(No.158)

黄熱の流行状況(14)
平成28年7月28 日更新

 黄熱のアウトブレイクは、2015年12月末にアンゴラ共和国の首都ルアンダで最初に認められました。
最初の黄熱感染者は、2016年1月19日に南アフリカの国立伝染病研究所(NICD)により、1月20日にセネガルの
首都ダカールのパスツール研究所により確認されています。その後、感染者数の急激な増加を認めています。

要約
アンゴラ:3,748人の感染疑い例
 アンゴラでは、2016年7月21日の時点で、3,748人の疑い患者(うち879人は診断確定例)が報告されて
います。また364人の死者が報告されており、うち119人が診断確定例です。全ての州において疑い例が
報告されており、診断確定例は18州中16州、125郡中80郡において報告されています。
 ルアンダにおいてアウトブレイク対策としてのワクチン集団接種キャンペーンが始まり、現在同国内の
その他のほとんどの流行地域をカバーするために同キャンペーンが拡大しており、最近では国境地域に
焦点が置かれています。すべての郡において、ワクチン接種キャンペーンと通常ワクチン接種が軒並みに
行われています。

コンゴ民主共和国:1,907人の感染疑い例
 最新の確定情報によりますと、7月20日現在、全26州中5州における22の保健行政区から、1,907人の
疑い例(うち68人が6月24日時点での診断確定例で95人が死亡)が報告されています。68人の診断確定例
のうち59人がアンゴラからの輸入例、2人が(今回の流行とは関連が ない)森林型黄熱例、7人が
国内発生例です。
 最近までの同国国立研究所での技術的な問題は解決され、診断確定例数は再編集されました。
未処理の検体の検査結果の予備的報告によりますと、新たに7人が黄熱陽性となりました。更に確証を
得るための追加の検査が実施されています。その結果がでるまでは公式発表数は変化ありません。
 DRCでは、調査活動が強化され、ワクチン接種キャンペーンがキンシャサ、コンゴ中央州、クワンゴ州の
流行地域において集中して行われています。今回のアウトブレイク対策としてのワクチン接種キャンペーン
は7月20日からキンシャサ州のキセンソ保健行政区およびクワンゴ州のカヘンバ、カジジ、キサンジの
各保健行政区で開始される予定です。

感染拡散の危険性
 現在7か国(ブラジル、チャド、コロンビア、ガーナ、ギニア、ペルー、ウガンダ)において黄熱の流行、
または散発例が報告されていますが、アンゴラにおける流行とは繋がりがありません。
 5月19日に緊急会議(EC)が実施されました。WHOの事務局長は、アンゴラとDRCにおける
都市型サイクルの黄熱アウトブレイクは強化された発生当事国の対策と国際間の支援が必要なことが
確かな保健上の重大な出来事であるという会議での評価を受け入れています。しかし現状では国際的に
懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)とはしていません。

ワクチン接種に関して
 WHOの予防接種に関する専門家の戦略的諮問委員会(Strategic Advisory Group of Experts: SAGE)は、
標準用量の1/5の使用量でも12か月間以上にわたり感染から保護できることが示されていることの科学的
根拠について検討を始めました。分割投与として知られているこの投与方法が、キンシャサにおける
先制治療的な意味合いのある集団ワクチンン接種キャンペーンで実行される予定です。

リスク評価
・ アンゴラでのアウトブレイクは治まりつつあり、7月は21日迄の3週間で診断確定例は報告されて
 いません。最終の診断確定例が発症したのは6月23日でクネネ州のクアンハマからの報告です。
 しかし国中でハイレベルでの警戒を維持していくことが必要です。
・ DRCでは流行が3州に拡大しており、懸念される状況に変化はありません。媒介するシマカ属の蚊の
 生息と活動性を考えると、この国では厳密に発生状況を監視する必要があります。流行は特にカサイ、
 カサイ中央、ルアラバなどのその他の州に及ぶ可能性があります。
・ アンゴラやDRCのウイルスは大半が主要都市に集中しています。しかし、両国においてその他の地方への
 感染伝播と地域内の感染伝播に対するリスクが深刻な懸念となっています。このリスクは国境を接する
 国々、特に黄熱に対するリスクが低いと分類されている国(ナミビア、ザンビア)において、
 黄熱ワクチン を接種していない住民、渡航者や外国人労働者がいるために拡大の可能性が高くなって
 います。

【出典】
WHO Yellow Fever
Yellow Fever Situation Report
28July 2016
http://www.who.int/emergencies/yellow-fever/situation-reports/28-july-2016/en/