(No.60)

葬儀参列と関連した髄膜炎菌性敗血症患者-リベリア
7月7日更新

 この報告は2017年5月5日に記載され、同月10日に更新された本感染症情報(WHO-DON)、リベリアにおける原因不明死亡集団発生の更新情報です。

 2017年4月25日、リベリアの保健省(MOH)は世界保健機関(WHO)とそのパートナーに対してシノー県における原因不明の突然死集団発生を報告しました。この事件は同年4月23日に始まり、当時11歳の女児が同年4月22日に宗教リーダーの葬儀に参列したのち下痢、嘔吐、精神錯乱状態で入院しました。11歳女児は入院後1時間以内に死亡しています。

 4月23日から5月7日の間に13人の死亡と1人の神経学的後遺症を含む31人が3カ所(シノー県、グランド・バッサ県、モンセラド県)において葬儀に参列したことに関連して罹患しました。患者の多くは発熱はなく、腹痛、下痢、嘔吐、精神錯乱状態を呈していました。何人かの患者においては紫斑や点状出血を認めていました。殆どの患者には家庭や学校における社会的な関連がありました。2人を除いて全員が葬儀に参列しており、結果的に彼らが初発例との接触者であることが判明しました。

 2017年5月8日に保健省はパートナーと国民に米国疾病予防管理センター(CDC)で実施された検査の結果、血清型C群の髄膜炎菌が患者検体で陽性であったことを報告しました。そのため今回のアウトブレイクは髄膜炎菌によると分類されました。31人のうち14人は、後に血清型C群髄膜炎菌がリベリアの国家委託研究所で臨床検体をPCR検査した結果から診断確定されたものと、臨床的に劇症紫斑病を認めたことから診断されました。この検査結果は南アフリカのヨハネスブルグにある国立労働衛生研究所(NIOH)や国立感染症研究所(NICD)で確認され、さらには3人の患者についてはフランスのパスツール研究所での血清学的検査でも確認されました。今回のアウトブレイクの時間的な特徴から、共存する因子が存在するのではないかとの仮説がなされています。

 さらに2017年5月8日に保健省はパートナーと国民に対して、CDCは3例からの尿検体について中毒性疾患について検査を実施したが中毒を示唆する結果は得られなかったことを報告しました。検体は中毒性の金属や、殺虫剤の代謝産物などについて検査をされています。

 2017年6月20日保健省は葬儀の際にだされた飲料水、ソフトドリンク、食品のサンプルについて、オーストリア・ウィーンの分析化学センターで実施された毒物検査の結果、中毒を示唆する結果は認められなかったことを報告しました。検体は真菌、細菌性毒素600以上についても検査されましたが、検出できなかったかもしくは正常値範囲内でした。

公衆衛生上の取り組み
 WHO、CDC、アフリカ実地疫学ネットワーク(AFENET)その他のパートナーの協力により、保健省は警告の翌日から現場での調査を開始しましたがアウトブレイクの初めから何の疾患も同定されてはおらず、エボラウイルス病のアウトブレイクは今回の警告があって24時間後には除外されました。
 リベリアの国立衛生研究所は対策をたちあげました。WHO、CDC、国連児童基金(UNICEF)、国境なき医師団(MSF)はフィールドでの対策、地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GOARN)を通して国際協力と情報共有の再強化を実施しました。
以下の様な対策が実施されました。

・シノー県の患者の殆どはシノー県の首都であるGreenvilleの病院で管理され、エボラウイルス病のプロト
 コールに基づいて治療を受けました。
・感染、予防、コントロール対策が現地の病院で実施されました。
・有症者の捜索がおこなわれ、葬儀への参列者と患者への接触者については21日間のフォローアップが実施
 されました。
・2人の患者については剖検が実施されました。
・70の検体(58の臨床検体、12の食品サンプル)が集められてマルギビ県の国家委託研究所、米国、フラン
 ス、南アフリカ、オーストリアに送られました。
・化学的予防がすべての葬儀参列者と患者への接触者、医療従事者、葬儀社職員に実施されました。
・血清型C群髄膜炎のワクチン接種戦略については議論されましたが2次的な感染拡大がなかったことから
 実施されませんでした。
・社会的動員がUNICEFのサポートのもとで実施されました。

WHOによるリスク評価
 今回のアウトブレイクに対しては疫学的に明確な解釈ができていないので、再燃のリスクについては除外できません。しかしながら今回の髄膜炎の疫学的な解釈からすれば再燃のリスクは低いと考えられます。
 今回の事件に対して有効で時期を失せずして実行された対策は、2014年のエボラウイルス病の大きなアウトブレイクを経験したリベリアで養われた専門的知識の賜物といえます。それにより事件を早急に同定し、アウトブレイクの原因としてのエボラウイルス病を除外し、接触者を同定し、フォローアップし、国はヒトと環境からの検体検査をパートナーと共同で実施しました。結果として本疾患の原因を同定することに繋がりました。

WHOによるアドバイス
 WHOは利用可能な情報に基づいて今回の出来事に関してリベリアへの渡航や交易に関していかなる制限も推奨していません。
 WHOはリベリアにおけるルーチンのサーベイランスに髄膜炎菌性髄膜炎とともに流行を起こしうる疾患として髄膜炎菌性敗血症も含めることを推奨します。

【出典】
Emergencies preparedness, response
Meningococcal septicaemia associated with attending a funeral – Liberia
Disease outbreak news 6 July 2017
http://www.who.int/csr/don/06-july-2017-meningococcal-septicaemia-liberia/en/