(No.155)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例
2016年7月22日更新情報

 2016年7月12日、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)は世界保健機関(WHO)に対し、新たに4人の
死亡者を含む7人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染確定例を報告しました。

 患者は5月26日から6月23日までの間に発症し、年齢分布は52歳から68歳で中央値は61歳です。
これら7人の感染者のうち、57%に相当する4人が男性です。感染者の大部分(71%に相当する5人)には、
生きた家禽や屠殺された家禽との接触歴か、生きた家禽を扱う市場への訪問歴の報告がありました。
1人は生きた家禽との接触歴はなく、残る1人は生きた家禽を売買する市場で働いていました。
ヒト-ヒト感染は報告されていません。

 患者は6つの省やその他の地方自治体から報告されています。その内訳は、天津から2人、安徽省、北京、
江蘇省、遼寧省、浙江省から各1人ずつとなっています。

公衆衛生上の取り組み
 中国政府は下のサーベイランスと感染制御対策をとっています。
• アウトブレイクに対するサーベイランスと状況分析の強化
• 治療のためのあらゆる取り組みに対して補強を行うこと
• 住民に対してリスクコミュニケーションと情報の周知を実施すること

WHOのリスク評価
 ほとんどのヒト感染例は、生きた家禽を扱う市場への訪問を含め、感染した家禽あるいはウイルスに
汚染された環境との接触を通して、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに曝露されています。
このウイルスは、動物や環境中において検出され続けているため、今後もヒト感染例が報告されることが
予想されます。医療従事者の感染者を含めた、鳥インフルエンザA(H7N9)の小さなヒト感染者集団の
報告はありますが、現在の疫学的及びウイルス学的な証拠からは、このウイルスがヒトの間で持続的に
感染伝播を起こす能力は獲得していないことが示唆されています。そのため、地域レベルで更に感染が
拡大する可能性は低いと考えられています。
 この鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト感染は稀ですが、公衆衛生的に極めて深刻な影響を
与える可能性があるので、このウイルスの変化および(または)ヒトへの感染様式の変化を発見するため、
厳密に監視することが必要です。

WHOからのアドバイス
 WHOは、鳥インフルエンザのアウトブレイクが知られている国への渡航者に対し、養鶏場への立ち入り、
生鳥市場での動物との接触、及び家禽が屠殺される可能性のある地域への立ち入りを避ける他、家禽や
その他の動物の排泄物で汚染されているように見えるいかなる地面との接触をも避けることを勧めています。
渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、安全な食べ物を衛生的に摂取することを勧めています。
 WHOは、この事象に関連して、入国地点における特別なスクリーニング及び渡航や貿易のいかなる
制限をも行うことを推奨しません。これまでと同じように、鳥インフルエンザ感染の診断は、
鳥インフルエンザが懸念される地域を渡航中あるいは同所からの帰国後すぐの時期に、重篤な
急性呼吸器症状を発症した人において考えておくべきです。
 WHOは加盟国に対して、国際保健規則(2005)に準じてヒト感染を確実に報告するために、重篤な
急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを含めた、インフルエンザのサーベイランスを継続して強化し、
いかなる異常な事象に対しても継続して注意深く調査し、国家レベルでの健康対策を継続することを
推奨しています。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China
Disease outbreak news
22 July 2016
http://www.who.int/csr/don/22-july-2016-ah7n9-china/en/