(No.205)

ブルキナファソにおけるデング熱
2016年11月18日更新

 2016年8月以来、デング熱疑い患者と死亡者がブルキナファソの首都ワガドゥグーにおいて報告されて
います。

 2016年の8月5日から11月12日の間、1,266人のデング熱疑い例のうち、合計1,061人の感染可能性例
(デング熱迅速検査<RDT>陽性例)が、15人の死亡例(致命率1.2%)とともに報告されています。
感染者はワガドゥグーの12の行政区全てから報告されています。それに加え、その他の2地域、すなわち、
同国北部のSahel地域(RDT陽性例12人)と同国西部のHauts-Bassins地域(RDT陽性例6人)からも
感染例が報告されています。

 RDT陽性例のうち、ワガドゥグーの273人については十分に立証されています。患者からの訴えがあった
主要な症状は、頭痛(77%)、関節痛(51%)、胃腸症状(47%)、出血症状(6%)でした。感染者の
70%が25歳以上であり、平均値は30歳で、女性の感染者が男性より多い傾向がありました。11月9日現在、
アルボウイルスに関する世界保健機関(WHO)の協力施設である、セネガルの首都ダカールにある
パスツール研究所(IPD)に、61例の検体が送付され確認の検査が行われています。2016年11月14日に
受け取った予備段階での結果では、29検体(47.5%)がデング熱ウイルス陽性(qRT-PCR法による)である
ことが判明しました。これまでのところ、デング熱の血清型が2型であることが特定されていますが、
更なる検査が必要です。遺伝子シークエンシングの結果は、未報告のままです。

公衆衛生上の取り組み
・ 同国保健省は、包括的な感染症サーベイランス及び対策(IDSR)の機構について策定していましたが、
 デング熱は含まれていませんでした。そこで、サーベイランスの許容能力を増強するなど、デング熱を
 包含していく計画があります。
・ 最初の調査が10月24日から28日の間に6つの医療施設で行われており、更なる調査が現在も継続中です。
・ 保健当局およびこれらの対策に従事しているその他の政府部門が一同に会する、国家疫学管理委員会
 といった会合を毎週にわたって開催することにより、協同作業が確実に遂行されています。
・ ベクターコントロールやリスクコミュニケーションを含む対策計画が展開されています。
・ デング熱のサーベイランスツールの更新や、感染例の探索や管理についてのガイドラインの更新作業が
 実行されており、同ツールは対応に当たる各機関に配布されています。
・ 保健省は、IPDやWHOによって展開された追加支援を受けながら、出血熱に関する国家における
 標準検査機関の耐容能の強化を計画しています。
・ デング熱に関する啓発、症例管理、および異なった国々の公用語に翻訳された予防手段に関する
 メッセージを遂行・配布し拡散すること。
・ ワガドゥグーの主要な病院は、重症デング熱に侵された患者に対して防蚊ネットを提供しています
 (重症デング熱に関する更なる情報に関しては、WHOホームページにある”Fact sheet on dengue”を
 ご覧下さい)。
・ デング熱重症例に対して、無料で医療対応が行われています。

WHOのリスク評価
 デング熱は、ブルキナファソにおける同疾患サーベイランスの低い遂行率を背景に発生しています。
多くの医療機関では、デング熱RDTへのアクセス手段を持っていません。また、症例定義や症例管理の
ガイドラインが十分に周知されておらず、そのため医療従事者がデング熱のサーベイランス、
特に症例探索と報告方法に関して良く訓練されているとはいえない状況です。医療従事者間での同疾患の
啓発状況や予防手段が不十分であることは、同疾患のサーベイランスがIDSRの機構にも関わらず十分には
確立されていないことに比例しています。

 雨季が終了したところですが、家庭やコミュニティーレベルにおいてベクターである媒介蚊の生育地域が
数多くあるため、いまだ蚊が高密度に潜在している可能性があります。関係者や昆虫学者の間で、
コミュニティーにおけるベクターコントロール手段に関しての議論が行われています。
ベクターコントロール手段においては、最も繁殖性の高い生育地域を特定(最も幼虫の密度が高い場所を
特定)し、コミュニティーに対して積極的な支援を行いつつ、その繁殖地域を減少させる手段を発見すべき
です。また、全てのコントロール手段の効果を分析するために、選択された場所における昆虫学的な
モニタリングが実行されるべきです。さらにウイルスを持った入院患者に対する防蚊ネットの使用も
考慮されるべきです。それに加え、個人レベルにおける防御手段についても遂行されるべきです。

 医療従事者や一般大衆の焦点がデング熱ではなく、むしろマラリアにあることを浮き彫りにすることが
重要です。それゆえ、早期診断の許容能、コミュニケーションを通した地域の啓発、社会動員、地域も
参画した介入およびベクターコントロールを強化し、このアウトブレイクにより良く対応するために
臨床的な対応についてのガイダンスを補強する必要があります。

 ワガドゥグーは、ブルキナファソの首都であって、隣国へと繋がる主要道や線路および国際空港を
持っています。さらに、隣国との間で人の往来が頻繁にあります。現在のところ、隣国地域において
デング熱のアウトブレイク発生をほのめかす証拠はありませんが、以前にデングウイルスが循環していた
事実を排除することはできません。この危険性を分析するには情報が不十分です。

WHOからのアドバイス
 WHOは各国に対して、疫学情報によりこの疾患による負担が大きいことが示唆されているなどの
(国家的な、あるいは国家レベルより小さい地域的な)地理的状況に応じてのみデング熱ワクチCYD-TDVの
導入を考慮すべきであることを推奨しています。現在のところ、ブルキナファソにおけるデング熱の
高い流行性を示唆する十分な証拠はありませんが、更なる調査が必要です。

 蚊生息地域の撲滅や殺虫剤の使用(室内散布および屋外噴霧)のようなベクターコントロール手段を
とおしたデング熱予防や、個人レベルでの予防策(昆虫忌避剤の使用、明るい色の衣服および長袖シャツや
ズボンの着用、蚊の侵入を防ぐために遮蔽物で確実に家を密封するなど)が推奨されます。

 WHOは、この事象に関して利用可能な情報を踏まえますと、ブルキナファソに対していかなる一般的な
渡航や貿易の制限をも適用することを推奨しません。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Dengue Fever – Burkina Faso
Disease Outbreak News
18 November 2016
http://www.who.int/csr/don/18-november-2016-dengue-burkina-faso/en/