(No.63)

トーゴにおけるラッサ熱
2016年3月23日更新

 2016年1月25日ベナン共和国の国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関(WHO)に対して
ラッサ熱のアウトブレイクの報告をしました。

症例の詳細は以下の通りです。
1.47歳の他国籍男性。患者はトーゴ北部サバナ州サンサネマンゴ(Sansanné-Mango, Savanes Region
 in the North of Togo)で勤務していた医療従事者です。2月26日に発熱、嘔吐、下痢で発症し、
 マラリアの診断で2月26日にドイツのケルンに搬送されていますが、到着後数時間で多臓器不全で死亡
 しています。患者には発症前の3週間以内に他地域への渡航歴はありません。3月9日ドイツ・ハンブルグの
 バーナードノホト研究所でポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び遺伝子配列により診断されています。

2.33歳の他国籍男性。患者は上記患者の治療にあたっていた医療従事者で3月5日に同様の症状で発症して
 います。3月9日に同じ病院で隔離をされています。その後米国に搬送され、3月12日にアトランタに
 到着しています。発症前3週間以内に他国への渡航歴はありません。3月12日米国疾病管理予防センター
 (U.S CDC)で実施されたPCR検査で診断確定されています。米国到着時より治療が継続されており、
 安定した状態です。

公衆衛生対策
 トーゴの保健省は今回のアウトブレイクについての調査と対策をWHO、U.S CDCの支援のもとで実施
しています。これにはトーゴで患者の発生した医療施設での対応や患者の病歴調査などが含まれています。
社会的動員やラッサ熱への警告キャンペーンなども展開中です。接触者調査やフォローアップは既に実施
されました。3月18日現在トーゴで13人、ドイツで52人、米国で1人の接触者の追跡調査が行われています。
WHO とCDCのラッサ熱に関するウェブページは更新され、後者はフランス語訳もされています。

WHOによる評価
 患者が発生した、トーゴのベナンの国境付近では2015年12月からラッサ熱のアウトブレイクが有ります。
さらに2国間では地域の人の国境を越えた往来があります。従ってベナンからトーゴに感染が拡がった
可能性は否定できません。トーゴで発生した今回のラッサ熱のウイルスの遺伝子配列についての予備的な
報告ではラッサ熱の浸淫地であるナイジェリアのラッサウイルスとは関連のない別の新系統のものである
との情報です。確認のための遺伝子配列の検査と疫学的調査は進行中です。
 WHOは今後も利用可能な最新の情報に基づいて疫学的な状況と危険因子の評価を継続していきます。
 WHOは現在入手できる情報に基づいて、トーゴへの渡航やいかなる交易の制限も推奨はしていません。


【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
Lassa Fever – Togo
Disease outbreak news
23 March 2016
http://www.who.int/csr/don/23-march-2016-lassa-fever-togo/en/