(No.75)

ケニアにおける黄熱患者
2016年4月6日

 2016年3月15日から18日の間にケニアの国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関(WHO)に対して
2人の輸入黄熱患者を報告しました。
 両患者共にケニア国籍の30代前半男性でアンゴラのルアンダで働いていました。アンゴラへの渡航前に
黄熱に対するワクチン接種は2人とも実施しておらず、移動中に発症しました。
 1人目の患者は3月8日にルアンダで発症し、3月12日にケニアに移動しています。到着後、ナイロビの
私立病院に入院し、後に他の医療施設に転院しています。患者は多臓器不全で死亡しています。
 2人目の患者はルアンダで3月1日に発症し3月7日に空路ケニアに戻っています。患者はケニアと
タンザニアの国境近い故郷(Namanga)に戻っています。その後3月11日に加療のためにナイロビに行き、
そこで入院となりました。現在加療され回復、退院しています。
 両患者共に、ケニア中央医学研究所(KEMRI)での逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)およびELISA法
での検査が実施され、RT-PCRは陰性でしたが、黄熱ウイルスに対するIgMが陽性でした。現在プラーク
減少中和抗体検査(PRNT)が実施されています。

公衆衛生対策
 ケニア政府は以下の様な対策を実施しています。
*国内の全ての保健部署と関連部署に対してサーベイランスの強化を特に黄熱に対して侵入地点或いは
 国内において実施すること
*社会的動員活動の実施
*輸入例発見に関する緊急対策委員会の活動実施
*検査施設の検査能力の強化
*ウイルス出血熱(VHF)に対する準備と早期対策プランのアップデートのためにVHF緊急対策チームの
 再活動
*渡航者に対する黄熱のワクチン情報の提供、及び入国の時点でのイエローカード確認の履行

WHOによるリスク評価
 黄熱の媒介可能な蚊であるネッタイシマカの棲息密度はナイロビでは極めて低く、かつ2人の患者は
ウイルス血症の状態で国内に入ったわけではないために地域での伝播の継続についてのリスクは最小限で
あると考えられます。しかし、黄熱に対するリスク(ヒトの感受性、媒介蚊の分布、宿主動物)が存在する
国の地域では黄熱が持ち込まれる可能性があることを強調しておくことが大切です。さらにケニアから他の
国へ国際間の拡がりを起こす可能性については低いと思われます。しかしながら ワクチン接種が必要な
国からの帰国者で黄熱ワクチンを接種していない者が黄熱に罹患しているという報告があるからには履行の
再強化が必要な事は、IHR(2005)にそって考えると明白です。WHOは利用できる最新の情報に基づいて
疫学的な状況のモニターとリスクアセスメントを継続しています。

WHOによる推奨
 WHOは加盟国に対して特に(例えば媒介動物が存在するような)地域での感染サイクルが確立しうる
様な加盟国に対しては地域流行の可能性のある国へ渡航者に対して免疫獲得の実施強化をおこなうように
促しています。
 WHOは最新の有効な情報に基づき、ケニアへの渡航や交易に関するいかなる制限も推奨はしていません。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Yellow Fever – Kenya
Disease Outbreak News
6 April 2016
http://www.who.int/csr/don/6-april-2016-yellow-fever-kenya/en/