(No.51)

伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型-シリアアラブ共和国
6月14日更新

 2型の伝播型ワクチン由来ポリオウイルス(cVDPV2)のアウトブレイクが、シリアのディルアッズール行政区域で確認されました。2017年3月5日と5月6日麻痺発症の急性弛緩性麻痺(AFP)患者2人と4月17日のAFP患者との接触者からの便検体から分離されたVDPV2の3つの株において遺伝的に同一の系統であることが明らかになりました。アルマヤディーンは2013年のシリアにおける1型の野生型ポリオウイルス(WPV1)のアウトブレイクの震源でもありました。アグレッシブな多国間のポリオアウトブレイク対応によりWPV1アウトブレイクは制圧され、2014年1月21日以降シリアでは報告されていません。

公衆衛生上の取り組み
 2017年5月に最初のVDPV2が確認されて以降、同行政区域おいて、とくにアルマヤディーン地区では、AFPサーベイランスが強化されてきました。2017年6月6日時点で、58人のAFP患者が今年この行政区域で報告されています。VDPV2が陽性であった上述の2例に加えて、さらにポリオウイルスが陰性であった11例についても、残余サンプルが検査室で検査中か、検査室へ輸送途中となっています。
 cVDPV2のアウトブレイクの確認に引き続いて、国際的に合意されたアウトブレイク対応プロトコールに沿って、単価の2型経口ポリオワクチン(mOPV2)の追加接種活動の計画を含むアウトブレイク対応が計画中です。
 予防接種へのアクセスは、ディルアッズールにおいて広まっている治安不良のため障害されていますが、この行政区域では、2016年の開始以来ポリオと他のワクチン予防可能疾患に対する数回の予防接種キャンペーンが部分的に実施可能でした。近々では、2017年の3月と4月に、二価の経口ポリオワクチン(bOPV)を用いた二つのキャンペーンが実施されました。最後の完全な三価経口ポリオワクチン(tOPV)キャンペーンは2015年10月に実施されましたが、一方2016年最初の4ヶ月に実施されたキャンペーンでは、ディルアッズール行政区域の一部の標的人口に到達しただけでした。シリアが、2008年に不活化ポリオワクチン(IPV)の二回接種を定期予防接種に導入したことについて述べておくことは適切です。シリアは、2016年5月1日からtOPVからbOPVへの切り替えを行いました。
 住民全体の免疫レベルの評価や新たなAFP例の能動的調査の強化を含む、詳細なリスク分析は現在更新中です。サーベイランスと予防接種活動は近隣国においても同様に強化されます。

WHOのリスク評価
 cVDPV2の検出は、リスクと結果としてのポリオウイルスの伝播を最小化するために、高いレベルで定期予防接種を維持することが重要性であることを強調しています。また、そのような事象が、定期予防接種を通して高い集団免疫を維持することを妨げる持続的でかなりの程度の治安不良が存在する地域や領域におけるリスクを強調しています。VDPV2の伝播を迅速に止めるためには、確固たるアウトブレイク対応が必要とされています。世界保健機構(WHO)は、疫学的状況と実施されるアウトブレイク対応方法の評価を続けています。

WHOからのアドバイス
 mOPVとIPVによる予防接種対応に情報提供するために、可及的速やかに現在行われているリスク評価を完遂することが重要です。地理的な予防接種対応のスケールは、リスク評価の所見に則ったものになります。予防接種対応では、可能な限り高い予防接種率を達成することが決定的に重要です。困難であり、かつ挑戦でもある地域の治安情勢に対しては、適切な戦略が見いだされ、対応の実施のために利用されるでしょう。強化されたAFPサーベイランスは継続されるべきです。
 全ての国、とくにポリオ流行国や地域に頻回に渡航したり接触したりする国々は、どのような新たなウイルスの輸入であっても迅速に検出し、迅速な対応を提供するために、サーベイランスを強化することは重要です。国、領土と地域は、またどのような新しいウイルスの侵入も最小化するために地区レベルでの定期予防接種率を一律に高く維持するべきです。WHOの「国際旅行と健康」は、ポリオ流行地への全ての旅行者に対してポリオに対して完全に予防接種されることを勧告しています。感染している地域からの居住者(そして4週間を超えて滞在する訪問者)は、旅行に先立つ4週間から12ヶ月の間に、1回のOPVまたはIPVの追加接種を受けるべきです。

 国際保健規則(2005年)の下に招集された緊急委員会のアドバイスとして、ポリオウイルスの国際的な拡散を制限する努力が、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」として残っています。ポリオウイルスの伝播が起きている国は「一時的な勧告」の対象となります。「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」の下に発行された「一時的な勧告」に従って、ポリオウイルスに感染したいかなる国もアウトブレイクを国の公衆衛生非常事態として宣言し、全ての国際的な旅行者の予防接種を考慮すべきです。

【出典】
Circulating vaccine-derived poliovirus type 2-Syrian Arab Republic
WHO Disease outbreak news
13 June 2017
http://www.who.int/csr/don/13-June-2017-polio-syrian-arab-republic/en/