(No.24)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例
2017年3月15日更新

 2017年2月24日から3月7日の間に、中国および香港特別行政区(SAR)から世界保健機関(WHO)に
対して、新たに合計58人のヒト感染例が検査で確認されたことが報告されました。
 2017年2月24日、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)はWHOに対して、新たに35人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例が検査により確認されたことを報告しました。2017年3月3日、NHFPCはWHOに対して、新たに22人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例が検査により確認されたことを報告しました。2017年3月7日、香港SARの保健局は、新たに1人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例を確認しました。

症例の詳細情報
 2017年2月24日から3月7日の間に、NHFPCは合計57人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例を報告しました。発症日時は、2017年1月26日から2月27日の範囲です。この57人の感染例のうち、13人が女性でした。年齢は4歳から81歳で、中央値は56歳でした。症例は次の地域から報告されています;安徽省(9人)、北京(1人)、福建省(1人)、広東省(11人)、広西省(4人)、貴州省(2人)、河南省(3人)、湖南省(3人)、湖北省(2人)、江蘇省(7人)、江西省(4人)、山東省(2人)、上海(1人)、四川省(2人)、浙江省(5人)。
 報告時点で、11人が死亡し、39人が肺炎か重症肺炎のいずれかの診断を受けています。1人は軽い症状です。その他6人の臨床症状が現時点では不明です。43人が家禽か生鳥市場への暴露歴があり、4人がヒト-ヒト感染(これらのうち2人が家禽か生鳥市場への暴露歴があります)であることが報告されており、4人が家禽への暴露歴がなく、8人について暴露の可能性は不明で調査中となっています。
 2017年2月24日、ヒト-ヒト感染の可能性のある、2つの集団感染事例が報告されています。

1つめの集団感染事例
・40歳の男性。江蘇省在住で、下記の63歳女性の親族です。2017年1月26日に発症し、入院しました。
 2017年1月24日に生きた鶏の購入歴があります。
・63歳の女性。江蘇省在住で、2017年2月10日に発症し、肺炎で入院しました。家内で飼育している家禽
 (本業は農家です)との接触歴があり、その息子とも接触していました。
 この2人の患者との接触者は21人おり、全員が健康でいかなる症状も呈しておりません。

2つめの集団感染事例
・29歳の男性。安徽省在住で、2017年2月3日に発症し、重症肺炎で入院しました。発症前に生きた家禽
 への暴露歴があります。
・62歳の女性。安徽省在住で、上記の29歳男性と同じ病院に慢性咳嗽で入院し、1日間、同じ病棟に滞在
 しました。初めは症状が改善したものの、状態が悪化し2017年2月16日に死亡しました。
・58歳の男性。安徽省在住で、上記の29歳男性の父親です。2017年2月17日に発症し入院しました。
 2017年1月31日に生きた家禽への暴露歴がありますが、同時に息子の看護にも当たっていました。
この3人の患者との接触者は32人おり、全員が健康でいかなる症状も呈しておりません。

2017年3月3日、ヒト-ヒト感染の可能性のある、1つの事例が報告されています。
・60歳の男性。安徽省在住で、下記の10歳男児の祖父です。2017年2月24日に発症し、2月25日に入院、
 3月1日に死亡しました。生きた家禽への暴露歴があります。
・10歳の男児。安徽省在住で、2017年2月27日に発症し、3月1日に肺炎で入院しました。上記男性と同様
 に、生きた家禽への暴露歴があります。

 2017年3月7日、香港SARの保健局は、基礎疾患のある76歳男性への鳥インフルエンザA(H7N9)感染を
確認しました。この患者は、2017年2月11日から3月1日にかけて福建省福州市への渡航歴があり、生鳥市場を訪問していました。
 2017年3月3日に発症し、3月7日に鼻咽頭からの吸引検体において鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスが検査で陽性であることが判明しました。この患者の臨床診断は肺炎であり、現在も危篤状態です。これまでのところ、この患者の濃厚接触者は無症状のままであり、医学的な監視下に置かれています。香港SARにおけるこの患者のその他の接触者に対する追跡調査が継続して行われています。
 2013年初頭以降、国際保健規則(IHR)を通して、鳥インフルエンザA(H7N9)の確定診断患者が合計1,281人報告されています。

公衆衛生上の取り組み
 2016年12月以来の鳥インフルエンザA(H7N9)ヒト感染例の増加を考慮し、中国政府は次のような強化策を講じています。
・NHFPCが、疫学的サーベイランスを強化し、適時にリスク分析を行い、疫学的ないかなる変化に対しても
 情報を分析しました。
・NHFPCが地方の下部組織に対して、アウトブレイクの感染源に対する効果的な対策手段を実行し、感染者
 数を最小限にとどめるように要請しました。
・早期診断および早期治療、すなわち重症例や死亡の発生を減らすための重症化に対する治療、を強化しま
 した。
・医学的対応をさらに強化しました。
・NHFPCと農業省、商工省との合同調査チームが、地域のサーベイランス、医療対応、予防、対策に関して
 合同で監督、監視、ガイダンスを行うために、より多くの感染例が発生している江蘇省、浙江省、安徽省、
 広東省を訪問し、生鳥市場と地域間輸送に焦点を絞った対策手段の促進を図る予定です。
・2016年12月下旬に、江蘇省の関連県において生鳥市場を閉鎖し、浙江省、広東省、安徽省において生鳥
 市場に対する規制を強化しました。
・一般住民に対して、リスクコミュニケーションの実行と情報の共有を行いました。

香港SAR保健局の衞生防護センターは、次の対策をとっています。
 住民に対して、同地域内に滞在中および他地域に渡航中において、個人衛生、食品衛生および環境衛生を厳密に維持することを強く要請しました。
 医師、病院、学校およびその他の公共施設に対して、最新の状況に関する警告を発出しました。

WHOのリスク評価
 2016年10月1日以来に発症したヒト感染例の総数は、流行早期の急増と比較しても多くなっています。
 鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染は、通常では起こり得ない状況のままです。疫学的状況の緊密な
観察や、最近のヒトウイルスの特徴を更に明らかにすることは、関連する危険性を分析し適時に危機管理手段を適応させていくために大変重要です。
 ほとんどのヒト感染例は、生鳥市場への暴露を含む、感染した家禽あるいは汚染された環境をとおして、
鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスに暴露されています。ウイルスは引き続き動物や環境から検出されており、生きた家禽の販売が引き続き行われていることから、更なるヒト感染例の発生が予測されます。同じ病棟の患者間などの上記事例を含む、鳥インフルエンザA(H7N9)のヒトにおける小規模な集団感染事例が報告
されていますが、現在の疫学的およびウイルス学的な証拠より、このウイルスはヒトの間で持続的に感染伝播する能力を獲得していないことが示されています。そのため、コミュニティレベルにおける更なる感染拡散の可能性は低いと考えられます。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China
Disease outbreak news
15 March 2017
http://www.who.int/csr/don/15-march-2017-ah7n9-china/en/