(No.208)

ニジェールにおけるリフトバレー熱
2016年11月24日更新

 8月30日、ニジェールの保健省は世界保健機関(WHO)に対し、同国のタウア州でヒトと家畜の原因不明の
死亡を報告しました。9月23日、ヒトと家畜の検体がダカールのパスツール研究所で検査され、
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法とIgM抗体検査でリフトバレー熱(RVF)が陽性と判明し、ニジェールに
おいて初めてのRVFのアウトブレイクであると確認されました。当初、アウトブレイクはマリとの
国境地域にあるタウア州の北西部、特にタサラとチャンタバラダンに集中していましたが、最近になって
同疾患の疑い症例がチャンタバラダンの北部と南部でも確認されています。

 このアウトブレイクは、タウア州アガデス近くのIngallで毎年行われるキュアサレエ(ニジェールと
周辺国から遊牧民が家畜とともに集まる祭典)と同時期に認めています。当初、約200万頭のウシや
ヤギなどの小さな反芻動物が流行の影響を受けた地域に集まっていました。また、ニジェールの
Boni-Bangouでは流産や死亡した家畜が多数報告され、マリ共和国のメナカの近隣地域ではヒトと
家畜のRVF疑い症例がIgM検査によって診断されています。  

 8月8日から11月21日までに、32人の死亡を含む266人の疑い症例が、タウア州アバラク、ケリタ、
マダウア、ティリア、タサラ、タウア、タウア地域のチャンタバラダンから報告されています。
8月8日から11月18日までに196の検体が検査され、17人がPCR法もしくはIgM抗体によりRVF陽性と
診断されました。パスツール研究所ではRVF陰性の検体をさらに詳しく調査しています。

 90%以上の検体で直近のRVF感染が否定されていることや影響を受けた妻子の割合が増加していること
から、原因を特定するために調査を拡大する必要があります。現在、これに関して感染性および
化学物質や毒素を含めた非感染性疾患についての適切な調査プロトコールが開発中です。

公衆衛生上の取り組み
• ニジェールの保健省(MoH)はWHOの支援をうけ、国際保健規則(IHR)に基づいてアウトブレイクの
 最初の調査と告示を行いました。
• RVFに関して感染防御と管理を実行しコミュニティとの連携強化を開始するため、10月の初めの週に
 アウトブレイクの影響を受けた地域で、MoHと畜産省(MoL)の合同調査が実施されました。
• パスツール研究所から専門家が派遣され、保健医学研究センター(CERMES)での検査と職員への
 トレーニングが行われています。
• 地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GORAN)により、ダカールのパスツール研究所から
 臨床検査の専門家らが、ニジェールの首都ニアメの検査施設に派遣され支援しています。特に検体検査を
 行い、血清学的検査において地元職員6人の指導をしています。
• 食糧農業機関(FAO)と国際獣疫事務局(OIE)危機管理センターはMoHやMoLの活動を支援するために
 現地調査を合同で行いました。
• 地域のAFR-EDPLNが近隣諸国での検査能力強化を支持するために関与し始めました。
• 検査室における試薬と必需品の補充の強化がWHOアフリカ地域事務局により推進されています。
• 検体搬送のための3重包装の供給がWHOアフリカ地域事務局により推進されています。
• WHO本部とアフリカ地域事務局の支援を受けて、包括的な流行調査プロトコールが各地域事務局で
 開発されています。
• 重大な対応活動であるサーベイランス、研究所、昆虫学のリスクコミュニケーションを実施するための
 資金が動員されています。
• 症例管理を支援している現地の非政府組織(アリマ(Alima)/ l’ONG BEFEN/ 赤十字社(RED CROSS))や
 国連児童基金(UNICEF)の支援も継続しています。
• MoH の国際昆虫学者と共に IPDから派遣された昆虫学の専門家は野外調査を実施しました。野外で
 採取した検体は全てRVFウイルス陰性でした。
• 流行とその対応活動の実施、特に地域内の疫学調査サーベイランスや対応、症例管理、リスクコミュニ
 ケーション、社会行動活動においてMoH を支援するためにWHOアフリカ地域事務局とGOARNによる
 人員の追加は現在進行中です。
• 人におけるRVFの一般的な徴候や症状を考慮すると、医療施設に入院している疑い症例にはマラリアの
 迅速検査も実施するべきです。

WHOのリスク評価
 2016年10月以降、疫学的状況は進展しています。2016年8月以来、196検体が検査され、うち2016年
10月の2例と11月の2例を含む17例で陽性が確認されました。疫学データではRVF流行の振幅はあまり
大きくないと言えます。
 以前に影響を受けていない地域への流行の拡がりは、医療基盤が限られていることや地域や人口が
放牧ルートに沿って分散しているという理由から引き続き監視が必要です。
 牧畜業者人口は非常に流動的で、サヘル地方へは多くの近隣諸国から放牧ルートに沿って家畜の群れが
移動してきます。ニジェールでは医療基盤が限られていることと人口が放牧ルートに沿って分散している
ことから流行の拡がり懸念され、かつ深刻な公衆衛生上の脅威を引き起こしています。
マリ、ブルキナファソ、ナイジェリア、チャド、ベニン、トーゴ、カメルーンといった過去に流行の
あった地域での同疾患患者の報告はありません。
 現時点で、ヒト-ヒト間での容易な感染拡大は示唆されていませんが、更なる原因究明と適切な対応と
感染拡大防止のため調査を拡大する必要があります。

WHOからのアドバイス
 影響を受けた地域から生きた動物とその肉やミルクを使用した製品の輸出入に関する貿易措置については
OIE の陸生動物衛生規約2016に従ってください。

【出典】
WHO Emergencies preparedness, response
Rift Valley Fever in Niger
Disease outbreak news
24 November 2016
http://www.who.int/csr/don/24-november-2016-rift-valley-fever-niger/en/