(No.83)

セントルシアにおけるジカウイルス感染症
  2016年4月20日

 2016年3月26日、セントルシアの国際保健規則(IHR)担当窓口は、汎アメリカ保健機構/世界保健機関
(PAHO/WHO)に対して、ジカウイルスの現地感染患者2人を報告しました。

症例の詳細情報
1.25歳の男性です。同国のカストリーズ(Castries)地区 の住民で3月16日に発熱、関節痛、頭痛、腰痛、
 項部強直、リンパ節腫大を発症しています。血液検体が3月17日に採取されています。
2.28歳の妊娠女性です。同国のカストリーズ地区の住民で3月6日に発熱と胸部、手、手首、指、足底の
 発疹を発症しています。発症時には妊娠9週でした。血液検体が3月10日に採取されています。

 3月29日に検体はカリブ公衆衛生庁(CARPHA)に送付され、4月6日にリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応
(RT-PCR)により、ジカウイルス陽性が確認されました。両者とも最近の旅行歴はありません。
 
公衆衛生対策
 現在セントルシアの保健省は以下の様な公衆衛生対策を実施しています。
*以下の関連機関への相談の実施
  動物媒介疾患に関する非政府組織や公的私的部門
  ジカウイルスがもたらすであろう経済上健康上のインパクトを減じるための共同対策計画が必要な観光
 関連部門(観光局、観光省、セントルシアホテル観光協会)
*国民に対して自宅内や周辺においてあるいはコニュニティにおいて蚊の繁殖場所をなくすように促す
 ための啓発キャンペーンを実施すること
*公的あるいは私的部門の機関が共同して蚊の繁殖場所をなくし、蚊媒介性の疾患予防に関する情報を
 広めるためのクリーンアップキャンペーンを組織していくこと
*PAHOの援助の下でコミュニティレベルにある産前ケア施設への蚊帳の提供を行うことにより、
 ジカウイルスが新生児に与える健康問題のインパクトを減じるための産前健診の強化を行うこと
*医療従事者のトレーニングと起こりうる先天異常(例えばギランバレー症候群、小頭症)に対する
 治療施設の準備
*ジカウイルス、小頭症、ギランバレー症候群に対するサーベイランスを2箇所の主たる公立病院で
 強化する事
*一般的な媒介動物のコントロール対策の実施

WHOによる危険因子評価
 ジカウイルスの現地感染例が見つかったことはこれまでセントルシアのように汚染地域でなかった地域
にもウイルスが拡がっていることを示しています。新たな国で現地感染例の起こった事によって全体的な
危険因子評価に影響はありません。ジカウイルス感染を媒介し得る蚊(ヤブカ)の広範な地理的分布を
鑑みると、この媒介蚊が生息する地域へウイルスが地球規模に拡散するリスクは重大です。WHOは利用
しうる最新の情報に基づいて疫学的状況のモニターと危険因子の評価を継続していきます。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Zika virus infection – Saint Lucia
Disease Outbreak News
20 April 2016
http://www.who.int/csr/don/20-april-2016-zika-saint-lucia/en/