ワクチン由来ポリオの発生 －ラオス
2016年2月25日更新
ラオスの国際保健規則（IHR）担当窓口は、2016年2月6日から16日までの間に、新たに3人の
ワクチン由来ポリオウイルス1型(VDPV1)患者を国際保健機関（WHO）に報告しました。
症例の詳細情報
１．15ヶ月の女児。ビエンチャン県Phonhoung区に在住で、1月8日に麻痺症状が出現しました。
２．44歳の女性。ビエンチャン県Feuang区に在住で、1月11日に麻痺症状が出現しました。
上記の2例とも経口ポリオワクチン（OPV）の接種を受けていませんでした。2016年2月3日、本邦の
国立感染症研究所（NIID）は、2例の便検体において共に循環型ワクチン由来ポリオウイルス1型
（cVDPV1）が検査で陽性であったことを報告しました。この2例に疫学的な繋がりはありません。
３．18歳の男性。ビエンチャン県Meun地区に在住で、2016年1月3日に麻痺症状が出現しました。
便検体の検査結果は保留中です。しかし、麻痺の発症から14日以上経過した後に採取された検体である
ため、不適切な検体であると考えられます。濃厚接触者から採取された便検体においてVDPV１が検査で
陽性となっており、疫学的な繋がりと接触者の便検体陽性に基づいて、この患者はcVDPV1感染者に
分類されます。
注目すべきことは、これらの新しいcVDPV1分離株が、現在流行しており以前にラオスで検出された
cVDPV1分離株との間に、遺伝学的に関連性があるものの遺伝子の差異を認めるということです。
この新たな知見は、1つ以上のcVDPV1株が別々に勃興しており、特定されることなくラオスで重複して
循環していた可能性を示唆しています。
現在までのところ、今回の流行おけるcVDPV1感染確定例の総数は10例です。さらに、流行が始まって
以来、ボーリカムサイ県、サイソンブン県、ビエンチャン県の23人の健康な接触者の便検体からcVDPV1が
検出されています。
以前に健康な接触者から数例のcVDPV1陽性報告を認めてから、サーベイランスの強化が国家レベルで、
特に新しく感染者を認めた地域において、維持されています。WHO西太平洋地域事務局は、近隣諸国との
間で事象の発生や対策活動に関する情報交換を行っています。
公衆衛生上の取り組み
2015年10月にラオスで最初のcVDPV1確定例が発見されて以来、2015年12月から2016年1月の間に
行われた補完的な予防接種活動（SIA）を含め、集団発生への対策の取り組み活動が国中で行われて
きました。ポリオの集団発生への対策計画が策定され、取り組み活動の調整を行うために緊急対策本部が
国家および県レベルで立ち上げられました。サーベイランスの強化が、国全体に渡って実行されていますが、
日毎には急性弛緩性麻痺（AFP）症例の報告は認めておりません。病院や保健所における記録の後方視的な
調査を含め、積極的な症例探査が危険性の高い地域で継続中です。
一連のSIAを含む集団発生に対する対策が、危険性の高い集団が存在している地域の全年齢層の人々だけ
ではなく、15歳以下の全ての子供も対象となっています。
WHOのリスク評価
このcVDPV1の報告例は、浸淫地域の住民の免疫レベルが低く、このウイルス株がさらに拡散する
危険性を示唆しています。このcVDPV1株については、これらの地域で数ヶ月の間、感染の循環が
発生しています。以前の同様の経験に基づくと、新たな感染例が報告されることが予想されます。
しかしながら、もしSIAが対象住民に対して効果的に行われるのであれば、ラオスから国際的に
拡散される危険性は低いと予想されます。WHOは引き続き疫学的状況をモニターし、現在のところ
利用できる最も新しい情報に基づいてリスクアセスメントを行います。
WHOからのアドバイス
WHOは、ポリオ浸淫地域への全ての旅行者はポリオに対する十分なワクチン接種を受ける事を
推奨します。浸淫地域の住民と同地へ4週間以上滞在する来訪者は、OPVの追加投与かIPV接種を、
その旅行に先立つこと4週から12ヶ月の間に受けるべきです。
cVDPVs流行国からのポリオウイルスの国際的な拡散を防ぐために開催された、国際保健規則
（IHR2005）に基づく緊急委員会の助言に従って、2015年11月にWHO事務局長によって発出された
仮勧告は現在も有効です。
これらの勧告に従って、cVDPV感染を認めた全ての国は、国家的な公衆衛生上の緊急事態として
その流行を公表し、海外への全ての旅行者に対してワクチン接種を考慮すべきです。仮勧告に関する最新の
報告については、関連リンクをご参照下さい。
【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
Circulating vaccine-derived poliovirus – Lao People’s Democratic Republic
25 February 2016
http://www.who.int/csr/don/25-february-2016-polio-lao/en/
ワクチン由来ポリオウイルス1型(VDPV1)患者を国際保健機関（WHO）に報告しました。
症例の詳細情報
１．15ヶ月の女児。ビエンチャン県Phonhoung区に在住で、1月8日に麻痺症状が出現しました。
２．44歳の女性。ビエンチャン県Feuang区に在住で、1月11日に麻痺症状が出現しました。
上記の2例とも経口ポリオワクチン（OPV）の接種を受けていませんでした。2016年2月3日、本邦の
国立感染症研究所（NIID）は、2例の便検体において共に循環型ワクチン由来ポリオウイルス1型
（cVDPV1）が検査で陽性であったことを報告しました。この2例に疫学的な繋がりはありません。
３．18歳の男性。ビエンチャン県Meun地区に在住で、2016年1月3日に麻痺症状が出現しました。
便検体の検査結果は保留中です。しかし、麻痺の発症から14日以上経過した後に採取された検体である
ため、不適切な検体であると考えられます。濃厚接触者から採取された便検体においてVDPV１が検査で
陽性となっており、疫学的な繋がりと接触者の便検体陽性に基づいて、この患者はcVDPV1感染者に
分類されます。
注目すべきことは、これらの新しいcVDPV1分離株が、現在流行しており以前にラオスで検出された
cVDPV1分離株との間に、遺伝学的に関連性があるものの遺伝子の差異を認めるということです。
この新たな知見は、1つ以上のcVDPV1株が別々に勃興しており、特定されることなくラオスで重複して
循環していた可能性を示唆しています。
現在までのところ、今回の流行おけるcVDPV1感染確定例の総数は10例です。さらに、流行が始まって
以来、ボーリカムサイ県、サイソンブン県、ビエンチャン県の23人の健康な接触者の便検体からcVDPV1が
検出されています。
以前に健康な接触者から数例のcVDPV1陽性報告を認めてから、サーベイランスの強化が国家レベルで、
特に新しく感染者を認めた地域において、維持されています。WHO西太平洋地域事務局は、近隣諸国との
間で事象の発生や対策活動に関する情報交換を行っています。
公衆衛生上の取り組み
2015年10月にラオスで最初のcVDPV1確定例が発見されて以来、2015年12月から2016年1月の間に
行われた補完的な予防接種活動（SIA）を含め、集団発生への対策の取り組み活動が国中で行われて
きました。ポリオの集団発生への対策計画が策定され、取り組み活動の調整を行うために緊急対策本部が
国家および県レベルで立ち上げられました。サーベイランスの強化が、国全体に渡って実行されていますが、
日毎には急性弛緩性麻痺（AFP）症例の報告は認めておりません。病院や保健所における記録の後方視的な
調査を含め、積極的な症例探査が危険性の高い地域で継続中です。
一連のSIAを含む集団発生に対する対策が、危険性の高い集団が存在している地域の全年齢層の人々だけ
ではなく、15歳以下の全ての子供も対象となっています。
WHOのリスク評価
このcVDPV1の報告例は、浸淫地域の住民の免疫レベルが低く、このウイルス株がさらに拡散する
危険性を示唆しています。このcVDPV1株については、これらの地域で数ヶ月の間、感染の循環が
発生しています。以前の同様の経験に基づくと、新たな感染例が報告されることが予想されます。
しかしながら、もしSIAが対象住民に対して効果的に行われるのであれば、ラオスから国際的に
拡散される危険性は低いと予想されます。WHOは引き続き疫学的状況をモニターし、現在のところ
利用できる最も新しい情報に基づいてリスクアセスメントを行います。
WHOからのアドバイス
WHOは、ポリオ浸淫地域への全ての旅行者はポリオに対する十分なワクチン接種を受ける事を
推奨します。浸淫地域の住民と同地へ4週間以上滞在する来訪者は、OPVの追加投与かIPV接種を、
その旅行に先立つこと4週から12ヶ月の間に受けるべきです。
cVDPVs流行国からのポリオウイルスの国際的な拡散を防ぐために開催された、国際保健規則
（IHR2005）に基づく緊急委員会の助言に従って、2015年11月にWHO事務局長によって発出された
仮勧告は現在も有効です。
これらの勧告に従って、cVDPV感染を認めた全ての国は、国家的な公衆衛生上の緊急事態として
その流行を公表し、海外への全ての旅行者に対してワクチン接種を考慮すべきです。仮勧告に関する最新の
報告については、関連リンクをご参照下さい。
【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
Circulating vaccine-derived poliovirus – Lao People’s Democratic Republic
25 February 2016
http://www.who.int/csr/don/25-february-2016-polio-lao/en/