(No.55)

ナイジェリアにおけるラッサ熱
6月29日更新

 ラッサ熱はナイジェリアを含む西アフリカ諸国で風土病的に存在する急性ウイルス性出血熱です。2017年6月9日までに104人の死亡者を含む501人の患者が2016年12月以降の今回のアウトブレイクにおいて報告されています。報告された数値のうち189人が再分類され、175人は診断が確定していますがそのうち、59人が死亡、疑い例14人(全員が死亡)となっています。
 今回のアウトブレイクではナイジェリアにおける17の各州(アナンブラ、バウチ、ボルノ、クロスリバー、エボニー、エド、エヌグ、ゴンベ、カドゥナ、カノ、コギ、ナサラワ、オグン、オンド、プラトー、リバーズ、タラバ)で2017年6月9日現在、すくなくとも1人の診断確定患者が発生しています。また9州(アナンブラ、バウチ、クロスリバー、エド、タラバ、ナサラワ、オンド、プラトー、カノ)では今も患者が発生しています。

公衆衛生対策
 現在進行中の対策は州あるいは連邦レベルで実施されています。世界保健機関(WHO)、アメリカ合衆国疾病管理予防センター(CDC)テキサス大学医学部(UTMB)、アフリカ実地疫学ネットワークと共同でラッサ熱レビュー週会議を共同開催しています。
 以下のような対策が実施されています。

・患者発生のあった全ての州でのサーベイランスの強化、ラッサ熱症例の連邦レベルでの報告と接触者の追跡
 調査が州のサーベイランスチームを通して患者発生のあった州で実施されています。
・すべての州で報告のあった例をラインでリストアップし、VHFデータベースにそれらのデータはアップロー
 ドされています。
・ラッサ熱治療センターが患者発生のあった州で設立され、患者の治療サポートにあたっています。センター
 では感染予防、コントロールとともに患者の治療を受け持っています。

WHOによるリスク評価
 ラッサ熱は急性ウイルス出血熱です。人への感染はげっ歯類の糞尿で汚染された食物や家事用品との接触で起こります。ヒト-ヒト感染や実験室内感染も起こります。ラッサ熱はナイジェリアや西アフリカ諸国で風土病的に存在し、毎年これらの国々の異なった地域でアウトブレイクが見られます。発生のピークは12月から6月にかけてです。
 全体的に見て、今回のナイジェリアでのアウトブレイクのリスクアセスメントとしては鎮静に向かっている傾向です。このことを考慮しますと、現行の対策が全般的な対応と準備に焦点を当てているので更なる大スケールのアウトブレイクが起こるリスクはあまり高くないと思われます。しかしながら詳細なフォローアップ、新規患者の発生調査、接触者の追跡、検査のサポート、疾病の警告(地域及び医療従事者に対して)は継続が必要です。ナイジェリアでは州間のヒトの移動が絶えずありますが、スケールの大きな感染や、アウトブレイクが見られたと言う報告はありません。しかしナイジェリアからベニン、トーゴにもたらされた孤発例は報告されています。

WHOによるアドバイス
 ラッサ熱の予防は、齧歯類が家屋に侵入するのを阻止するため地域レベルでの良好な衛生状態を保つことにかかっています。医療環境においてスタッフは患者の予想される診断名が何であっても、患者をケアするときには常に標準感染予防策を実施しなければなりません。
 まれなケースとしてはラッサ熱が存在する地域からの旅行者が他国にもちだすことがあります。他の熱帯地域特有の感染症の方がより一般的ですが、西アフリカから帰国した発熱患者を診た場合にはラッサ熱の診断も考慮しなければなりません。特にラッサ熱が風土病的に存在する国において田舎や病院で感染の機会があったような場合は考慮する必要があります。ラッサ熱が疑われる患者を診察した医療従事者は、即座に地域あるいは国の専門家にアドバイスをもらい、検査が受けられるようにしなければなりません。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Lassa Fever – Nigeria
Disease outbreak news  28 June 2017
http://www.who.int/csr/don/28-june-2017-lassa-fever-nigeria/en/