがあります。
・カビンダのように感染が波及し難い地域でも感染継続への疑いの高い指標が示されています。
・サーベイランスの強化が必要であり、その取り組みが行われているところです。


図1 2016年6月17日時点のアンゴラと6月21日時点のDRCにおける黄熱の患者分布


図2 2016年6月22日時点のアンゴラにおける予防接種の実施区域

【出典】
WHO, Yellow fever
Yellow fever Situation Report - 23 June 2016
http://www.who.int/emergencies/yellow-fever/situation-reports/23-june-2016/en/