(No.181)

中東呼吸器症候群コロナウイルス感染症-オーストリア
2016年9月20日更新

 2016年9月8日、オーストリアの国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関(WHO)に対して、
中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染確定例を1人報告しました。この感染者は、
オーストリアにおけるMERS-CoV感染例として2例目になります(最初の感染例は、2014年9月30日に
報告されています)。

症例の詳細情報
 患者は67歳の男性で、サウジアラビアからの来訪者(同国の市民であり住民)であり、2016年9月4日に
オーストリアのウィーンに到着しました。9月6日に発熱と咳で発症し、9月7日に重症肺炎で
入院しましたが、現在は危篤状態で隔離されています。
 ウィーンの標準検査機関によって、9月8日にリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法
(標的となる遺伝子はupE、ORF1b、N)を用いてMERS-CoVが確認されました。
 この患者はラクダを飼育しており、発症前の14日間にサウジアラビアでラクダとの接触が確認されています。しかし、同時期にサウジアラビアにおいて医療機関との接触はありませんでした。

公衆衛生上の取り組み
 サウジアラビアの IHR担当窓口へは、WHOにより報告されています。オーストリアおよび
サウジアラビアのIHR担当窓口は、両国における接触者の追跡調査を開始しています。それに加え、
サウジアラビアにおいては、農業省が報告を受けラクダの調査を引き続き行っています。このラクダは
検体を採取され、現在は検疫下におかれています。

WHOのリスク評価
 オーストラリアにおけるこの孤発感染例に関して、現在利用できる情報を踏まえますと、MERSが
結果的に高い致死率をもたらす重篤なヒト感染を引き起こし、特に医療現場におけるヒトの間において
感染が伝播していく能力を示して大規模なアウトブレイクへと繋がっていくといった、公衆衛生学的に
深刻な脅威となる危険性があります。このリスク評価は、新たな情報が判明し次第、更新されるでしょう。

WHOからのアドバイス
 WHOは、入国地点におけるこの事象に関する特別なスクリーニングや、いかなる渡航や貿易の制限をも
推奨しません。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – Austria
Disease outbreak news
20 September 2016
http://www.who.int/csr/don/20-september-2016-mers-austria/en/