(No.80)

アンゴラにおける黄熱
2016年4月13日更新

 2016年3月21日、アンゴラの国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関(WHO)に対して黄熱(YF)の
アウトブレイクを報告しました。2015年12月5日に発生した最初の症例がルワンダ州のヴィアナ(Viana)
自治区で確認されました。

 2016年4月7日に、合計1,708人の疑い例(うち死亡例238人・致死率13.9%)が18州のうち16州から
報告されました。ルワンダは最も影響を受けた州で、1,135人(確定診断例405人、死亡例165人、致死率
14.5%)です。影響を受けた他の州はウアンボ州(疑い例266人、死亡例37 人), ウイラ州(疑い例95 人,
死亡例16人) 、ベンゲラ州 (疑い例51人,死亡例なし)です。 4月6日から7日までの間に、アンゴラ国内で
4人の死亡を含む30人の新規患者が報告されました。ルアンダ州では疑い例19人(死亡例2人)が報告され
ました。

 12州のうち59の地域で合計581人が検査により診断されました。ルアンダ州はアウトブレイクの発生地
であり、確定診断例405人(70%)にのぼります。確定診断例が多い他の州は、ウアンボ州(73 人)、
ウイラ州 (27 人)、ベンゲラ州(22 人) 、クアンザ・スル州(11人)です。4月6日から7日までの間に、30人の
新規患者が報告されました。 内訳はルアンダ州(19人)、ウアンボ州(4人)、クアンザ・スル州(2人)、
クネネ州(2人)、ベンゴ州(1人)、ルアンダ・ノルテ(1人) 、ウイジェ州(1人)です。ルアンダ州以外の確定
診断数は増加し続けています。他の州及び近隣諸国へ拡散する危険性が非常に高い状態が続いています。

 疾患の伝播はルアンダ州にとどまりません。2016年4月7日現在、国の最終診断分類委員会は他の5州
(ベンゲラ州、クアンザ・スル州、ウアンボ州、ウイラ州、ウイジェ州)と合計10の地域に伝播している
ことを確認しました。

 加えて、疾患の国家間での拡散が既に報告されています。黄熱の直近の輸入例として、中国、ケニア、
コンゴ民主共和国(DRC)が報告されています。(既報4月6日から11日)

公衆衛生上の取り組み
 アンゴラ政府による専門調査団がこのアウトブレイクに対応するため現在活動中です。3月29日緊急対策
フレームワーク(ERF)に基づき、WHOはこのアウトブレイクが3段階のうち「グレード2の非常事態」と
宣言しました。WHOと、国際連合児童基金(ユニセフ)や疾病管理予防センター(CDC)や国境なき医師団
(MSF)や世界の医療団といった関係機関は協力して対応の調整を続けています。
 このアウトブレイクについての管理者はWHOで任命され、高水準の技術支援をアンゴラに提供するために
WHOから65人の多岐にわたる専門家が派遣されました。

 4月3日から6日の間に、WHO事務局長はWHOアフリカ地域事務局長とWHOアフリカ地域事務局
(AFRO)の健康安全保障および緊急事態の担当はアンゴラを訪れ、進行中の対策について評価し高水準の
リーダーシップ支援を提供しました。代表団は保健大臣や他の政府関係者やアンゴラの大統領の閣僚と
面会しました。2016年5月15日までにアウトブレイクを終息させる必要があるとの決定がなされました。
 
 監視の強化のため調査は継続しています。この調査は、疫学的調査やデータの管理や早期発見、確立
された委員会での症例の最終的分類に従って症例が診断されることが含まれています。キューバ出身の
専門家が媒介蚊の管理専門家の訓練のために技術支援を行っています。
 2月2日にヴィエナ自治区で黄熱が発生したルアンダ州において、予防接種キャンペーンは12地区のうち
7州で終了し現在も残る5つの地区で進行中です。4月7日現在、ルアンダ州では合計5,892,901人(90%)が
ワクチンを接種しました。ウアンボ州の2つの地区とベンゲラ州の3つの地区で黄熱ワクチン接種キャン
ペーンのための準備が始まっています。4月7日、ワクチンの供給国際調整グループ(ICG)は190万本を
提供しました。社会啓発活動が強化されました。ルアンダ州の全ての地区のうち、脆弱な地域で特に焦点を
あてて、ラジオやテレビや他のメディアを利用して公衆の認識を上げワクチン接種を奨励しています。

 国連の中央緊急対応基金 (CERF) はワクチン購入を支持するために300万ドルの要請を承認しました。
加えて、ルアンダ州ですでに接種されたワクチン費用の50%を支払うため、アンゴラ政府は1500万USドル
を黄熱ワクチン購入のために用意しました。

 現在の挑戦は、アウトブレイクがアンゴラ国内で地域的に広がり近隣諸国に及ぶのを制御するために、
ワクチン接種を完全にすることが必要です。他の州での対応活動を改善するために、さらなる戦略的資金や
十分な媒介蚊の管理調査も必要です。
 近隣諸国で準備しておく綿密な追跡調査は、いかなる輸入症例も早期に探知しその管理を確実にすること
を要求します。

WHOのリスク評価
 アンゴラでの状況の悪化はアフリカ全地域で緊密に追跡する必要があります。中国やDRCやケニアでの
黄熱症例の輸入例は、このアウトブレイクが世界中に潜在的脅威になることを証明しています。アンゴラに
滞在する大きな国際的コミュニティや、近隣諸国や海を越えて頻回に渡航する旅行者が更にこの疾患を拡散
させるリスクがあります。さらには、媒介蚊(ネッタイシマカ)が存在するすべての国にリスクがあり、
デング熱やチクングニア熱やジカウイルスや他のアルボウイルスによるアウトブレイクで影響を受けること
は明らかです。したがって、アンゴラでの対策の質を強化して、近隣諸国や、アンゴラから国外離散した
人々のコミュニティがある国での準備活動の強化を緊急に行う必要があります。
 WHOは、利用できる最新の情報に基づいて疫学的な状況のモニターとリスク評価を継続しています。

WHOによるアドバイス
 WHOは加盟国のうち、特に媒介蚊が存在し地域内で感染サイクルが成立する可能性のある国や潜在的に
黄熱症例のサーベイランスがある国に対して、地域流行をしている国に渡航する旅行者へのワクチン接種の
強化を行うように促しています。
 アンゴラでの進行中の黄熱アウトブレイクの前後関係において、アンゴラや潜在的な風土病の地域から
帰国する旅行者に、特別な注意を払わなければなりません。
 旅行者、特にアフリカまたはラテンアメリカからアジアに到着する人々は、黄熱予防接種証明書を常に
携帯していなければなりません。
 予防接種を受けない医学根拠があるならば、適切な施設によって保証されなければならないとIHR(2005)は述べています。

 WHOは最新の有用な情報に基づいてアンゴラへの渡航や交易のいかなる制限も推奨はしていません。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Disease Outbreak News (DONs)
http://www.who.int/csr/don/13-april-2016-yellow-fever-angola/en/