(No.97)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例
2016年5月3日更新

 2016年4月18日、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)は世界保健機関(WHO)に対し、死亡者
5人を含む新たに17人の鳥インフルエンザA(H7N9)ヒト感染確定例を報告しました。
 患者は2月21日から3月20日までの間に発症し、年齢分布は26歳から86歳で中央値は60歳です。これら
17人の感染者のうち、65%に相当する11人が男性です。感染者の大部分(88%に相当する15人)には、
生きた家禽や屠殺された家禽との接触歴か、生きた家禽を扱う市場への訪問歴の報告がありました。1人に
ついて、曝露歴が不明です。その他、1人については、以前WHOに報告があった2人の集団感染例(以下
参照)と繋がりがあります。

 患者は6つの省やその他の地方自治体から報告されています。その内訳は、安徽省4人、江蘇省4人、
福建省3人、広東省3人、浙江省2人、湖北省1人となっています。

 1つの感染者集団については既に報告されています。それには、浙江省在住の85歳の女性が含まれて
おり、3月1日に発症し3月8日に死亡しました。この患者は、ある感染確定患者と同じ病院に入院し、
2月22日から23日の間に同患者と病棟を共にしていました。この患者の親族によると、生きた家禽との接触
や家禽市場への訪問歴はないとのことです。

 この病棟を共にしていた感染確定患者は、浙江省在住の29歳の男性で、2月15日に発症しました。
この患者には、生きた家禽を扱う市場への訪問歴があり、同時に確認された感染確定患者との間に家庭内
接触がありました。福建省における接触者は、2月4日に発症しましたが、生きた家禽を扱う市場への訪問歴
がありました。

 29歳の男性と85歳の女性の間におけるヒト-ヒト感染は除外することができません。更なるウイルス学的
情報が待たれます。

公衆衛生上の取り組み
 中国政府は以下のサーベイランスと感染制御対策をとっています。

• アウトブレイクに対するサーベイランスと状況分析の強化
• 治療のためのあらゆる取り組みに対して補強を行うこと
• 住民に対してリスクコミュニケーションと情報の周知を実施すること

WHOのリスク評価
 ほとんどのヒト感染例は、生きた家禽を扱う市場への訪問を含め、感染した家禽あるいはウイルスに汚染
された環境との接触を通して、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに曝露されています。このウイルスは、動物や環境中において検出され続けているため、今後もヒト感染例が報告されることが予想されます。
医療従事者の感染者を含めた、鳥インフルエンザA(H7N9)の小さなヒト感染者集団の報告はあります
が、現在の疫学的及びウイルス学的な証拠からは、このウイルスがヒトの間で持続的に感染伝播を起こす
能力は獲得していないことが示唆されています。そのため、地域レベルで更に感染が拡大する可能性は低い
と考えられています。

 この鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスのヒト感染は稀ですが、公衆衛生的に極めて深刻な影響を
与える可能性があるので、このウイルスの変化および(または)ヒトへの感染様式の変化を発見するため、
厳密に監視することが必要です。

WHOからのアドバイス
 WHOは、鳥インフルエンザのアウトブレイクが知られている国への渡航者に対し、養鶏場への立ち入り、
生鳥市場での動物との接触、及び家禽が屠殺される可能性のある地域への立ち入りを避ける他、家禽や
その他の動物の排泄物で汚染されているように見えるいかなる地面との接触をも避けることを勧めています。
渡航者は石鹸と水で手をよく洗い、安全な食べ物を衛生的に摂取することを勧めています。

 WHOは、この事象に関連して、入国地点における特別なスクリーニング及び渡航や貿易のいかなる制限
をも行うことを推奨しません。これまでと同じように、鳥インフルエンザ感染の診断は、鳥インフルエンザ
が懸念される地域を渡航中あるいは同所からの帰国後すぐの時期に、重篤な急性呼吸器症状を発症した人に
おいて考えておくべきです。

 WHOは加盟国に対して、国際保健規則(2005)に準じてヒト感染を確実に報告するために、重篤な急性
呼吸器感染症(SARI)のサーベイランスを含めた、インフルエンザのサーベイランスを継続して強化し、
いかなる異常な事象に対しても継続して注意深く調査し、国家レベルでの健康対策を継続することを
推奨しています。

【出典】
 Emergencies preparedness, response
 Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China
 Disease outbreak news
 3 May 2016
 http://www.who.int/csr/don/3-may-2016-ah7n9-china/en/