(No.76)

フランス領マルティニークにおける小頭症の発生状況
2016年4月9日更新

 2016年3月24日フランスの国際保健規則(IHR)担当窓口は汎アメリカ保健機構(PAHO)および
世界保健機関(WHO)に対し、小頭症とジカウイルス感染症が同時に起こった胎児について報告しました。
3月10日妊娠中に小頭症の診断がなされました。胎児の検体はマルティニークのフォール・ド・フランスに
あるマルティニーク大学センター病院で採取され検査されました。羊水と胎児の血液検体の両方から
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によりジカウイルスが検出されました。3月22日に国家リファレンス
センターでのアルボウイルス検査でジカウイルス感染が確認されました。

 2015年12月から2016年3月の間に、母親から連続して血清を採取しジカウイルスが確認されました。

WHOによるリスク評価
 本症例はマルティニークで小頭症胎児からジカウイルス感染が検出されたが最初の症例です。この報告は
重要です。母親と胎児のジカウイルス感染についての前向き追跡報告であり、この情報から母親と胎児が
感染をうけた妊娠時期が推定可能となるからです。また母親が最初に感染したのち数か月経過して、胎児は
PCR検査でジカウイルス陽性となっていることがわかります。またこの報告は、妊娠初期のジカウイルス
感染は小頭症のリスクの増加と関連性があるという証拠も示しています。しかし小頭症のような先天性異常に
おけるジカウイルス感染の役割を理解し、因果関係をあきらかにするためにはさらなる調査が必要です。
 WHOは利用可能な最新の情報に基づいて、疫学的な発生状況を監視し、リスク評価を行っています。

WHOからのアドバイス
 人の居住地周辺に媒介蚊の繁殖する場所があることは、ジカウイルス感染の大きな危険因子となります。
感染の予防と制御は、感染源の削減(繁殖地の除去および環境改善)を通して媒介蚊の繁殖を減らすことと、
媒介蚊と人との接触機会を減らすことに依存します。これらは、蚊の幼虫が棲息する自然及び人工の
貯水池数を減らすことで、結果的にリスクのある地域で蚊の成虫個体数も減らしたり、防虫剤、網戸、
戸や窓の遮断、長袖の衣服の着用などの防御を行うことで、達成することができます。シマカ属(感染伝播
において主となる媒介昆虫)は日中に活動するため、特に幼児、病人および高齢者など日中に睡眠を取る人を
保護するために殺虫剤処理の有無にかかわらず蚊帳を使用すべきことが勧められています。
 アウトブレイクの間は、WHOによって作成された技術要綱にしたがい、殺虫剤の空中散布が実施される
ことがあります。技術的な適応のある場合には、比較的大きな貯水容器を処理するために(WHOの農薬
評価事業計画による推奨の)適正な殺虫剤が幼虫の殺虫剤として使用されることもあります。
 危険性の高い地域を旅行する人々、特に妊娠中の女性は、防蚊対策の基本的な予防策がなされるべきです。
 明るい色の長袖の上下衣服の着用、蚊の忌避剤の使用、蚊が部屋に入るのを確実に防ぐための網戸の
設置などがあります。

 性行動を通してのジカウイルス感染のリスクは非常に限定的と考えられますが、感染予防の原則に基づいてWHOは以下のように推奨しています:
 ジカウイルス感染症に罹患した患者(男女を問わず)とそのパートナー(特に妊婦)は、ジカウイルス
 には性交渉による感染伝播するリスクが潜在していることから避妊対策やより安全な性交渉についての
 情報を入手しておくべきであり、可能ならばコンドームを準備するべきです。ジカウイルスへの感染が
 懸念される無防備な性交渉を行った女性、妊娠を希望していない女性も、緊急避妊のための支援や相談を
 容易に利用できる環境を備えておくべきです。
 妊娠中の女性のパートナーでジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域に住んでいるか又は、
 そこから戻ってきた人は、妊娠期間中は性交渉において、より安全な性行為を行うか性行為を控える
 必要があります。
 ほとんどのジカウイルス感染者は無症状です。そのため、以下の注意が必要です。
 ジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域に住んでいる男女は、より安全な性行為を行うか
 性行為を控える必要があります。
 ジカウイルスの感染伝播の発生が知られている地域から戻ってきた男女は、少なくとも帰宅後4週間は
 より安全な性行為を行うか性行為を控える必要があります。

 ジカウイルスに関する考慮とは別に、WHOは、HIVや他の性感染症への感染、また望まない妊娠を防ぐ
ために一貫して正しくコンドームを使うことを含めた、より安全な性行為の実践を進めています。
 WHOは、ジカウイルスを発見するためにルーチンで精液を検査することは推奨していません。
 WHOは、利用できる最新情報に基づいて、フランスや,その海外領土へのいかなる渡航や交易の旅行と
貿易の制限も推奨はしてはいません。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Microcephaly – France - Martinique
Disease Outbreak News
9 April 2016
http://www.who.int/csr/don/9-april-2016-microcephaly-france/en/