(No.63)

中国における鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例
7月20日更新

 2017年6月19日、中国の国家衛生・計画出産委員会(NHFPC)は世界保健機関(WHO)に対し、同国本土において新たに5人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例が検査で確認されたことを報告しました。2017年6月24日、NHFPCはWHOに同国本土においてさらに10人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例が検査で確認されたことを報告しました。6月30日、NHFPCはWHOに対して新たな6人のヒト感染例が検査で確認されたことを報告しました。

症例の詳細情報
 2017年6月19日、NHFPCは合計5人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例を報告しました。発症日は2017年4月25日から6月6日の範囲です。この5人の感染例のうち1人が女性でした。年齢は41歳から68歳で中央値は55歳でした。これらの症例は、次の地域から報告されています;北京市(1人)、広西チワン族自治区(1人)、貴州省(1人)、湖南省(1人)、浙江省(1人)です。報告時点で1人が死亡し、4人が重症肺炎との診断を受けています。8人が家禽か生鳥市場への曝露歴があり、2人は家禽への曝露歴に関する情報がありませんでした。集団発生の報告はありません。
 2017年6月24日、NHFPCは新たに10人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例を報告しました。発症日は2017年6月5日から6月19日の範囲です。全員が男性でした。年齢は31歳から79歳で中央値は53.5歳でした。これらの症例は次の地域から報告されています;安徽省(1人)、北京市(2人)、貴州省(1人)、河北省(1人)、内モンゴル自治区(1人)、江蘇省(1人)、四川省(2人)、天津(1人)です。陝西省で最近報告された2人の患者は内モンゴル自治区で曝露されたと思われますが、2013年のウイルスの出現以来、本例が内モンゴル自治区における最初の感染例となります。報告時点で2人が死亡、8人が肺炎(4人)か重症肺炎(4人)のいずれかの診断を受けています。9人が家禽か生鳥市場への曝露歴があり、1人は家禽への曝露歴に関する情報はありませんでした。
 2人からなる1件の集団発生が報告されています。どちらも四川省の攀枝花市から報告されており、同じ生禽市場で曝露されています。この集団発生は以下のようになります。

・79歳男性、2017年6月12日に症状が現れ、6月15日に重症肺炎で入院となり、その後6月21日に死亡しま
 した。彼は生禽市場の上階に暮らしていて、いつも市場を通っていました。
・48歳男性、2017年6月7日に症状が現れ、6月11日に重症肺炎で入院となりました。彼は同じ生禽市場で家
 禽の販売者でした。

 2017年6月30日、NHFPCは新たに6人の鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例を報告しました。発症日は2017年6月11日から6月23日の範囲です。3人が男性でした。年齢は4歳から72歳で中央値は37.5歳でした。これらの症例は次の地域から報告されています;貴州省(1人)、山西省(1人)、雲南(4人)です。報告時点では、関連した死亡例は報告されていません。4人が肺炎(1人)か重症肺炎(3人)のいずれかの診断を受けています。インフルエンザ様疾患サーベイランス(ILI surveillance)を通して診断された2人の軽症例のうち、1人は市場での家禽への曝露がある子どもで、もう1人は大人でした。5人が家禽か生鳥市場への曝露歴があり、1人は家禽への曝露歴に関する情報がありませんでした。これらは、雲南省でウイルスに曝露された最初の症例になります。以前の雲南省からの報告例は、近隣省で曝露されたとようです。

 2人からなる1件の集団発生が報告されていて、以下のようになります。

・雲南省文山市の33歳の女性は2017年6月17日が初発で、同日に重症肺炎で入院しました。明らかな家禽へ
 の曝露歴はありません。
・雲南省文山市の42歳の女性(上記女性の義理の姉)は、上記女性を病院へ見舞いに行った後、6月21日に
 軽い症状が出現し、6月24日に入院しました。症例調査から、患者は生禽市場の近くで店を経営しており、
 発症前にその市場で生きた家禽を毎日のように購入していたことが判明しました。調査により感染源は生禽
 市場におけるウイルスへの曝露であると結論付けました。

 2013年初期から今日まで、検査で確定した1,554例の鳥インフルエンザA(H7N9)ヒト感染例が国際保健規則(IHR)の報告システムを通して報告されました。

公衆衛生上の取り組み
中国政府は国家レベルと地方レベルで以下のような予防策を講じています。

・リスク評価、予防および対策強化のための省に対するガイダンスを継続しています。
・生鳥市場の衛生管理と地域間輸送に焦点を絞った感染対策の強化を継続しています。
・効果的な予防と管理の対策を提供するため詳細な感染源調査を実施します。
・致死率を下げるために鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例の早期発見と治療を継続します。
・自己防衛の指導と共にリスクコミュニケーションや情報を一般市民に継続して提供しています。
・感染予防や感染制御のさらなる指導を提供するために、ウイルスによる汚染範囲やウイルスの変異の規模を
 明らかにし、ウイルス学的サーベイランスの強化を行います。

WHOによるリスク評価
 今までヒトの症例が報告されていない中国の他の省における新たな鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染の散発例も予想されます。同様に、散発的な鳥インフルエンザA(H7N9)のヒトの感染例が中国と国境を接している近隣諸国で検出されることが予想されないということはなさそうです。鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染の小さな集団発生は、同じ病棟の患者の感染を含めて報告されているものの、現在の疫学的かつウイルス学的証拠は、ヒト-ヒト間で継続して伝播する能力を獲得していないことを示唆しています。従って、コミュニティレベルでさらに拡散する可能性は低いと考えられます。

【出典】Emergencies preparedness, response
Human infection with avian influenza A(H7N9) virus – China
Disease outbreak news  19 June 2017
http://www.who.int/csr/don/19-july-2017-ah7n9-china/en/