(No.35)

アメリカ合衆国における小頭症
2016年2月12日

 2016年1月16日アメリカ合衆国の国際保健規則(IHR)担当窓口は汎アメリカ保健機構/世界保健機関
(PAHO/WHO)に対してハワイ州で2015年12月に小頭症の男児が生まれたことを報告しました。
児の母親は妊娠2ヶ月時にブラジル在住時にジカウイルス感染に合致する症状を経験しましたが当時感染
診断はなされていませんでした。児の生後1週間以内にアメリカ合衆国疾病管理予防センターで実施された
児の髄液と血清のELIZA検査でIgMが検出され、中和試験(PRNT)で診断確定されました。また、出産した
週には児の母親から採取された検体から同様の検査法でフラビウウイルスへの最近の感染が示されました。

WHO によるリスク評価
 今回の報告はジカウイルスによる小頭症の増加する報告に付け加えられるべきものです。ジカウイルスと
新生児の先天的な神経学的障害との関連についてのエビデンスは集積されてきていますが、因果関係を
十分に説明できる情報はありません。それ故に更なる情報の集積が必要です。詳細が判明するまでは、
加盟国としては小頭症や他の神経学的障害を特にジカウイルスの伝播の知られている地域や、その危険性が
ある地域においては標準的あるいは強化サーベイランスを実施するように勧められます。WHOは流行状況と
危険因子評価を最新の有用情報を基に継続しています。

WHOによる勧奨
 人の居住域と媒介蚊の繁殖場所が近接している事がジカウイルス感染の重要な危険因子です。
 予防は蚊の繁殖場所を減らし(繁殖場所の撤去や改変)人と蚊の接触機会を減らすにかかっています。
そのためには蚊の幼虫繁殖場所である自然或いは人工的な水溜まりを減らし、危険地域での蚊の成虫の数を
減らすこと、網戸をつけたり、窓やドアを閉める事、長い袖の衣服を着て忌避剤を使用すること等が
必要です。媒介蚊であるシマカは日中に吸血するので日中に睡眠する乳幼児、病人や高齢者には
殺虫剤処理をされているかどうかにかかわらずベッドネットを使用する事が推奨されます。
 アウトブレイクの際にはWHOが指導している方法に基づいて殺虫剤の空中散布が勧められます。
世界保健機構殺虫剤評価スキームが推奨している殺虫剤は技術的に適応があれば大きなウオーター
コンテナにおける幼虫の殺虫のためにしようすることも勧められます。
 蚊刺症からの基本的な予防策を高リスク地域へ渡航する特に妊婦は実施すべきです。それらは忌避剤の
使用、長袖の明るい色調の服を着ること、蚊の侵入を防ぐスクリーンが装備されている部屋かどうかを
確認することです。
 WHOは最新の有用情報から判断してジカウイルス感染流行国へのいかなる渡航や交易の制限も推奨は
していません。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Microcephaly – United States of America
Disease Outbreak News
12 February 2016
http://www.who.int/csr/don/12-february-2016-microcephaly-usa/en/