(No.71)

フランス-フランス領ギアナにおける黄熱
8月31日更新

 2017年8月22日フランスの国際保健規則(IHR)担当窓口は、フランス領ギアナにおいてワクチン接種歴が不明の43歳ブラジル人女性が黄熱により死亡したと報告しました。
 この患者は2017年8月7日にカイエンヌ(Cayenne)病院に入院し、8月9日劇症肝炎のため死亡しました。彼女はサンテリー(St.Elie)(フランス領ギアナの北部の中心地)にある金鉱地を訪れていた可能性があります。彼女の移動経路を特定するための調査が現在進行中です。
 2017年8月21日、アルボウイルスの国立リファレンスセンターであるカイエンヌパスツール研究所で行われたリアルタイムPCR法により、この患者は確定診断されました。1998年以来、この地域で初めて診断された症例です。
 フランス領ギアナでは、黄熱は風土病と考えられています。黄熱予防接種が必須であるため全体的な予防接種率は良好ですが、秘密の労働者や不法労働者といった特定の集団での予防接種率は低いかもしれません。したがって、合法・非合法の金探鉱地域では予防接種のキャッチアップが実施されるでしょう。

公衆衛生上の取り組み
フランス領ギアナ保健当局はいくつもの公衆衛生対策を行っています:
・最初の調査が実施され、さらなる調査が進行中です。
・患者が訪れた特定の地域で、媒介蚊の制御が実施されています。これらの地域には、カイエンヌとクールー (Kourou)の保健施設、サンテリーの周辺地域、そしてバス-オヤポク(Bas-Oyapock)川地域が含まれま
 す。
・合法・非合法の金鉱地における対象労働者について、予防接種キャッチアップの実施が検討されています。
・フランス領ギアナのそれらの地域住民に対して、黄熱の予防に関する連絡と通達が発信されています。

WHOによるリスク評価
 黄熱は急性出血性のウイルス疾患で、免疫力のない集団では急激な拡大と公衆衛生上の重大な影響を引き起こします。感染予防のためには、予防接種が最も重要な手段です。
 フランス領ギアナは黄熱の感染リスクがあると考えられています。1歳以上の旅行者には黄熱予防接種証明書が必要です。フランス領ギアナでは予防接種率は最適状態ですが、鉱山地域における秘密労働者などの一部の人々では準最適状態であり、従って黄熱感染のリスクがあります。
 正確な感染地域は現在調査中ですが、最も可能性が高い地図上の地域はオヤポク川に沿ったフランス領ギアナとブラジルの国境付近と考えられます。
 現段階と予備のデータによると、今回の患者は2017年1月以来ブラジルから報告されている森林型黄熱流行との疫学的関連はありません。異なる流行や黄熱ウイルスの進化についての潜在的な関連性を理解するため、他の国々の黄熱ウイルス株と配列比較が必要です。疫学的な状況や早期公衆衛生活動に関する現在利用可能な情報に基づくと、大規模な流行や国際的な感染拡大の可能性は存在しますが限定的で、予防接種によりさらに減少する可能性があります。

WHOによるアドバイス
南アメリカで黄熱感染の危険がある地域を訪れようとする旅行者へ、次のようなアドバイスを行っています:
・旅行者は、少なくとも10日前に黄熱のワクチン接種を行うこと。黄熱ワクチンの単回接種することで、持
 続的な免疫と黄熱に対し生涯にわたる防御を獲得することが可能です。追加接種は必要ありません。
・蚊に刺されないようにする対策をよく見てくこと。
・一般市民は黄熱の症状や徴候に注意すること。
・旅行中および黄熱感染リスクのある地域、特に感染の地域内サイクルが確立されている国(たとえば感染媒
 介蚊が存在する地域)から帰国する間は、医療機関を受診できるようにしておくこと。

 この患者の報告は、特に黄熱感染に好ましい生態系がある地域において、黄熱ワクチン接種の必要性を認識し維持することの重要性を示しています。
 ワクチン接種を旅行の10日前に行うことで、黄熱は容易に予防できます。ワクチンの単回接種は持続的な免疫と黄熱に対し生涯にわたる防御を獲得することが可能で、追加接種は必要ありません。
 したがってWHOはすべての潜在的流行地域を訪れる旅行者に対し、予防接種歴の管理を強化するよう加盟国に要請します。感染力のある媒介蚊が存在する地域においては、ウイルス血症を起こして帰国する旅行者が黄熱感染の地域内サイクルを確立させるリスクがあります。予防接種を受けることができない健康上の理由がある場合は、関係する当局からの証明が必要です。WHOは現在、今回の事例に関して入手できた情報に基づく判断として、フランス領ギアナへの旅行や貿易に関していかなる制限を行うことも推奨していません。

【出典】 
Emergencies preparedness, response
Yellow fever – France – French Guiana
Disease outbreak news
30 August 2017
http://www.who.int/csr/don/30-august-2017-yellow-fever-french-guiana/en/