(No.14)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例
2017年2月20日更新

 2017年1月19日から2月14日の間に、中国の国際保健規則(IHR)担当窓口は世界保健機関(WHO)に対し、新たに総計304人の鳥インフルエンザA(H7N9)の検査によるヒト感染確定例を報告しました。
 2017年1月19日、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)はWHOに対し、新たに111人の鳥インフル
エンザA(H7N9)の検査によるヒト感染確定例を報告しました。1月24日、NHFPCはWHOに対し、新たに
31人の鳥インフルエンザA(H7N9)の検査によるヒト感染確定例を報告しました。1月30日、NHFPCはWHOに対し、新たに41人の鳥インフルエンザA(H7N9)の検査によるヒト感染確定例を報告しました。2月7日、NHFPCはWHOに対し、新たに52人の鳥インフルエンザA(H7N9)の検査によるヒト感染確定例を報告しました。2月14日、NHFPCはWHOに対し、新たに69人の鳥インフルエンザA(H7N9)の検査によるヒト感染確定例を報告しました。

症例の詳細情報
 2017年1月19日から2月14日の間に、NHFPCは新たに総計304人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例を報告しました。発症日時は、2016年12月13日から2017年2月9日の範囲です。これら304人の感染例のうち、86人(28%)が女性です。年齢は3歳から85歳の範囲で、中央値は58歳です。感染例が報告されている地域と感染者数は以下のとおりです;江蘇省(67)、浙江省(53)、広東省(32)、安徽省(31)、江西省(27)、湖南省(26)、福建省(20)、湖北省(20)、四川省(6)、貴州省(4)、河南省(4)、山東省(4)、上海(3)、遼寧省(2)、雲南省(2)、北京(1)、河北省(1)、広西チワン族自治区(1)。
 報告時点で、36人が死亡、2人が軽い症状、82人が肺炎か重症肺炎と診断されました。その他の184人の
臨床症状は現時点では不明です。144人において家禽か生鳥市場への曝露歴がありますが、11人には家禽やそれに関連した環境への明らかな曝露歴はありません。149人が現在調査中となっています。

 感染例2人による2つの集団感染が報告されています。

1.雲南省から報告された22歳の女性(2017年1月29日に発症し2月7日に死亡した3歳の女児の母親)。
この患者は、2017年2月4日に発症しましたが、女児の病中看病していました。患者、女児ともに、江西省における家禽への曝露が報告されています。
2.以前1月9日に報告された、広東省四会市在住の45歳女性。2016年12月17日に発症し、同24日に死亡しました。この患者は家禽への曝露がありました。もう1人は、広州市在住の43歳女性で、2016年12月30日に発症し、同日入院しました。この患者は、前記の45歳の女性患者の姉妹にあたり、その看病をしていましたが、同時に家禽への曝露歴もありました。報告時点では、肺炎を発症しています。
各感染例において、家禽への一般的な曝露をよく認める一方で、ヒト-ヒト感染は除外できておりません。
 2013年初頭以降、IHRを通して、鳥インフルエンザA(H7N9)の確定診断患者が合計1,222人報告されています。

公衆衛生上の取り組み
 2016年12月以来の鳥インフルエンザA(H7N9)ヒト感染例の増加を受けて、中国政府は次のような強化策をとっています。
・早期診断および早期治療、すなわち重症例や死亡の発生を減らすための重症化に対する治療、を強化しま
 した。
・さらなる予防と対策手段を展開するための会合を開催しました。
・一般住民に対して、リスクコミュニケーションの実行と情報の共有を行いました。
・NHFPCが、疫学的サーベイランスを強化し、適時にリスク分析を行い、疫学的ないかなる変化に対しても
 情報を分析しました。
・NHFPCが地方の下部組織に対して、アウトブレイクの感染源に対する効果的な対策手段を実行し、感染者
 数を最小限にとどめるように要請しました。
・NHFPCが、農業省、商工省、食品医薬品局などの他部署とともに、より感染者の発生が多かった江蘇省、
 浙江省、安徽省、広東省を再訪問し、共同して指導下におきました。また、流行のあった省において、地域
 のサーベイランス、医療対応、予防、および生鳥市場の管理に焦点を絞った対策の促進、などに関する、
 多分野にわたる、指導、調査およびガイダンスを強化しました。
・江蘇省の関連県において、2016年12月下旬に生鳥市場を閉鎖し、浙江省、広東省、安徽省において、生鳥
 市場への規制を強化しました。
                               
WHOのリスク評価
 鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例の突然の増加は、昨年にも同様に認めていますが、今季の感染者報告数は前年を上回っています。2016年10月1日からはじまるヒト感染例の合計は、2013年以来の全報告数の3分の1近くを占めるに至っています。
 しかしながら、鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染は、通常では起こり得ない状況のままです。疫学的状況の緊密な観察や、最近のヒトウイルスの特徴を更に明らかにすることは、関連する危険性を分析し適時に危機管理手段を適応させていくために大変重要です。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China
Disease outbreak news
20 February 2017
http://www.who.int/csr/don/20-february-2017-ah7n9-china/en/