(No.218)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例
2016年12月19日更新

 2016年12月12日、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)は世界保健機関(WHO)に対し、新たに6人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染確定例を報告しました。
 患者は11月6日から20日までの間に発症し、6人全員男性です。年齢分布は32歳から80歳で中央値は61歳です。患者全員が入院しており重篤な状態です。
 6人のうち5人には生きた家禽や屠殺された家禽との接触歴がありますが、残り1人は家禽との接触歴はありません。患者は江蘇省から4人、福建省から1人、広東省から1人報告されており、家族内発生は報告されていません。
 2013年以降、国際保健規則(IHR)を通して鳥インフルエンザA(H7N9)の確定診断患者は806人報告されています。

公衆衛生上の取り組み
 中国政府は以下のサーベイランスと感染制御対策をとっています。
• アウトブレイクに対するサーベイランスと状況分析の強化
• 治療のためのあらゆる取り組みに対して補強を行うこと
• 住民に対してリスクコミュニケーションと情報の周知を実施すること

WHOのリスク評価
 ほとんどのヒト感染例は、生きた家禽を扱う市場への訪問を含め、感染した家禽あるいはウイルスに汚染された環境との接触を通して、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに曝露されています。このウイルスは、動物や環境中において検出され続けているため、今後もヒト感染例において報告されることが予想されます。医療従事者の感染者を含めた、鳥インフルエンザA(H7N9)の小さなヒト感染者集団の報告はありますが、現在の疫学的及びウイルス学的な証拠からは、このウイルスがヒトの間で持続的に感染伝播を起こす能力は獲得していないことが示唆されています。そのため、地域レベルで更に感染が拡大する可能性は低いと考えられています。
 この鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト感染は稀ですが、公衆衛生的に極めて深刻な影響を与える可能性があるので、このウイルスの変化および(または)ヒトへの感染様式の変化を発見するため、厳密に監視することが必要です。

WHOからのアドバイス
 WHOは、鳥インフルエンザのアウトブレイクが知られている国への渡航者に対し、養鶏場への立ち入り、生鳥市場での動物との接触、及び家禽が屠殺される可能性のある地域への立ち入りを避ける他、家禽やその他の動物の排泄物で汚染されているように見えるいかなる地面との接触をも避けることを勧めています。渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、安全な食べ物を衛生的に摂取することを勧めています。
 WHOは、この事象に関連して、入国地点における特別なスクリーニング及び渡航や貿易のいかなる制限をも行うことを推奨しません。これまでと同じように、鳥インフルエンザ感染の診断は、鳥インフルエンザが懸念される地域を渡航中あるいは同所からの帰国後すぐの時期に、重篤な急性呼吸器症状を発症した人において考えておくべきです。
 WHOは加盟国に対して、国際保健規則(2005)に準じてヒト感染を確実に報告するために、重篤な急性呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを含めた、インフルエンザのサーベイランスを継続して強化し、いかなる異常な事象に対しても継続して注意深く調査し、国家レベルでの健康対策を継続することを推奨しています。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China


Disease outbreak news
19 December 2016
http://www.who.int/csr/don/19-december-2016-1-ah7n9-china/en/