(No.29)

モルディブにおけるジカウイルス感染症
2016年2月8日

 2016年1月7日、モルディブの国際保健規則(IHR)担当窓口は、世界保健機関(WHO)に対して、
フィンランドから帰国した患者において、2015年の6月にジカウイルス感染による症状を認めたことを
報告しました。

 患者は37歳のフィンランド女性で、モルディブで数ヶ月間過ごした後、2015年の6月16日に
フィンランドへ帰国しました。患者は6月18日に発症(眼痛、関節痛に加え軽度の発熱、顔と体幹の発疹)
しましたが、2,3日で軽快しております。

 患者は仕事の関係でクリニックとの接触がありました。デング熱の疑いのため、6月24日に血清検体が
採取されました。これらの検査では、IgG、IgMのデング熱ウイルス抗体が陽性でしたが、同NS1抗原は
陰性でした。6月25日に尿検体が採取され、フラビウイルスのRNA検査のため、逆転写ポリメラーゼ連鎖
反応(RT-PCR)の検査を行う目的で送付されました。血清と尿検体から抽出されたRNA配列において、
以前のジカウイルス感染流行(2014年にイースター島で、2013年にフランス領ポリネシアとタイで流行)
の際に検出されたアジア系統のジカウイルスを認めました。

 フィンランド当局は、モルディブの関連当局者に対して、2015年12月29日にこの症例について報告しました。

公衆衛生上の取り組み
 モルディブの保健当局は次の対策を行っています。
・サーベイランスの強化、媒介蚊の防除対策の実行
・ジカウイルスに関連した危険性について住民への教育
・WHOと共同でジカウイルス感染が国内で継続中であるかどうかについて調査を実行

WHOのリスク評価
 現地において感染者が発見されたことにより、以前には感染の流行がなかった地域(モルディブ)にまで
ジカウイルス感染が地理的に広がっていることが示唆されています。これら新しい国における新規患者の
発生報告は、全体的なリスク評価を変化させることはありません。ジカウイルス感染を媒介し得る媒介蚊
(ヤブカ)が生息している地域に対する世界的流行の危険性は、世界の様々な地域においてこれらの蚊が
地理的に拡散していることによって裏付けられています。WHOは、引き続き疫学的状況を監視し、
最新の利用できる情報に基づいたリスクアセスメントを行います。
 ジカウイルス感染と小頭症や他の神経学的異常との関連性を指摘した報告がありますが、これらの事象の
因果関係は未だに証明されていません。更に詳細が明らかになるまで、加盟国は、特にジカウイルスの
流行が知られている地域や危険性のある地域では、小頭症やその他の神経学的異常に対する
サーベイランスを標準化し強化すべきです。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
Zika virus infection – Maldives
8 February 2016
http://www.who.int/csr/don/8-february-2016-zika-maldives/en/