(No.21)

ワクチン由来ポリオウイルスの流行―ラオス人民民主共和国
2016年1月29日

 2016年1月17日、ラオス人民民主共和国(PDR)の国際保健規則担当窓口(NFP)は、WHO(世界保健
機関)に対して、ワクチン由来のポリオウイルス1型(VDPV1)診断確定患者を新たに2人報告しました。
両患者ともサイソンブン県ローンサーン郡在住です。

症例の詳細情報
 最初の患者は同郡の月齢14ヶ月の男児です。2015年11月16日に発熱症状が出現し、18日に両足の
深部腱反射が低下し非対称性の麻痺が出現しました。同症例は同郡の保健当局が12月19日に
急性弛緩性麻痺(AFP)症例として報告しました。患児は3回の経口生ポリオワクチン(OPV)の接種歴が
ありました。12月1日と3日に患児の検体が収集され、日本の国立感染症研究所(NIID)に送られました。
12月21日の検査の結果、患児はどのポリオウイルスも陰性でしたが、患児の姉から採取した検体は
VDPV1陽性でした。国家調整委員会は、月齢14ヶ月のAFP患児について、ポリオ陽性患者との疫学的な
繋がりによりVDPV1感染確定例とし、新規AFP症例とも分類されました。これらの状況は、同地域で
VDPV1が循環している可能性を示しています。
 2番目の患者は同郡の40歳の男性です。患者は12月18日に両足の深部腱反射が低下し非対称性の麻痺が
出現しましたが、肺への合併症はなく、発熱症状も報告されていません。患者は神経性疾患や外傷の
既往歴、動物の咬傷や虫の刺咬歴はありません。OPVの接種歴もありません。12月21日にビエンチャン
特別市の病院は市の保健当局へAFP症例として報告し、同日中に便検体の採取を含めた調査が
行われました。2016年1月9日NIIDはこの患者がVDPV1陽性であったことを報告しました。
WHOの基準では、これらの患者2人ともAFPを呈しており、cVDPV1感染確定例に分類されることに
なります。

公衆衛生上の取り組み
 ラオスにおける最初のcVDPV1感染確定例が発見されて以来、2015年12月から同国内をまわり、同国内、
感染が発生した県(ボーリカムサイ県、 サイソンブン県)およびその近隣県(シェンクワン県)
において、感染流行対策が実行されてきました。支援活動の調整をするために国家緊急対策本部が
立ち上げられ、ポリオ流行対策計画が起案されました。AFP症例の発生を認めない地域も含め、
国全体のサーベイランスは強化されました。病院や保健所で過去にさかのぼった再調査を含め、
危険性の高い地域で積極的症例探索が実施されています。
 2015年10月から2016年3月にかけて、三価OPVワクチンによる6回の接種活動が2か国と国に次ぐ規模の
4つの地域で計画されており、最大1千万回分のワクチンが15歳未満の小児に投与されることに
なっています。OPVによる3回の補完的な予防接種活動(Supplementary Immunization Activities :
SIAs)が10月と11月、12月は最初の全国規模で完遂されました。4回目は2015年12月に目標とした
19のハイリスクな地域を含む全国15県、全ての年齢において1月25日と2月7日に接種することを
計画しています。この年齢の範囲は、患者とその接触者の年齢分布によって決定されました。
このキャンペーンの効果を評価するために、情報提供者の自主的な参加を呼びかけています。
SIAsを確実に成功させるために、予防接種に対する信頼を構築し障害について呼びかける活動調査員の
研修および説明会を含めて、緊急のリスク情報の伝達と地域の動員活動が実施されています。
鍵となるメッセージがラジオや拡声器に合わせて作成され、患者が発見された地域に狙いを定めて
伝えられています。

WHOからのアドバイス
 すべての国、特に、頻繁にポリオ発生の影響を受けた国や地域を旅行したり接触を持ったりする人のいる
国では、新たないかなるウイルスの感染輸入をも速やかに検出し、迅速に対策しやすくするために、
AFP症例のサーベイランスを強化することが重要です。加えて、国、領土および地域はいかなるウイルスの
新たな侵入の影響も最小限にとどめるために、地域レベルで一様に定期予防接種の高い接種率を維持する
ことが必要です。
 WHOの海外旅行および健康情報では、ポリオ発生の影響を受けた地域に旅行するすべての者に対して
十分にポリオの予防接種を受けることを勧めています。感染地域からの住民および4週間以上の滞在者は、
その出発に先立つこと4週から12か月の間に、経口ポリオワクチンまたは不活化ポリオワクチンの
追加接種を受けることが必要です。
 2015年11月に国際保健規則(2005)の下で招集された緊急委員会の進言基づき、WHO事務局長が、
(以前は、野生ポリオウイルスによる感染の影響に限られていた)国際的な懸念(PHEIC)の公衆衛生
緊急事態下での勧告を、ワクチン由来のポリオウイルスの伝播によって影響を受けた国からの
ポリオウイルスの国際的な拡大阻止へ拡張しました。PHEICに基づき発行された一時的な勧告事項に
遵守するために、ワクチン由来のポリオウイルスの伝播によって影響を受けたすべての国は、国の
公衆衛生上の緊急事態として感染発生を宣言し、すべての国際渡航者へのワクチン接種を検討する
必要があります。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response
Circulating vaccine-derived poliovirus – Lao People’s Democratic Republic
Disease Outbreak News
29 January 2016
http://www.who.int/csr/don/29-january-2016-polio-lao/en/