(No.25)

ジカウイルスと神経学的異常および新生児奇形の増加に関する国際保健規則(IHR2005)
緊急委員会第一回会合におけるWHO声明
2016年2月1日

 ジカウイルス流行地域における小頭症やその他の神経学的異常の集団発生に関する国際保健規則
(IHR2005)緊急委員会が事務局長によって召集され、2016年2月1日13時10分から16時55分
(中央ヨーロッパ時間)に、第一回会合がテレカンファレンス形式で開催されました。

 WHO事務局は、ある状況下でジカウイルス感染によって現在のところは関連がある小頭症と
ギラン・バレー症候群(GBS)の集団発生に関する委員会の内容を要約しました。委員会では、現在
理解されているジカウイルスの歴史、伝播様式、臨床症状、疫学についての新たな情報が提供されました。

 次に挙げる加盟国は、ジカウイルスと小頭症やその他の神経学的異常との潜在的な関連性についての
情報を提供しました。:ブラジル、フランス、アメリカ合衆国、エルサルバトル

 同委員会は、フランス領ポリネシアで2014年に認めた集団発生に引き続き、最近ブラジルで報告された
小頭症やその他の神経学的異常の集団発生が、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)である
ことを助言しました。

 IHR2005に従って状況を考察し、小頭症とその他の神経学的異常に関するPHEICやジカウイルスとの
あり得る関連性について発表するに当たって、委員会は事務局長に対して助言を行いました。

小頭症とその他の神経学的異常
• 小頭症とGBSに対するサーベイランスは、特にジカウイルスの流行が知られている地域や危険性のある
 地域では、標準化し強化すべきです。
• 小頭症やその他の神経学的異常の新たな集団発生に対する研究は、ジカウイルスとの因果関係やその他の
 要因および補助因子があるかどうかを特定するために強化すべきです。

 これらの集団発生は、ジカウイルス感染が新たに流行した地域で発生しており、これらの地域では良好な
公衆衛生活動が行われ、この事象についてその他の原因が考えられないため、委員会は、特に妊婦や妊娠
適齢期にある女性において、ジカウイルス感染を減らすための積極的な対策をとることの重要性を強調
します。

委員会は次の新たな予防対策を推奨します

ジカウイルス伝播に関して
• ジカウイルス感染に関する標準的な症例定義や診断学を高危険地域に普及させるとともに、
 ジカウイルスに関するサーベイランスを強化すべきです。
• サーベイランスと管理対策を容易にするため、ジカウイルス感染の新しい診断法を開発すべきです。
• 住民の不安に対応し、共同体の繋がりを強化し、円滑に報告を行うように改善することで、ベクター
 コントロールと個人保護手段を確実に実行するために、ジカウイルス感染が流行している国々において
 リスクコミュニケーションを強化すべきです。
• ベクターコントロールと個人保護手段を積極的に推奨し、ジカウイルスに曝露する危険性を減らすべき
 です。
• 妊娠可能な年齢の女性、特に妊婦には曝露の危険性を減らすために必要な情報や資料を確実に得られる
 よう注意を払うべきです。
• ジカウイルスに曝露された妊婦は助言をうけ、最善で利用可能な情報や国の対策や政策に基づき、
 出産の経過を観察すべきです。

長期的な対策
• ジカウイルスに対するワクチンや治療薬や診断方法の適切な研究や開発努力を強化すべきです。
• ジカウイルスの流行が知られている地域で 神経症状や先天性奇形が潜在的に増える事に対し
 医療サービスを準備すべきです。

渡航上の対策
• ジカウイルスが流行する地域への渡航や貿易に対し、制限すべきではありません。
• ジカウイルスの流行する地域への渡航者は媒介蚊からの曝露の可能性を減らすために潜在的な危険性や
 適切な方法に対する最新の助言をうけるべきです。
• 飛行機や空港の昆虫駆除についてはWHOの標準的な推奨事項を実行すべきです。

情報の共有
• 国家当局はこのPHEICに関連する公衆衛生の重要な情報の報告と共有を迅速かつ適切に確保すべきです。
• 小頭症やGBSの発生率の増加とジカウイルスの流行に関連する臨床的、ウイルス学的、疫学的なデータは
 これらの出来事への国際的な視点からの理解を容易にし、感染制御のために国際的な支援を先導し、
 さらなる研究や開発を優先するために迅速にWHOと共有すべきです。

 この助言に基づき、2016年2月1日に事務局長は国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)を
宣言しました。事務局長は委員会の助言を支持しIHR(2005)に則り一時的な推奨事項として発表しました。
また、事務局長は助言をした委員会の委員や顧問に感謝の意を表しています。

【出典】
WHO,WHO statement
WHO statement on the first meeting of the International Health Regulations (2005) (IHR 2005)
Emergency Committee on Zika virus and observed increase in neurological disorders and neonatal
malformations
1 February 2016
http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2016/1st-emergency-committee-zika/en/

 厚生労働省の報道発表資料はこちらです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000111219.html