(No.78)

スウェーデンにおけるラッサ熱
2016年4月8日

 2016年4月1日、スウェーデンの国際保健規則(IHR)担当窓口は、世界保健機関(WHO)に対して、
ラッサ熱の輸入例を報告しました。

 患者は73歳女性。リベリアへの6週間の旅行の後、スウェーデンへ帰国していました。患者は、最初の
1週間をモンロビアで、次の1週間をYekebaで過ごした後、3週目に滞在したVoinjamaにおいて齧歯動物
との接触がありました。また、患者は残りの滞在期間をFoya Kamaraで過ごした後、3月2日に
スウェーデンへ帰国しました。3月8日頃、発熱、悪寒、関節痛、頭痛、下痢を発症し、3月17日に入院
しました。診察の結果、脳炎の徴候を認めました。

 4月1日、スウェーデンの公衆衛生当局は、血清学的検査、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、塩基配列決定
によりラッサ熱が陽性であることを確認しました。患者は入院中で徐々に回復傾向ですが、聴力が悪化して
います。二次感染を防止するために、患者は専門治療施設に転送され隔離病棟に入院しています。

公衆衛生上の取り組み
 医療関係者や患者家族に対する接触者調査は完了しており、計74人の接触者が観察下に置かれています。
最終の接触者と同定された人のフォローアップ期間(21日間)は、4月22日に終了する予定です。

WHOのリスク評価
 ラッサ熱の症例は、既に西アフリカからヨーロッパへ輸入されています。欧米諸国における最近の輸入例の
データによると、ラッサ熱の二次感染はあり得ますが、標準的な感染予防策を採る限り稀です。以上より、
スウェーデンにおける更なる感染伝播の危険性については除外できませんが、現在のところ可能性は低いと
考えられます。WHOは引き続き疫学状況をモニターし、最新の利用できる情報に基づいたリスク評価を
実行していきます。

WHOからのアドバイス
 ラッサ熱が風土病となっている西アフリカ諸国において、毎年今頃発生する季節的な再燃を考慮すると、
関連するサーベイランスシステムを強化することが強く奨励されます。

 ラッサ熱疑い患者あるいは確定患者を治療している医療従事者は、患者の血液や体液および衣服やベッド
などの汚染された表面との接触を避けるといった追加の感染管理対策に取り組む必要があります。医療
従事者は、ラッサ熱患者に対して密接に接触する場合(1m以内)は、フェイスシールドあるいは医療用
マスクとゴーグルといった顔面防護具、清潔で未滅菌の長袖ガウンおよび滅菌手袋を装着すべきです。
 
 検査室における労働者も同様に感染の危険があるため、ラッサ熱検査のために人や動物から採取された
検体は、最大限に生物学的な封じ込めが可能である適切な施設において、熟練したスタッフにより取り
扱われるべきです。

 ラッサ熱の診断は、風土病となっている地域から帰還した発熱患者において考慮すべきです。また、
ラッサ熱を疑う患者に対応した医療従事者は、すぐに地方および国の専門家に連絡を取り、検査を手配
すべきです。

 WHOは、入手可能な最新の情報に基づいて、スウェーデンやリベリアに対するいかなる旅行や貿易の
制限も推奨していません。

【出典】
WHO, Emergencies preparedness, response.
 Lassa Fever – Sweden
 8 April 2016
http://www.who.int/csr/don/8-april-2016-lassa-fever-sweden/en/