(No.190)

ナイジェリアにおける野生ポリオとワクチン由来ポリオの流行状況
10月6日更新

野生ポリオウイルス(WPVI)の流行
 ナイジェリアにおいて過去2年以上の間、野生ポリオは検出されませんでしたが、同国政府は2016年
7月から8月の間に検査機関で3人の野生ポリオ1型(WPVI)症例が診断確定されたことを報告しました。
 3人はボルノ州出身の2から5歳までの子供です。うち2人は急性弛緩性麻痺(AFP)を発症し、AFP症例と
濃厚接触歴のある1人は無症候です。
 今回検出されたウイルスは2011年にボルノ州で最後に検出されたWPV1と密接に関連しています。
この事実は、同ウイルス株が当時より検出されずに循環していたことを示しています。

ワクチン由来ポリオ症例
 野生ポリオ症例の報告に加えて、この地域で実施されている疾患サーベイランス強化の一環で、
最近WPV1症例と家族内接触のあった健常人からワクチン由来ポリオ2型(cVDPV2)が検出されました。
 この分離株の遺伝子解析の結果から、この地域で少なくとも2年間、cVDPV2株も検出されずに
循環していたことが証明されました。

公衆衛生上の取り組み
 野生ポリオとワクチン由来ポリオが検出されたことを受け、ナイジェリア東北部では地域の感染対策を
継続しています。
 現在、大規模な予防接種活動が実施されています。ボルノ州でのポリオ検出を受け、同国政府は今回の
流行が公衆衛生上の緊急事態であることを宣言しました。また、カメルーン、中央アフリカ共和国、
チャド、ニジェールといった近隣政府もチャド湖周辺地域に公衆衛生上の緊急事態宣言を出しました。
 地域の感染対策は、感染の影響を受けるさらに広く人道的緊急事態の状況下にある地域やすべての国で
共同実施されています。国、地域、政府レベルでのポリオ撲滅チームは他の国連機関や非政府組織といった
緊急人道支援チームと密接に連携してすべての利用可能な資源を最大限に使用しています。また、地域の
中で最も脆弱でワクチンを必要としている住民に対して、保健対策と並行してポリオワクチンの供給を
図っています。地域全体でサーベイランス活動を強化しています。

WHOのリスク評価
 ナイジェリアにおいてWPV1とcVDPV2の検出は、ポリオウイルスの循環の影響やリスクを最小限にする
ために、あらゆるレベルで定期的に高水準のワクチン接種率を維持することが重要であることを
強調しました。
 初期対策を徹底することが流行を迅速に終息させるために必要であり、将来的に同様の流行を未然に
防ぐためには、国全体で十分なワクチン接種率の確保が必要です。
 国内の一部地域では治安が不安定であることが、感染対策の運営上の課題として上げられ続けています。
 WHOはWPV1とcVDPV2株の伝播がチャド湖周辺地域に隣接する地域で国際的に拡がる危険性が高いと評価しています。
 WHOは疫学的な発生状況と実施されている感染対策について評価を継続しています。

WHOからのアドバイス
 特に、頻繁に旅行する人やポリオが発生している国や地域と接点のあるすべての国では、迅速に
ポリオウイルスを検出し、AFP症例のために迅速な対応が取れるようにサーベイランスを強化することが
重要です。また、それぞれ国、領土、地域では新たなウイルスの侵入や影響を最小限にするために、
高い予防接種率を維持する必要があります。
 WHOの海外旅行および健康情報ではポリオ発生の影響を受けた地域に旅行する全ての者に対して十分に
ポリオの予防接種を受けることを勧めています。感染地域からの住民および4週間以上の滞在者は、
その出発に先立つこと4週間から12ヶ月の間に経口ポリオワクチンまたは不活化ポリオワクチンの
追加接種を受けることが必要です。
 2005年11月に国際保健規則(2005)の下で招集された緊急委員会の進言に基づき、ポリオウイルスの
国際的な拡大阻止するための努力は国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)のまま継続して
います。ポリオウイルスの伝播によって影響を受けた国は一時的な勧告事項に遵守します。PHEICに
基づき発効された一時的な勧告事項に遵守するために、ポリオウイルス輸出国は、国の公衆衛生上の
緊急事態として感染発生を宣言し、すべての国外からの渡航者に対して渡航前ワクチン接種を確実と
必要があります。

【出典】
Disease outbreak news
6 October 2016
Wild polio and vaccine derived polio in Nigeria
http://www.who.int/csr/don/06-october-2016-polio-nigeria/en/