(No.50)

中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染症-サウジアラビア
6月14日更新

 2017年6月1日から6月10日の間に、サウジアラビア国際保健規則(IHR)担当窓口は新たに同期間で3例の死亡例を含む35人の中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染例を報告しました。また以前に報告にあった1例(既報:WHO-DON 2017年6 月6 日更新分、関西空港検疫所海外感染症情報2017年-47の症例5)の死亡について報告しました。

症例の詳細情報
 各患者の詳細が書かれた一覧表は出典先よりダウンロードできます。
 新たに報告された35人のうち32人については3カ所のMERS集団感染と関連しており、うち2集団同士は関連があります。3集団については以下の通りです。

第1集団
 このMERS集団感染はリヤド州リヤド市の病院で確認されています。この集団に関連した23人の感染者がこれまでに確認されており、初発例(6月1日報告された47歳男性)を含んでいます。医療従事者、家庭内での接触者が14人含まれており、患者として病院内で接触した7人が含まれています。

第2集団
 このMERS集団感染はリヤド州リヤド市の別の病院で発生しています。この集団発生は上記第1集団と関連があります。この集団で初めて診断された患者は第1集団感染のあった病院を救急受診しています。現在、無症候ですが先の病院受診後に現在の病院で人工透析を継続して受けています。現在までこの第2集団には6人の感染者が含まれており、第1集団の患者、家庭内での2次接触者、接触した医療従事者が含まれています。

第3集団
 このMERS集団感染はリヤド州リヤド市のさらに別の病院で発生しています。現在までにヒトコブラクダと接触歴のある初発例を含む4人が感染しており、残りの3人は初発例と接触のあった医療従事者で無症候あるいは軽症です。

公衆衛生上の取り組み
 サウジアラビア保健省は各感染例とその接触者の評価を実施し、さらなるヒト-ヒト感染が拡大しないよう、3カ所のアウトブレイクがコントロールされるように対策を実施しています。それらの対策は以下のようなものです。

・診断確定例の適切な隔離
・患者との接触者、医療従事者、地域での接触者に対し、活発な追跡調査を実施
・リスクの高い、あるいは低い接触者を同定し、ともに14日間の潜伏期間における健康状態のモニター及
 び、高リスクの接触者に対しては症状の有無に関わらず検査を実施
・定期的に患者と接触者のリストをラインアップし、感染源の同定と院内でヒト-ヒト感染が発生した理由と
 の関連付けをするための疫学的解析を実施
・症例定義に基づき、患者と医療従事者の間で疑い例を調査
・一般環境における適切な清浄化と消毒、アウトブレイクの現存あるいは既往のある病院の診療科においては
 特別の注意を持って徹底した清浄化と消毒を厳格に決まりに則って実施すること
・救急科及び外来では呼吸器疾患について視覚化されたトリアージを行い、呼吸器症状の在る患者を早期に発
 見し、トリアージフォームに適切に記載できるトレーニングされた看護師を24時間毎日配置できるように
 することを実行すること
・すべての医療従事者に対しては患者早期発見のための症例確定、隔離予防策の実施、個人防護衣(PPE)の
 適切な選択と着脱、手指の衛生、環境の清浄化と消毒について強化トレーニングを実施
・医療従事者にN95マスクのフィットテストを実施
・手指消毒器、PPE、環境表面消毒薬、ポータブルHEPAフィルター、燻蒸消毒器などの感染予防備品が確実
 に使用可能であること
・ウイルスの他国拡散予防が医学的にクリアできていない場合の医療従事者の渡航は許可されないという方針
 を遵守させること

 ヒトコブラクダと接触の在った患者については農業省がヒトコブラクダおけるMERS-CoV感染について調査中です。
 WHOには2012年以降、全世界で2,015人のMERS-CoV感染の検査室確定例が報告されており、そのうち少なくとも703人が関連死しています。

WHOによるリスク評価
 MERS-CoVはヒトに重篤な感染症状ひき起こし、結果的に高い死亡率をもたらしています。なおかつヒトからヒトへの感染を起こします。現在までヒト-ヒト感染は主に医療環境で起こっています。
 追加された患者報告からみると全体的なリスクは変化していません。WHOは中東から今後もあらたなMERS-CoV感染の報告例が発生すると予測しています。また動物や動物由来の製品(例としてヒトコブラクダとの接触に引き続いて)に曝露された場合やヒトの感染源(例として医療環境で)に曝露された場合に感染した他国のヒトによって外国にもたらされ続けるでしょう。WHOはサウジアラビアの保健省と密接に活動しており、ウイルスの変異や疫学的状況についてのモニターを継続しています。また入手可能な最新の情報に基づいてリスク評価を行っています。現在まで持続的なヒト-ヒト感染が起こっている、あるいはウイルスの特徴や、疫学的パターンが以前の報告とは異なっているという徴候は認めていません。

【出典】Emergencies preparedness, response
Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV) – Saudi Arabia
Disease outbreak news  13 June 2017
http://www.who.int/csr/don/13-june-2017-mers-saudi-arabia/en/