(No.70)

チクングニア熱-フランス
8月29日更新

 2017年8月23日現在、フランス南東部のプロヴァンス-アルプス-コートタジュール地域で4人がチクングニア熱と診断され、チクングニア熱の国内感染が確認されました。さらに、1人が臨床診断され、8人に感染の疑いがあります。
 最初に確定診断された症例の発症日は2017年8月2日で、その後8月17日までの間に、確定診断された4人と臨床診断された1人が発症しました。
 これらの13人の患者(確定診断された4人、臨床診断された1人、感染の疑いがある8人)は3歳から77歳で、全員が地域保健局(ARS)によって公表されたとおりヴァール県カネ・デ・モールの同じ区域の住民でした。
 フランスでチクングニア熱が報告されたのは今回が初めてではありません。2010年に同じ地域で2人、また2014年にはモンペリエで11人の国内感染例が報告されています。しかしながら、チクングニア熱は南ヨーロッパの新興感染症で予期しないアウトブレイクを起こすと考えられます。媒介蚊であるヒトスジシマカは地中海地域の大部分およびそれ以上の地域に定着しています。

フランス国内当局による公衆衛生上の取り組み
 国家対応計画により、次の措置がとられています:
・患者の自宅周りや職場における媒介蚊の制御
・全ての疑い症例に対する血液検査
・地域保健機関によって調整されたリスクコミュニケーション

 2017年8月10日昆虫学的調査により、罹患地域におけるヒトスジシマカの存在が確認されました。また、罹患地域では献血事業が延期されています。

WHOによるリスク評価
 国際的な拡大の潜在的リスクがあります。
 その根拠として:
・地中海地域全体にヒトスジシマカが定着。
・過去に、この媒介蚊がチクングニア熱のアウトブレイクを維持する能力をもっていることが示された。
・現在の罹患地域は特に夏季において観光客に人気で、イタリア(ヒトスジシマカの個体郡が定着している) 
 と国境が近い。

 チクングニア熱の感染は2007年に初めてヨーロッパで報告され、それはイタリア北東部で発生しました。このアウトブレイク中に205人の患者が記録され、ヨーロッパにおけるヒトスジシマカによる蚊媒介性アウトブレイクが起こりうることが確認されました。
 チクングニア熱の無症候感染は検出できず、そのため感染拡大リスクが増大します。さらに今後数ヶ月の間に罹患地域で降水量が増えるため、2014年に観測されたような感染拡大の原因になる可能性があります。

WHOによるアドバイス
蚊に刺されることの予防
 日中蚊に刺されることを防ぐために、フランスのこの地域に滞在あるいは旅行中の人々は基本的な予防策が必要です。これは虫除けの使用、長袖と長ズボンの着用、蚊の侵入を防ぐため部屋に網戸を設置することです。
 虫除けは製品ラベルの指示に厳密に従い、露出した皮膚や衣服に塗布できます。虫除けにはDEET、IR3535またはイカリジンが含まれている必要があります。蚊に刺されずに眠るため、蚊帳、エアコン使用または窓の網戸を使用する必要があります。蚊取り線香や他の殺虫剤噴霧器の使用もまた屋内で蚊に刺される事を減らす可能性があります。

媒介蚊の制御
 ヒトスジシマカは水で満たされた容器内で繁殖します。樹洞や岩間の水たまり、さらに人工的な水の入れ物である未使用の車両タイヤや植物の鉢の受け皿、雨水を貯めておく樽や水槽、排水枡も含まれます。

 媒介蚊の予防と制御は、蚊の繁殖を支えるこれら水で満たされた容器中の生息地を減らすことに大きく依存しています。アウトブレイク期間に、室内空間で殺虫剤を噴霧することは蚊の幼虫を殺すと共に、飛んでいる蚊を殺すことにも用いられます。
 WHOは蚊のモニタリング強化と、必要に応じてヨーロッパにあるアルボウイルス病ネットワークを通じた追加制御策の実施を奨励しています。また医師の間や、罹患した地域社会での社会動員を通じて、再興した蚊媒介疾患への意識を高めることが必要です。

血液の安全性
 国立血液サービスおよび/または当局は疫学情報を監視し、輸血による全てのチクングニアウイルス潜在感染を特定するために警戒を強化することが必要です。輸血による他の蚊媒介感染の防止措置に則って、疫学的状況とリスク評価に基づき、適切な安全策が実施される必要があります。

【出典】WHO Emergencies preparedness, response
    Chikungunya – France
Disease outbreak news  25 August 2017
http://www.who.int/csr/don/25-august-2017-chikungunya-france/en/