(No.9)

チャドにおけるE型肝炎の流行状況
2017年1月24日更新

 2016年9月1日から2017年1月13日までの間にチャドのアム・ティマンにおいて急性黄疸症候群(AJS)の患者693人が発生し、うち11人が死亡したと報告されています。
 患者50人がAJSにより入院し、48人がE型肝炎ウイルス迅速診断検査(HEV RDT)を受け27人(56.3%)がE型肝炎陽性でした。2017年第2週の終わりまでに合計126人においてHEV RDTを行い、57人(45.2%)
においてE型肝炎陽性、69人(54.8%)においてE型肝炎陰性でした。HEV RDT陽性であった57人中18人
(31.6%)がマラリア検査においても陽性であり、HEV RDT陰性であった69人中20人(29%)もまたマラリア検査において陽性でした。2016年9月以来、入院患者のうち11人が死亡したと報告されていますが、
死亡者数が過少評価されている可能性があります。
 2017年1月13日の時点で妊婦16人がAJSにより入院しており、HEV RDTを使用した検査の結果12人(75%)がE型肝炎陽性でした。AJSに罹患している妊婦のうち4人が死亡したと報告されており、3人がE型肝炎陽性でした。
 AJSの報告のうち約90%が現在流行の中心であるアム・ティマンからの報告例であり、ほとんどの患者が
積極的な症例探索を通じて同定されました。2017年1月13日の時点でAJS患者がアム・ティマン内と周囲の59地域から報告されています。

公衆衛生上の取り組み
 現在発生している流行や出来事に対し、世界保健機関(WHO)や保健省は流行の程度を説明するために全地域において調査を実施しています。またWHOのチャド事務所はアム・ティマン以外の地域における受動的かつ積極的なサーベイランスの強化を支援し、症例定義やサーベイランスツール、簡単な症例管理の実施
要領、検査手順を啓発し、症例の入院基準を定め、アム・ティマン内外の地域における必要度の評価を実施
しています。WHOはアム・ティマンの水道設備や衛生設備の必要性に関し、積極的にパートナーシップを探しています。

WHOのリスク評価
 現在利用できる情報によると、1週間に平均70人の患者が報告され、わずかな割合(7.2%)だけが入院を必要とする流行地域から過去5週間に報告された患者数は横ばいのようです。感染リスク地域はアム・ティマンとその周辺地域に限られているようです。しかしこの流行はWHOの全てのレベルにおいて厳格に監視し続けています。現在の流行の拡大レベルは中から高程度であり、日々に対応する限られた能力の中で特に水道や衛生、社会的動員の観点から直接的な支援を必要としています。

WHOからのアドバイス
 WHOは流行の時間、場所、ヒトの特徴を評価し、感染源を同定するために特定の症例定義を用いて調査の継続を推奨しています。地表水の汚染源を特定することと、特定できるまで水を使用する際は塩素処理された安全な水を確保することが重要です。チャドへの渡航者は水と食品に関する標準的な衛生に関する推奨に従うべきです。E型肝炎はヒト-ヒト感染の危険性が非常に低いため、水や食品を同疾患から守ることが大切です。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Hepatitis E – Chad
Disease outbreak news
24 January 2017
http://www.who.int/csr/don/24-january-2017-hepatitis-e-chad/en/