(No.37)

ベナンにおけるラッサ熱
2016年2月19日更新

 2016年1月25日ベナンの国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関(WHO)にラッサ熱のアウト
ブレイクについて報告しました。
 アウトブレイクは、当初1月21日にボルゴー県Tchaourou地方の医療従事者内で不明熱が集団発生して
いるという報告により検知されました。これらの医療従事者は1月3日に出血熱を罹った患者のケアをして
いました。
 1月21日から2月16日までの間に71人(うち6人が診断確定、10人が可能性例、55人が疑い例)が7つの
県から報告されました。内訳はボルゴー県52人、コリネ県13人、ウエメ県2人、アリボリ県1人、
アトランティック県1人、コウフォ県1人、リトラル県1人です。同時期に23人が死亡しました。内訳は
ボルゴー県16人、コリネ県4人、アトランティック県1人、ウエメ県1人、プラトー県1人です。
 7人(うち3人が確定例、1人が可能性例、3人が疑い例)が医療従事者からの発症例です。
 現在、2人の死亡例を含む6人がナイジェリアのラゴスにあるラゴス大学教育病院ウイルス学研究所に
おいて逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により診断確定中です。

公衆衛生上の取り組み
 ベナンの保健省はWHOおよび支援団体と共にアウトブレイクの管理を調整しています。調査活動、
サーベイランスの強化、患者管理、感染予防や制御、接触者の追跡調査と経過観察、社会的動員を含めた
対策方法を実施しています。WHOは被災地における活動を支援するために多岐にわたる領域の専門家を
派遣しました。WHOのアフリカ地域事務局(WHO/AFRO)は2人の専門家を配備し、国の財政支援を供給して
います。アウトブレイクが始まって以来、318人の接触者が同定され、うち292人が現在経過観察中です。

WHOのリスク評価
 ラッサ熱はナイジェリア隣接国および西アフリカの国々で流行しています。同病気は毎年ベナンの様々な
地域でもアウトブレイクが生じ、12月から2月の間に観察され、年間のピークを迎えます。今回、ベナンに
おいて2度目のアウトブレイクの報告ですが、このアウトブレイクは良く知られた季節性パターンの中で
起こっています。利用できる情報によると、その特性は後述の他のアウトブレイクと類似しています。
しかし今年のこの時期の季節性症例の再燃を考慮し、西アフリカのラッサ熱の流行国では関連する
サーベイランスシステムの強化を推奨しています。
 WHOは、利用できる現在の情報に基づく限り、ベナンへの旅行や貿易の制限を推奨してはいません。

疾患の背景
 ラッサ熱は潜伏期間が1~4週間の西アフリカにおいて流行している急性ウイルス性出血熱疾患です。
ラッサウイルスはげっ歯類の排泄物で汚染された食品や家庭用品と接触することで感染します。ヒトから
ヒトへの感染や検査室での感染も起こります。特に適切な感染制御対策が行われていない環境の
医療施設では、発生の可能性があります。この病気は西アフリカの一部の齧歯類が棲息する地域で
流行します。ラッサ熱はベナン(最初に診断されたのが2014年11月)、ギニア、リベリア、マリ、
シエラレオネとナイジェリアの一部が流行地であることが知られています。おそらく同様に西アフリカ
諸国の他の国々にも存在しています。全体的な致死率は1%です。ラッサ熱の重篤な症例が入院患者で
みられた場合、致死率は15%です。輸液や対処療法による一刻も早い治療が生存率を改善します。

【出典】
WHO Lassa Fever – Benin
Disease outbreak news
19 February 2016
http://www.who.int/csr/don/19-february-2016-lassa-fever-benin/en/