(No.40)

リベリアにおける原因不明の集団死亡症例  
5月9日更新

 4月25日、リベリアの保健省は世界保健機関(WHO)とパートナーに対してシノエ郡の原因不明の集団突然死亡症例について報告しました。今回の事例は、22日に行われた宗教上の指導者の葬儀に出席した11歳の子供が、23日に下痢、嘔吐、精神錯乱状態で病院に入院し、入院後1時間で死亡したことから始まりました。
 5月4日時点で、死亡者12人(死亡率43%)を含む患者28人が報告されています。うち10人の死亡者を含む26人はシノエ郡からで、全員が葬儀参列者です。モントセラド郡の首都モンロビアから報告されている他の2人も重篤な状態です。モンロビアでの最初の患者はシノエ郡での葬儀に出席し、27日に発熱、頭痛、嘔吐が出現し、モンロビアの病院で死亡しています。葬儀に参列していない患者のパートナーも29日に発病し、同日に死亡しています。継続的に調査を実施しています。
 現在までに21検体の検査が実施されていますが、エボラ出血熱(EVD)とラッサ熱は陰性でした。患者(例えば血液、尿、直腸スワブなど)や食品を含む環境からの検体はさらなる分析や検査が行われます。

公衆衛生上の取り組み
 シノエ郡の保健チームはWHO、ユニセフ(UNICEF)、アメリカ疾病予防センター(CDC)、Africa Field Epidemiology Network(AFENET)、その他のパートナーと協力して対応の調整を行っています。緊急時対応チーム(RRT)と事故管理システムが事態の調整のために立ち上げられました。
 シノエ郡で発症した患者は同郡の首都であるグリーンビルにある病院で管理されています。最初の調査としてRRTによって流行地域周辺のコミュニティーや葬儀参列者の間で、積極的に患者捜索が実施されました。モントセラド郡では、22日にグリーンビルで行われた葬儀に出席した42人に対して綿密な監視を行っています。さらに、モントセラド郡で死亡した2人の濃厚接触者についても厳重に監視しています。
 リベリアの国立公衆衛生研究所のThe National Epidemic Preparedness and Response Committeeも支援活動を行っており、技術支援のために集学的国家チームが配置されました。
患者と接触者の一覧表作成とそのフォローアップ、積極的な患者捜索と毒物検査のための食品や飲料サンプルの収集を通じてサーベイランスの強化を図っています。葬儀参列者とその接触者はリストアップされて既にフォローアップされています。
 研究室における分析検査を強化しています。流行地域を供給している水の水質検査が行われ、細菌汚染は除外されています。重金属および化学物質の検査が進行中です。リベリア政府はWHO、CDC、MSFに対して国外での毒物検査の協力を要請しています。追加の検査のためにサンプルが他の研究所に送られました。
UNICEFの協力のもと、市民の意識向上、地元指導者の動員、コミュニティーメンバーの監視を通じてコミュニティーの関与が強化されました。手指衛生慣行の再認識や水質検査、安全な埋葬といった感染対策や防除対策が実施されています。

WHOによるリスク評価
 現段階で、感染が拡大する危険性は全体的に低いと考えられます。葬儀参列者の間で流行が拡大、さらに4月25日以降に報告された患者及び死亡者数は急激に減少しています。この調査結果は曝露源を示しています。毒物検査が仮説に役立つと予測し、積極的に食品/飲料/水質汚染の可能性が調査されています。疾患と関連する曝露源の特定のために症例対照研究を行っています。
 今回の流行に対して効率的かつ適時にとられた対応は、リベリアにおける2014年の大規模なEVD流行に続く専門的な技術の発展の結果です。EVDの検査とその除外を行い、接触者の特定とそのフォローアップ、人と環境試料の検査のために国とパートナーが協力を続けることが、迅速な病気の原因特定につながりました。

WHOからのアドバイス
 流行地域における衛生強化や食品安全対策と同様に、患者と葬儀参列者の綿密なフォローアップを推奨しています。さらにWHOは疫学調査やさらなる規制措置を導くために流行の原因を特定するための研究室調査を継続的に支援しています。
WHOは現在入手できる情報に基づいて、リベリアへのいかなる渡航や交易の制限も推奨していません。