(No.46)

インドにおけるジカウイルス感染症
5月30日更新

 インド政府の保健・家族福祉省(MoHFW)は2017年5月15日にグジャラ-ト州ア-メダバードのバプナガー地区における3例の検査室で確認されたジカウイルス感染症を世界保健機関(WHO)に報告しました。
 定期的に行っている検査室サーベイランスによりグジャラ-ト州ア-メダバードのB.J.医科大学(BJMC)において逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法を通じてジカウイルス感染症が1例検出されました。この症例の病原体は2017年1月4日にプネ-の国立ウイルス学研究所においてRT-PCR法の陽性とウイルスの遺伝子配列解析により確認されました(以下の症例2)。他の2例(症例1と3)は、急性熱性疾患(AFI)と産前クリニック(ANC)のサーベイランスにより同定されました。これらの症例を時系列で以下に報告します。

・ 症例1: 2016年2月10日から16日の間のAFIサーベイランスにより全部で93の血液検体がグジャラ-ト州
 ア-メダバードのBJMCに集められました。8日間の有熱期間を示した64歳の男性の1検体(デングウイル
 スは陰性)からジカウイルスが陽性であることが判明しました。これはAFIサーベイランスを通じてグジャ
 ラ-ト州ア-メダバードのBJMCにおいて報告された最初の症例になります。
・ 症例2: 34際の女性が2016年11月9日にア-メダバードのBJMCにおいて臨床的に元気な赤ちゃんを出産し
 ました。彼女は入院後、微熱症状がありました。妊娠中に発熱症状はなく、過去3か月間にわたり海外渡航
 歴もありませんでした。患者の検体をデングウイルス検査のためBJMCにあるウイルス調査診断研究所に照
 会し、その後ジカウイルスが陽性であることが判明しました。患者は1週間後(2016年11月16日)に退院
 しました。検体はプネの国立ウイルス学研究所においてRT-PCR法によりジカウイルス陽性であることが再
 確認されました。
・ 症例3:2017年1月6日から12日の間にANCサーベイランスにより合計111の血液検体がBJMCに集められ
 ました。そのうち22歳の妊婦(37週目)が検査の結果、ジカウイルス陽性でした。

公衆衛生上の取り組み
・ ジカウイルス感染症のアウトブレイクの予防や他のアウトブレイクの拡大の封じ込めを行うためにジカウ
 イルス感染症の国家ガイドラインと活動計画が共有されています。
・ (バイオテクノロジー局の)局長と(健康調査局の)長官と共に(保健・家族福祉省の)大臣の下、省庁
 間のタスクフォースが設置されました。新興、再興感染症の監視を専門とする技術グループである共同監視
 グループはジカウイルス感染症の世界的状況を定期的に見直しています。
・ 全ての国際空港や港においてジカウイルス感染症に関する情報を提示しています。
・ 空港会社に属する空港保健担当者と国立疾病管理センターと国家蚊媒介性疾患対策プログラムは空港構内
 の適切な蚊の制御方法を監視しています。
・ 統合疾病監視プログラム(IDSP)がコミュニティ内の急性熱性疾患の集団発生を追跡調査しています。
・ プネにある国立ウイルス学研究所とデリーにある国立伝染病研究所(NCDC)に加え、25の研究所も
 また、研究診断のためにインドの医学研究評議会(ICMR)によって強化されています。さらに3つの昆虫
 研究所において蚊の検体のジカウイルス検査を実施しています。
・ インドの医学研究評議会(ICMR)は34,233ものヒトの検体と12,647もの蚊の検体からジカウイルスの有
 無について検査しました。これらのうち500近い蚊の検体がグジャラート州アーメダバードのバプナガー地
 区から収集され、検査の結果ジカウイルスは陰性でした。
・ インド保健・家族福祉省のThe Rashtriya Bal Swasthya Karyakram(RBSK)は55の医療機関拠点にお
 いて小頭症を監視しています。今までのところこれらの拠点から小頭症の症例数の増加や集団発生の報告は
 ありません。
・ ユニセフとの協議のもと中央保健教育局によってリスクコミュニケーションの資料が最終決議されていま
 す。

WHOのリスク評価
 この報告書はインドにおけるジカウイルス感染症の最初の症例について記述し、このウイルスの流行に関する証拠を示すものとして重要です。これらの知見はジカウイルスの伝播レベルが低いことを示唆していますが、近い将来新たな症例が起こるかもしれません。ウイルスの循環と地理的な広がりの強さをより特徴づけ、ジカウイルスに関連した合併症を監視するためにサーベイランスを強化する努力は維持されるべきです。ジカウイルスは東南アジアで流行していることが知られており、これらの事実では世界的なリスクアセスメントは変わりません。WHOはジカウイルスの世界的な疫学をより理解するために加盟国に同じような発見を報告するように奨励しています。
 有害な媒介動物であるヤブカが存在する地域においてジカウイルスがさらに拡大するリスクについて、世界中の様々な地域におけるこれらの蚊の広範囲に及ぶ地理的分布を考慮することが重要です。WHOは疫学的状況を監視し、最新の入手可能な情報に基づきリスクアセスメントを実施し続けています。

WHOからのアドバイス
 蚊の予防と制御は、発生源の削減(繁殖地の除去と改善)や蚊とヒトの接触を減らすことによって蚊を減らすことに依存しています。保健当局はアウトブレイク中に殺虫剤の散布を実施するようにアドバイスするかもしれません。WHOの殺虫評価スキームにより推奨されている殺虫剤は、比較的大型の貯水容器でも殺虫剤として使用できます。
 ハイリスクな地域へ渡航する人、特に妊娠中の女性は蚊に刺されないようにするための基本的な予防措置をとるべきです。これらの予防措置には忌避剤の使用や明るい色の服装や長袖のシャツや長ズボンを着用し、部屋に蚊が侵入するのを防ぐための網の設置が含まれます。
 WHOは現在の入手可能な情報に基づき、インドに対し渡航や貿易の制限を行うことを推奨してはいません。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Zika virus infection – India
Disease Outbreak News 26 May 2017
http://www.who.int/csr/don/26-may-2017-zika-ind/en/