(No.18)

ブラジルにおける黄熱
2017年2月24日更新

 2016年12月1日から2017年2月22日の間に、6つの州(バイーア、エスピリトサント、ミナスジェライス、 リオグランデドノルテ、 サンパウロ、トカンティス)から1336人(診断確定例292人、疑い例920人、除外例124人)の黄熱患者が報告され、うち死亡者は215人(診断確定例101人、疑い例109人、除外例5人)でした。死亡率は診断確定例で35%、疑い例で12%となっています。現時点で診断確定例の大半(86%)は男性であり、その81%は21歳~60歳となっています。
 同期間にヒト以外の霊長類での感染報告は883例となっており、その内337例は検査あるいは疫学的な繋がりにより、黄熱の診断が確定しています。これらの感染報告は連邦直轄区、アラゴアス、バイーア、ゴイアス、エスピリトサント、マッドグロッソドスーウ、ミナスジェライス、パラナ、ペルナンブコ、リオグランデドノルテ、リオグランデトスーウ、サンタカタリーナ、サンパウロ、トカンティンスの各州から出されています。
 ブラジル及びその他のアメリカ大陸における各国の黄熱の発生状況に関する情報は汎アメリカ保健機構(PAHO)/世界保健機関(WHO)から出される週報から入手可能です。
http://www.paho.org/hq/index.php?option=com_content&view=article&id=1239&Itemid=2291&lang=en、 PAHA yellow fever updates)

公衆衛生上の取り組み
 ブラジル保健当局は,連邦、州および市レベルでアウトブレイク対策として次の対策を取っています。
・保健省はヒト、媒介蚊、動物間感染に関するサーベイランスに関して、州及び県の保健担当に対する支援
 を行い、医療サービス、リスクコミュニケーションの強化を実施しています。
・環境衛生や殺虫剤の空中散布を含んだ媒介蚊に対する対策をネッタイシマカの拡がりを評価する調査と
 ともに実施しています。
・リオデジャネイロにあるエバンドロシャーガス研究所、パラー州ベレンのオズワルドクルズ財団を含む政府
 指定の研究所ではヒト及びその他の霊長類における症例と昆虫学的な調査に関するフィールド活動を支援
 しています。
・各戸訪問及び固定場所での予防接種キャンペーンをリスクのある地方自治体で実施しています。
・保健省によってミナスジェライス州に550万回分、エスピリトサント州に250万回分、サンパウロ州に275
 万回分、バイーア州に90万回分、リオデジャネイロ州に85万回分,全体として1250万回分の黄熱ワクチン
 が配給されました。

 ブラジル保健当局による対策の支援としてPAHOはWHO本部と共同で活動する専門の対策機関をたちあげています。更にPAHO本部とブラジルにおける支局は対策のコーディネート、疫学調査、データ収集、情報管理を支援する為に専門家を配置しています。

WHOによるリスク評価
 患者数が増加しつつあること、新たな州で黄熱の循環が見られること、以前には黄熱が人にもたらされる
リスクがあるとは考えられていなかった地域において動物間感染を起こしている事実は、アウトブレイクの
地理的な範囲が拡大している事を示しています。ブラジル保健当局は集団ワクチン接種キャンペーンを含む
一連の早急な公衆衛生対策を実行に移していますが感染した人の多くが遠隔地に分散して存在するためにリスクの高いいくつかの地域ではこれらの対策が有効となるにはもうしばらくの時間が必要です。そのため短期的にはさらに患者数は増え続けると予測されます。

 現段階で人の黄熱が診断確定された3州では、ネッタイシマカの感染伝播への関与を示す証拠はありませんが、これら3州の都市部における昆虫学的な指標からするとネッタイシマカによる感染伝播が持続的に起こる可能性は高く,その事は2016年末にみられたジカウイルス、チクングニア熱、デング熱のアウトブレイクを見ても明らかです。

 アルゼンチン、パラグアイ、ボリビアと接している州の非都市部では動物間の感染疑いが報告されており、黄熱が伝播しやすい条件があり、ワクチン接種率が十分でないことから、これらの国々の1つあるいはそれ以上に拡大するのではないかが重大な懸念となっています。これらの国にウイルスがもたらされればより大きな流行につながる引き金となる可能性があります。

 現在展開中の状況から見て、旅行者が次の2-3週の内にカーニバルに訪れ、主要都市以外にも附属した旅行をすることを考慮すると、ブラジル内での更なる拡大が起こる可能性も除外はできません。同様に国際間の
拡大も除外はできませんがその可能性は非常に低く、流行地域からワクチン未接種の旅行者が帰国したような場合に限定されます。ウイルス血症をおこしている旅行者が帰国すれば、候補となる媒介蚊が存在するような地域において黄熱の地域内流行サイクルが形成されるリスクがあります。

WHOからのアドバイス
 ブラジルにおける黄熱感染の危険性がある地域への渡航を計画している旅行者への勧告として、次のものがあります;渡航の最低10日前に黄熱ワクチンを接種すること;蚊刺を回避する方法に従い、黄熱の症状や
徴候に注意し、黄熱感染の危険性がある地域(特に黄熱感染を成立し得る媒介生物が存在する国)への渡航中や帰還時において医療機関への受診行動を促進すること。
 IHR(2005)の附則 7に記されているとおり、黄熱ワクチンの単回投与のみで、黄熱に対する持続的な
免疫と修正防御を授与するのに十分です。黄熱ワクチンのブースター投与は必要ありません。もし医学的な
理由により黄熱ワクチン接種が不可能である場合、IHR(2005)の附則 6と7に従い、その事実を関連官庁に証明してもらう必要があります。
 WHO事務局は、今回の事象に関して現在利用できる情報を踏まえ、ブラジルへの渡航や貿易の制限を推奨しません。

【出典】
http://www.who.int/csr/don/24-february-2017-yellow-fever-brazil/en/
Emergencies preparedness, response
Yellow fever – Brazil
Disease outbreak news
24 February 2017