(No.70)

パナマにおけるギラン・バレー症候群
2016年3月29日

 2016年3月15日、パナマの国際保健規則(IHR)担当窓口は、汎アメリカ保健機構/世界保健機関
(PAHO/WHO)に対して、ジカウイルス感染に伴って発症したギラン・バレー症候群(GBS)の患者を
報告しました。

 患者は13歳女性。2月19日に発熱で発症しました。2月29日に下肢の脱力、3月3日に深部腱反射の消失を
認め、3月12日、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)においてジカウイルス感染が判明し、脳脊髄液
と尿での蛋白値の上昇を認めました。患者は、治療に対する反応は良好です。

公衆衛生上の取り組み
 パナマの保健当局は次の取り組みを実行しています。:ベクターコントロール活動の強化と繁殖地域に
おける蚊の駆除、地域社会および一般開業医や公衆衛生専門家に対する病気の知識と予防策についての
情報の普及、GBS患者管理を行える公共医療施設の準備。

WHOのリスク評価
 この患者は、パナマにおいて初めてとなるジカウイルス感染が確認されたGBS患者です。アメリカ大陸の
その他の国々において、GBS患者おけるジカウイルス感染例が確認されています。現在ジカウイルスの
現地感染が報告されている国々において、向こう数ヶ月の間にGBS症例数の増加に直面する可能性が
あります。

 これらの患者は、ジカウイルス感染とGBSとの間の関連を示す新たな証拠を提供しました。しかしながら、
GBSとの関連性がわかっている、あるいは関連性がある可能性があるこれまでの感染例について、
潜在的な役割を特定するために更なる調査が必要です。WHOは引き続き疫学状況をモニターし、
最新の利用できる情報に基づいたリスク評価を実行していきます。

WHOからのアドバイス
 居住地域と媒介蚊の繁殖地域が近接していることは、ジカウイルス感染症の危険因子となります。
感染症予防対策として重要な事は、繁殖地の除去や改変を通して蚊の繁殖を抑制し、蚊との接触を極力
避けることです。これは、幼虫の生息地となる自然および人工の水源を減らすことで危険地域の成虫蚊の
数を減らし、防蚊ネットを使用し窓や戸口を閉め、長袖の着用や防虫剤を使用することで達成されます。
この感染症の主要な媒介蚊となるヤブカは日中に活動することが知られており、小さい子供、病人や老人
など日中に睡眠をとる人々は、殺虫剤が塗布された、あるいは未塗布のものであっても蚊帳を使用して
睡眠をとることが推奨されています。また、蚊取線香やその他の殺虫剤用噴霧器も、蚊に刺される機会を
減らすのに役立つでしょう。

 感染が流行している間は、殺虫剤の散布がWHOの技術指南のもと実行される場合があります。技術的に
適応のある場合に、WHOの殺虫剤評価体系によって推奨されている適切な殺幼虫剤が、大きな貯水タンク
に対して使用されるでしょう。

 蚊刺傷を防止するための基本的な予防策が、危険性の高い地域に旅行する人々、特に妊婦に対して
実行されるべきです。この予防策として、忌避剤の使用、明るい色の服、長袖、長ズボンの着用、蚊の
侵入を防ぐために隙間なく網戸を設置する、等が挙げられます。

 性交渉を通したジカウイルス伝播の危険性は極めて限定的であると考えられていますが、予防の原則に
基づいてWHO は次のことを推奨します。
• ジカウイルスに感染した全ての患者(男女とも)およびその性的パートナー(特に妊婦)は、性交渉に
 よるジカウイルス感染の潜在的な危険性、避妊手技および安全な性交渉方法についての情報を得ると
 同時に、性交渉の際はコンドームを提供されるべきである。防御していない性交渉を持ち、ジカウイルス
 感染の懸念から妊娠を望まない場合、その女性に対して緊急避妊へのアクセスとカウンセリングを準備
 するべきである。
• ジカウイルスの局地感染が発生している地域に在住しているか同地域から帰還した妊婦の性的
 パートナーは、妊娠期間中において、より安全な性行為を行うか、性行為を控えるべきである。
• ジカウイルス感染のほとんどは無症候であるため、
  o ジカウイルスの局地感染が発生している地域に在住している男性および女性は、より安全な性行為を
   行うか、性行為を控えるべきである。
  o ジカウイルスの局地感染が発生している地域から帰還した男性および女性は、より安全な性行為を
   行うか、少なくとも帰還後4週間は性行為を控えるべきである。

 ジカウイルスに関する懸念とは別に、WHOは、HIVやその他の性感染症および望まない妊娠を防ぐ
ために、正しい方法で一貫してコンドームを使用することを含め、より安全な性行為を行う事を常に
推奨しています。

 WHOは、ジカウイルスを特定するためのルーチーンの精液検査を推奨していません。

 WHOは、パナマに対する、現在の情報に基づいたいかなる旅行や貿易の制限を推奨しません。

【出典】
 WHO, Emergencies preparedness, response.
 Guillain-Barré syndrome – Panama
 29 March 2016
http://www.who.int/csr/don/29-march-2016-gbs-panama/en/