(No.3)

マダガスカルにおけるペストの流行
2017年1月9日更新

 12月6日、マダガスカルの保健省(MoH)は世界保健機関(WHO)に対し、同国南東部Atsimo Atsinanana県のBefotaka郡でペスト流行の疑いについて報告しました。同県はマダガスカルのペスト
流行地域として知られている場所から離れています。同地域におけるペスト流行は1950年以来報告がありませんでした。
 12月27日時点、26人の死亡例(死亡率42%)を含む62人の患者(うち6人は確定例、5人は可能性例、51人は疑い例)が同国の2つの近隣県の2つの近隣郡から報告されています。10人の死亡例を含む28人の
患者が同県の同郡から、16人の死亡例を含む34人の患者がIhorombe県Iakora郡から報告されています。
 11検体を検査したところ5検体が迅速検査においてペスト陽性であり、6検体がパスツール研究所において現在確定診断されています。報告された患者のうち、5人が肺ペストで、残りが腺ペストでした。
 これら2つの郡において後ろ向き研究が行われ、2016年8月中旬から流行が始まった可能性があることが
判明しました。近隣の村においてまだ調査中です。12月29日Befotaka 郡の最初の流行地域の25km圏内に
おいて行われた調査では3人の死亡が報告されており、流行へつながる可能性についてさらなる調査が現在
行われています。
 各流行地域は非常に離れており、到達が困難であり、非常に危険な地域(強盗のあるレッドゾーンに分類
されています)です。地元当局との取り決めにも関わらず、危険性により調査や対応が遅れています。さらにヘリコプターの使用が可能となりましたが、悪天候や財政困難により使用が制限されています。

公衆衛生上の取り組み
 12月6日にMoH、パスツール研究所から公衆衛生専門家、疫学者、昆虫学者および検査専門家を含む15人の多分野における専門チームが疫学調査や対応のため流行地域を訪れました。
すでに実施されている対応活動は以下の通りです。
・現在発症している症例の発見や迅速診断テストを含む疫学調査
・コミュニティ密着型のサーベイランスや症例の早期発見を行うためコミュニティ・ヘルス・ワーカーの教育
・疑い例の臨床管理
・接触者の同定、経過観察、予防投薬
・Kartman箱(捕獲器具)を使用して媒介動物や宿主の制御
・住民の啓発
・コミュニティ密着型のサーベイランスの強化
・マラリアなどの他の診断された疾患の無償治療
・近隣地区における早期発見の強化
・検査室における確定検査

WHOのリスク評価
 現在利用できる情報からは僻地における発生のため、国外への流行の拡大の可能性は低いです。しかし
流行地への到達が困難で迅速な調査ができないため、現段階における実際の発生規模はまだ判明しておらず、
同地域においてさらなる拡大のリスクや持続的な伝播を正式に鑑別することはできません。WHOは現在行っている調査と対応活動を支援し続けています。

WHOからのアドバイス
 長期的なサーベイランスや制御方法を適応するため、1950年以来ペストの症例報告が全くなかった地域においてペストが流行したことを理解するにはさらなる生態学調査が必要です。
この流行により医療サービスへのアクセスが遠く不十分である農村地域にすでに影響が出ています。マダガスカルのパスツール研究所が支援し、MoHの職員全員が制御方法の経験を積んでいます。しかし現地の状況によっては実施が困難になる場合もあります。
流行地の遠隔性と同疾患に感染するための条件から、現在の流行は渡航者には重大なリスクにはなり得ないでしょう。