(No.150)

ジカウイルス感染症の流行状況(12)
平成28年7月14日更新

 2016年7月14日、世界保健機関(WHO)はジカウイルス感染症の流行状況を更新しました。

要約
・WHOとパートナーは、ジカウイルス感染症の感染伝播の発生状況をより十分に特徴付けるために、
 流行と国内発生、蚊媒介による感染の遮断を構成する要素の定義を設定しました。これらの定義は
 2016年7月7日のsituation report(DON 7月7日更新〈関空HP:海外感染症情報2016 No.148〉参照)から
 使用するようになりました。
・蚊媒介による伝播:2016年7月13日現在、以下の様に65の国と地域において引き続き蚊による感染伝播が
 報告されています。(2015年以降、蚊によるジカウイルスの感染伝播が起こった地域は62か国です)
 ・2015年以降、48か国と地域において初めて流行が報告されております。
 ・4か国において、2016年以降に特定地域での流行が起こっている可能性があるかジカウイルス感染の
  報告がある国として定義されています。
 ・13か国と地域において、2015年以前に蚊の媒介によるジカウイルスの感染伝播が報告され、2016年
  には患者報告がないまたは流行が終息しています。

・7月13日現在、新たに蚊によるジカウイルスの感染伝播が起こった国と地域の報告はありません。
・11か国においてジカウイルスのヒト-ヒト感染例が報告されており、これらはおそらく性交渉によって
 感染したと思われます。直近ではスペインにおいてヒト-ヒト感染が報告されました。
・7月13日現在、ジカウイルス感染症と関係する可能性の高い、又は先天性の感染が示唆される小頭症や
 その他の中枢神経(CNS)奇形が、13の国と地域から報告されています。これらの国々のうち3か国では、
 ラテンアメリカの流行国への最近の渡航歴がある母親から生まれた小頭症例を報告しています。
・7月13日現在、アメリカ疾病管理予防センター(US-CDC)は、ジカウイルス感染症の可能性が検査で
 証明された、7人の先天異常を伴う新生児の出産と5例の流産を報告しました。
・ジカウイルス感染症の流行を背景に、15の国と地域において、ギランバレー症候群(GBS)例および
 (あるいは)GBS患者でジカウイルス感染確定例が増加していることが報告されています。直近では
 仏領ギアナにおいてGBS患者4人と重度の神経症状患者1人が診断確定され、全員ジカウイルス感染例
 として診断確定されています。・現在までの研究を踏まえると、ジカウイルスが小頭症やギランバレー
 症候群の原因であることは、科学的に意見が一致しています。
・グアドループにおいてジカウイルス感染を伴ったGBS患者が4人確認され、さらに12人のGBS患者が
 現在調査中です。他に重度の神経症状を有する患者5人でジカウイルス感染が確認され、原因不明の
 神経症状の11人でジカウイルス感染が確定或いは可能性ありとされています。
・セント・マーティン島においてジカウイルス感染による神経症状が1人診断確定されています。
・6月29日にギニアビサウでは、セネガルのダカールパスツール研究所(IPD)で行われたPCR検査の結果、
 12検体のうち3検体でジカウイルス陽性でした。また12検体全てでジカウイルスに対するIgMは
 陰性でした。
 7月1日にさらにIPDに送られた4検体については現在遺伝子解析中のため、結果はまだ保留中です。
・ギニアビサウの政府はWHOの同国事務所(WCO)の支援を受け、これらの調査結果への対応について強力な
 リーダーシップを発揮しています。WCOは対策活動に必要な物資を支援する基金を有しています。
 WHOのギニアビサウにおける評価活動は、優先すべき対応の決定を支援し、同国の対応能力を強化する
 ために実施される予定です。。
・7月13日にアメリカ疾病管理予防センター(the U.S.CDC)はオリンピックへの渡航に関連してジカウイルス
 が拡大することへのリスク評価を発表しました。その評価によりますと、オリンピックに関連して
 ジカウイルスの国際的な拡大は大幅な拡大変化はみられませんが、エリトリア、ジブチ、チャド、
 イエメンの4か国については、これらの国の住民が実際にジカウイルス流行国に渡航経験がないため、
 オリンピックによる曝露の可能性ということ以外でもリスクが特に高まっています。
・2016年2月にWHOが立ち上げた戦略的な対応の枠組みには、サーベイランス、対策活動および研究が
 内包されています。この公衆衛生上の緊急事態に対して、WHOが国際的パートナー、地域および国家の
 パートナーとともに着手している、いくつかの主要な活動に関して、2016年5月27日に中間発表が
 公表されました。また、2016年7月から2017年12月の期間における対応戦略の改訂版が6月17日に
 公表されました。
・WHOは、ジカウイルスを背景とした様々なテーマに関して、新たな勧告や情報を展開してきました。    

 WHOの最新情報である、統合されプログラムに従ったリスクコミュニケーションやコミュニティーへの
関与を支援するためのニュースおよび情報源については、オンラインで利用可能です。

リスク評価
 全体として世界におけるリスク評価に変更はありません。カーボヴェルデ共和国でのジカウイルスの
アジア系統の存在に対する影響については現在調査中です。ジカウイルスは媒介能力をもつ蚊が
生息する地域において地図の上で拡大し続けています。いくつかの国やその国の一部の地域において
ジカウイルス感染症の患者が減少する傾向が報告されていますが、警戒体制を強化しておくことが
必要です。利用できる物証に基づき、WHOは現段階では全体として流行が弱まる傾向にあるとは
みていません。

【出典】
WHO,SITUATION REPORT
ZIKA VIRUS ,MICROCEPHALY, GUILLAIN-BARRÉ SYNDROME
14 JULY 2016
http://www.who.int/emergencies/zika-virus/situation-report/14-july-2016/en/