(No.57)

アメリカ合衆国におけるギラン・バレー症候群
平成28年3月21日更新

 2016年3月10日、アメリカ合衆国の国際保健規則(IHR)担当窓口は、同国においてジカウイルス感染症
が陽性であることが確認された2例のギラン・バレー症候群(GBS)の患者を汎アメリカ保健機構/世界保健
機関(PAHO/WHO)に報告しました。両例においてGBSの症例定義(the Brighton Collaboration case
definition for GBS)を満たすかどうかを見極めるため、現在調査を行っております。

症例の詳細情報
1.高齢男性。アメリカ在住で中央アメリカに最近の渡航歴があります。アメリカへ帰還後間もなく急性の
 熱性疾患を発症し、四肢における進行性の上行性麻痺と反射の減弱により、1月に入院しました。患者は
 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によってジカウイルス感染が確認され、治療を受け退院の準備が
 できていましたが、突然の脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血で死亡しました。

2.成人男性。ハイチ在住で、1月上旬に急性の顔面麻痺、嚥下困難、手指のしびれを発症しました。先行
 する病気は報告されていませんでした。2,3日後、更なる治療を受けるため、アメリカへ移動しました。
 髄液検査では、蛋白質と正常白血球の上昇を認め、診察において軽度の麻痺と反射の減弱を認めました。
 患者は血清検査でジカウイルス感染が陽性であることが確認され、免疫グロブリンの点滴を受け退院
 しました。

WHOのリスク評価
 現在のところ、計9つの国および領土において、GBS発生数の増加やGBS患者の間でのジカウイルス
感染が確認されています。媒介生物によるジカウイルス感染伝播がなかった国において、ジカウイルス
感染とそれに附随するGBSの発症が確認されたのは今回初めてのケースになります。これらの症例は、
ジカウイルスとGBSとの間に因果関係がある可能性を示唆する新たな証拠を提供しました。GBSの病因と
して、最近のジカウイルス感染とともに、デング熱ウイルス感染がなかったかどうかを確認するために
更なる調査が必要です。
 現在ジカウイルスの現地感染が報告されている国々において、向こう数ヶ月の間にGBS症例数の増加に
直面する可能性があります。しかし、これら全ての国々において報告されたGBS発生数の増加が、
サーベイランスの強化によるものではなく、真の変化であることを確認することは大変重要です。WHOは
引き続き疫学状況をモニターし、最新の利用できる情報に基づいたリスク評価を実行していきます。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
Guillain-Barré syndrome – United States of America
21 March 2016
http://www.who.int/csr/don/21-march-2016-gbs-usa/en/