(No.222)

パキスタンにおける2016年のポリオウイルスの流行の要約
2016年12月27日更新

 パキスタンにおいて、循環型ワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)が、パロチスタン州Quettaの環境検体から検出されました。明らかな遺伝子学的繋がりを持つ2つの分離株が、2016年10月20日と11月28日に収集された環境検体から分離されました。ウイルスは環境検体のみより分離されており、この分離株と関連した麻痺患者はQuettaをはじめ同州のいかなる場所においても特定されておりません。
 パキスタンでは、引き続き野生ポリオウイルス1型(WPV1)の地域内流行を認めています。12月21日
現在、WPV1感染例として19人が2016年に報告されています。この数字は、これまで報告された年間の感染例として最も少ない数字であり、同国において流行した地域数も最少でした。
 直近6ヶ月間におけるポリオウイルス感染例の大部分が、ウイルスが蓄積されていない地域、例えば“第2、3および4層地域”(この地域はポリオの再感染に対してより脆弱であると考えられています)、から報告されています。2016年2月以来、パキスタンにおいて伝統的にポリオウイルスが蓄積されている地域からは、
野生ポリオウイルスによる麻痺患者は発生しておりません。

公衆衛生上の取り組み
 現在、国際的に承認を得ているプロトコールに従って、単価経口ポリオワクチン2型(mOPV2)による対策がQuettaとその近隣地域において計画されています。一連のキャンペーンのうち最初のものが、2017年
1月2日に計画されています。それに加え、国家保健サービス・国家行政・調整省(MoHSRC)が、世界保健機関(WHO)、UNICEFおよびその他の協力者の支援を受けて、急性弛緩性麻痺(AFP)患者の積極的な探索を更に強化し、より明確にこのウイルス株の流行を確認するための徹底的な野外調査を実行しています。
パキスタンは、残存しているポリオウイルス伝染の全ての系統を急いで阻止するために、引き続きポリオ根絶のための国家緊急活動計画を実行しています。
 報告された2型ウイルスによって侵されている地域は、アフガニスタン南部へと拡がる、国家を超えたWPV1の蓄積が常態化した地域の一部です。この地域においてWPV1伝染を阻止することは、引き続き、
国家、州、地域の保健チームにとって最も優先度の高い事項となっています。立て続けにある、2016年
12月、2017年1月および2017年2月の国家および地方における二価経口ポリオワクチン(bOPV)を用いたワクチン接種ラウンドの細心の準備が、国立および州立の災害対策センター(EOCs)と県立ポリオ対策室により進行中です。これらのキャンペーンは、WPV1の蓄積が常態化している地域内で低度ながら伝染が続く免疫の低い人達、即ち残っている空白地帯を埋めるために大変に重要です。
 確実に質を高めるため、準備は次の点に焦点を当てています;最も危険の高い地域に適切な資源を配分すること;実行計画を、死亡した子供達から特定された原因に的を合わせること;ワクチン接種チームの小計画、ワクチン接種者の選定、トレーニング、および管理を有効に行うこと;地域の代表者をとおしてコミュニティーとの間で地域の約束事を強化する。ウイルスの蓄積が常態化している地域を横断して連絡を取り合うために、全てのレベルにおいてアフガニスタンのチームと緊密な協調を引き続き行っていきます。

WHOのリスク評価
 WHOは、パキスタンとアフガニスタンの間にある、WPV1の蓄積が常態化している地域内においてWPV1の国際的な拡散の危険性が高いと分析しています(この種のウイルス株が、アフガニスタンと合同した疫学的な障壁を超えて歴史的に拡散していることによる)。WHOは同時に、同地域におけるcVDPV2の拡散の危険性についても‘中等度’から‘高い’と分析しています。WPV1あるいはcVDPV2の他国への国際的な拡散の危険性は低いと分析しています。

WHOからのアドバイス
 全ての国々、特にポリオ侵淫国や地域との間に頻繁な渡航歴や接触がある国々は、いかなる新しいウイルスの輸入についても迅速に発見するために、また、それに対する迅速な対応を容易にするために、AFP患者のサーベイランスを強化することが重要です。さらに、各国、領土、地域は、いかなる新しいウイルスの侵入の危険性も最小とするために、地域レベルでの定期予防接種率を一様に高く維持すべきである。
 WHOの「 INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH (ITH)」誌上において、ポリオ侵淫地への全ての旅行者は、ポリオに対する十分なワクチン接種を受けることを推奨されています。侵淫地の住民(および4週間
以上の滞在者)は、OPVの追加投与か不活化ポリオワクチン(IPV)を渡航後4週から12ヶ月以内に受ける
べきです。
 国際保健規則(2005)のもと招集された緊急委員会の助言によりますと、ポリオウイルスの国際的な拡散は国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)のままとされています。ポリオウイルス侵淫国は、
一時的な推奨に従っています。PHEICに基づき発出された一時的な推奨に従うためには、ポリオウイルスに
侵されたいかなる国も、国家の公衆衛生上の緊急事態としてこのアウトブレイクを宣告し、全ての国際的な
渡航者へのワクチン接種を考慮すべきです。ポリオウイルスを輸出するいかなる国も、全ての国際的な旅行者に対して、その出発前に確実にワクチン接種を行うべきです。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Summary of poliovirus circulation in 2016 – Pakistan
Disease outbreak news
27 December 2016
http://www.who.int/csr/don/27-december-2016-polio-pakistan/en/