(No.161)

黄熱の流行状況(15)
平成28年8月5日更新

 黄熱のアウトブレイクは、2015年12月末にアンゴラ共和国の首都ルアンダで最初に認められました。
最初の黄熱感染者は、2016年1月19日に南アフリカの国立伝染病研究所(NICD)により、1月20日に
セネガルの首都ダカールのパスツール研究所により確認されています。その後、感染者数の急激な増加が
認められます。

要約
アンゴラ:3,818人の感染疑い例
 アンゴラでは、2016年7月28日の時点で、3,818人の疑い患者(うち879人は診断確定例)が報告されて
います。また369人の死者が報告されており、うち119人が診断確定例です。全ての州において疑い例が
報告されており、診断確定例は18州中16州、126郡中80郡において報告されています。
 ルアンダにおいてアウトブレイク対策としてのワクチン集団接種キャンペーンが始まり、現在同国内の
その他のほとんどの流行地域をカバーするために同キャンペーンを拡大していますが、最近では
コンゴ民主共和国(DRC)との国境地域に焦点が置かれています。18郡の300万人を対象とした、
次の段階としてのワクチン接種キャンペーンは、8月16日に開始予定となっています。

コンゴ民主共和国:2,051人の感染疑い例
 最近までの同国国立研究所での技術的な問題が解決され、未処理検体の分析を現在継続して行って
います。7月27日現在、検査された700検体のうち、8人の患者の検体が陽性と判定され、その追加情報を
収集するための調査が継続して行われています。
 アウトブレイク発生以来、7月27日現在、全26州中5州における22の保健行政区から、2,051人の疑い例
(うち76人が診断確定例で95人が死亡)が報告されています。76人の診断確定例のうち67人がアンゴラ
からの輸入例、2人が(今回の流行とは関連が ない)森林型黄熱例、7人が国内発生例です。疑い例は、
7月16日を最終日とする一週間において、キンシャサ州、中央コンゴ州、クワンゴ州、チュアパ州、
ルアラバ州で増加しています。
 アウトブレイク対策としてのワクチン集団接種キャンペーンが、キンシャサ州のキセンソ保健行政区
およびクワンゴ州のカヘンバ、カジジ、キサンジの各保健行政区において、7月20日に開始され、
7月29日に終了しました。キンシャサ州の32の保健行政区とアンゴラとの国境地域の15の保健行政区に
おいて、8月下旬の開始にむけて予防的なワクチン接種の準備が引き続き計画されています。
 ワクチンの分割投与法が、キンシャサでの先制治療的な意味合いのある集団予防接種キャンペーンに
おいて実施される予定です。

ワクチン接種に関して
 2016年8月4日現在、アンゴラにおいて2,120万回分、DRCにおいて、1,150万回分、ウガンダにおいて
80万回分のワクチンが認可されています。
 現在、国際調整団体(ICG)と世界保健機関(WHO)を通して緊急対策用として利用可能なワクチン数は
510万回分です。アウトブレイク対策として既に配分されたワクチンは、この数字には含まれていません。

リスク評価
・ アンゴラでのアウトブレイクは収まりつつあり、7月は28日迄の間で診断確定例は報告されていません。
 しかしながら、同国全域において高水準の警戒を維持する必要があり、先制治療的な意味合いのある
 集団予防接種キャンペーンが計画のとおり予定されています。
・ DRCでは、アウトブレイクが3州の新しい保健行政区へ拡大しているため、より警戒を強める必要が
 あります。同国国立研究所において分析を頓挫させていた技術的な問題が解決したため、未処理検体の
 分析により、以後数日あるいは数週にわたって更なる感染例が確認されることが予想されます。
 ルアラバ州やカサイ州で、更なる疑い例が報告されていることから、アウトブレイクはその他の州へ
 拡散している可能性があります。また、媒介蚊であるシマカ属の蚊の同国における生息域と活動性、
 および同国民の同感染症に対する免疫力の低さを考えると、アウトブレイクはその他の州へ拡散していく
 可能性があります。
・ アンゴラやDRCにおいて、黄熱の伝播は大半が主要都市に集中しています。しかし、両国において
 (ワクチン接種人口の大変に少ないDRCにおいて特に)、その他の地方への感染伝播と地域内の
 感染伝播に対するリスクが存在しています。

【出典】
WHO Yellow Fever
Yellow Fever Situation Report
5 August 2016
http://www.who.int/emergencies/yellow-fever/situation-reports/5-august-2016/en/