(No.64)

ドイツにおけるラッサ熱
2016年3月23日更新

 2016年3月10日~16日の間にドイツの国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関欧州地域事務局
(WHO/EURO)に2例のラッサ熱患者の報告をしました。

症例の詳細は以下の通りです。
1.トーゴから2月25日ドイツのケルンに移送された医療従事者で重症化したマラリアという診断でした。
 患者は2月26日に死亡しました。剖検所見は出血熱を疑うものであり、3月9日ドイツハンブルグにある
 ベルンハルトノホト医学研究所での検査でラッサ熱の診断が確定しました。

2.患者は上記患者の葬儀に3月2日に携わり、死体をさわった従業員です。この患者は手袋を着用して
 おり、体液に曝露された記憶はないとの事です。上記患者の診断が確定した3月9日から自宅で隔離されて
 いました。この患者は上記患者の死体に接触したときにはすでに上気道感染症状があったとのことです。
 その後症状は一進一退でした。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による1回目の検査は3月10日に実施され、
 陰性でした。しかし症状が続くために3月15日にPCR再検されラッサ熱の診断が確定しました。患者は
 フランクフルトにある特殊隔離ユニットに転院となりました。患者には発症前3週間以内の渡航歴は
 ありません。患者の家族4人は患者と同じ隔離ユニットに自発的に移動しています。更なる調査が実行
 されています。

公衆衛生対策
 ラッサ熱の初発患者が同定されてから52人の接触者が同定され、現在フォローアップ中です。全ての
接触者は医療従事者か葬儀関連の従事者です。これらの接触者のうち38人は3月19日で最大の潜伏期である
21日が経過したために、監視終了となりました。2例目の患者との接触者全ては現在フォローアップ中です。

WHOによる危険因子評価
 ラッサ熱の患者が西アフリカからヨーロッパに持ち込まれた過去例はあります。しかしヨーロッパ内で
2次感染が起こったのはこれが初めてです。ドイツにおいて更にラッサ熱の感染が起こる危険性は低く、
患者の治療にあった病院環境に限局されており、全ての接触者は確認され、モニターされています。
 WHOは疫学的な状況のモニターと利用可能な最新の情報をもとに危険因子評価を実施しています。

WHOによるアドバイス
 今回ドイツで2例目となった患者から分かることは全ての国が予想される診断名に関わらず患者の医療を
行う際には標準感染予防策を確実に行う必要があることです。これらの対策には基本的な手指衛生、
呼吸器の衛生、感染性物質への接触や飛沫のブロックなどのための個人防護の使用、安全な注射手技の
実践、安全な埋葬などが含まれます。
 WHOは利用可能な情報に基づき、ドイツへの渡航や交易の制限も推奨はしていません。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Lassa Fever – Germany
Disease outbreak news
23 March 2016
http://www.who.int/csr/don/23-march-2016-lassa-fever-germany/en/