(No.41)

ニジェールにおけるE型肝炎の流行状況
5月9日更新

 2017年4月12日ニジェールの保健省は世界保健機関(WHO)に対し、同国西部のディファ州におけるE型肝炎(HEV)の流行状況について報告しました。この流行については4月19日に同国の保健大臣が正式に宣言しています。
 1月9日以来、ディファ母子病院の妊娠中の女性において黄疸患者が増加しています。症状として頭痛、嘔吐、発熱、結膜炎、骨盤痛や記憶障害を訴えていました。
 当初、この流行が黄熱によるものと疑われましたが、ディファ州の母子センターの妊婦における患者数と近隣のチャドで発生したHEVの患者数を考慮すると、兆候や症状の潜在的な原因としてHEVも考えられました。検体がダカールのパスツール研究所に送られ検査されました。現在までに29検体が収集され、PCR検査により全ての検体において黄熱が否定され、うち15検体がE型肝炎陽性でした。
 5月3日時点で282人の疑い例、うち27人が死亡したと報告されています。1人の死亡例を除き、報告された患者全員が妊婦でした(致死率9.6%)。現在までにディファ州の6県のうち5県において報告されており、188人がディファ県とンギグミ県(N’Guigmi)から報告されています。ディファ州はチャド湖消滅危機の被害を受けている地域であり、そのため国境を越えた人の移動が頻繁になっている地域です。

公衆衛生上の取り組み
 4月6日保健省は疑いのある流行状況を再確認し、よりよく理解するために緊急会議を行いました。この流行の対応として以下の活動を開始しました。
・ 緊急時対応計画を実施し、流行に対する活動を調整するために毎週、調整会議が行われています。
・ 生体試料を採取する間にディファ州において流行に対する予備調査が行われました。「One Health」ア
  プローチに従い、徹底した調査の準備が行われています。
・ WHOと国境なき医師団の支援を中心に患者に無料で症例管理が実施されています。
・ 報告の必要な疾患リストの中にE型肝炎を含めることでE型肝炎のサーベイランスを強化しました。
・ 特に妊婦の間で「早期発見、早期治療」を促進するために地域社会の関与が強化されています。
・ 定期的な情報の共有を通じて近隣諸国による国境を越えた連携も強化されています。
・ 必要な資源を導入するために包括的な流行対応計画が準備され、実施されています。

WHOのリスク評価
 難民内でも患者が報告されており、チャド湖流域の国々に差し迫っており、特にナイジェリア、チャド、カメルーン北部などの近隣諸国においても排除できていません。さらにニジェールにおける流行の発生源と規模を立証する必要があります。
 これはニジェールで初めて確認されたE型肝炎の流行です。この流行は脆弱な人々が不安定により立ち退いた後の危険な状況下にある地域で起こったことについて注意するのが重要です。現在ディファ州が主な流行地域です。
 流行の規模をよりよく理解するために地域の様々な保健センターやコミュニティレベルで積極的な症例発見が行われています。水や衛生設備、衛生学(WASH)の介入の強化によりウイルスの伝播の遮断や新たな症例の発生予防を支援します。E型肝炎流行における管理の経験を情報交換できるよう国境を越えた連絡を行い続けることが重要です。

WHOからのアドバイス
 WHOはこの流行の規模と感染源を確認するために現在のHEVの流行を詳細に調査することを強く推奨しています。WHOは疫学的状況の監視を継続し、新たな情報を入手次第、リスクアセスメントを実施する予定です。WHOは現在の入手可能な情報に基づき、ニジェールに対し渡航や貿易の制限を行うことを推奨していません。