(No.83)

マールブルグ病-ウガンダ
10月31日更新

 2017年10月17日、ウガンダ保健省はウガンダ東部のクウェエン(Kween)県でマールブルグ病の流行(発生)が確認されたことを世界保健機関(WHO)に通知しました。2017年10月19日、保健省は公式に流行を宣言しました。

 10月24日現在、5人が報告されています-確定例1人、確定例と疫学的関連がある可能性例1人、疑い例3人のうち2人は医療従事者です。

 時系列では、最初の症例-患者(可能性例)が30歳代の男性であり、娯楽として狩りをしておりコウモリが多数生息する洞窟の近くに居住していました。9月20日に高熱と嘔吐、下痢を発症し地元の医療保健センターに入院しました。マラリア治療薬には反応がみられませんでした。症状が増悪したため、近隣地区にある中央病院に転院しそこで同日死亡しました。検体は採取されませんでした。彼は伝統的な方法で埋葬され、約200人が参列しました。

 最初の症例の姉(確定診断例)が彼を看護し、葬儀に参加しました。彼女は病気になり、2017年10月5日、発熱と出血徴候のため同じ医療保健センターに入院しました。その後、同じ病院に転院しそこで死亡しました。彼女は伝統的な方法で埋葬されました。死後に検体が採取され、ウガンダウイルス研究所(UVRI)に送られました。10月17日、UVRIで逆転写ポリメラーセ連鎖反応(RT-PCR)検査が行われマールブルグウイルス感染が確定しました。すぐに保健省に通知されました。

 3人目の症例―患者(疑い例)は、最初の2例の兄弟でした。彼は家族を病院へ運ぶ手伝いをしていましたが、その後に症状が出現しました。彼は入院を拒否し、地域社会に戻りました。彼の居場所は現時点で不明ですが、彼を探す努力が続けられています。

 確定例と接触していた2人の医療従事者は、マールブルグ病に一致した症状を発症し、現在検査中です(疑い例)。マールブルグ病を除外する検査結果は、保留になっています。

 接触者の追跡とフォローが開始されました。10月23日現在、最初の症例と接触した66人と、2番目の症例と接触した89人を含む155人の接触者が2つの感染発生地区でリストに挙げられており、44人の医療従事者も含まれています。家族や地域社会の接触者数は、現在調査中です。

公衆衛生上の取り組み

・ウガンダ保健省は、WHOとそのパートナーの支援のもとに、このアウトブレイクに迅速に対応しました。
 診断確定から24時間以内に、感染が発生した2つの地区に迅速に対応する実地チームを配備しました。
・対策のための活動を調整するために、国家緊急対策チームが招集され、現場管理マネージャーを指定し、
 現場管理システム(IMS)の枠組みを実装し、地域緊急対策チームを設立し、そして緊急迅速対応計画を
 策定しました。
・マールブルグ病に対する活動が開始されました。これはサーベイランスや積極的な症例の調査、接触者の 
 追跡とフォロー、そして感染が発生した地域社会と医療保健センターの監視などです。
ž 感染発生地域には個人防護具が設置されました。医療従事者は高度の警戒体制におかれ、感染予防と制御
 (IPC)の手順や資格の検討を含む訓練が計画されています。保健センターと病院には隔離施設が準備
 されました。
・感染発生地域では安全で尊厳が保たれた埋葬のために、チーム訓練が行われています。
・偏見を減らし、報告と早期に医療行為を求める行動を促し、予防措置を受け入れるために、地域社会の
 関わりの実践と意識向上のキャンペーンが行われています。情報、教育また意思伝達の資料や文書は
 更新し作成されています。
・国際的なパートナーや利害関係者は、国レベルで関わっています。また必要に応じて国際的な支援や技術 
 援助を提供しています。WHOは追加のスタッフを派遣し、6つのウイルス性出血熱(VHF)キットを配備
 しています。緊急支援と対応拡大のために、WHOの緊急対応基金から資金が提供されています。WHOは
 「地球規模感染症に対する警戒と対応ネットワーク(GORAN)」においてパートナーに警告し、対応の
 ために国際支援を調整しています。
・ユニセフは、コミュニケーション活動と地域社会への関わりを支援しています。
・ 国境なき医師団は、治療センターの設立を支援するために配備されました。

WHOによるリスクアセスメント

 マールブルグ病は高い致死率(致死率23-90%)を持ち、新興で強い毒性を持つ伝染性感染症です。マールブルグ病の流行は稀です。このウイルスは感染した人や野生動物(例えばサル、オオコウモリ)の血液や体液および組織と接触することで感染します。

 実験的な治療と候補となるワクチンが、臨床試験で検討されています。

 ウガンダは以前、マールブルグ病を含むウイルス性出血熱流行の再興を管理した経験があります。ウガンダではコウモリの集団が生息している洞窟に入った鉱夫や旅行者の間で、歴史的に事件が報告されています。マールブルグ病の流行は、以下のように記録されています:

・2007年―4人。ウガンダ西部のイバンダ(Ibanda)県で2人の死亡を含む。
・ 2008年―関連のない2人。ウガンダ西部の洞窟を訪れた後に、オランダとアメリカに帰国した旅行者。
・ 2012年―15人。ウガンダ西部のイバンダ地区とカバレ(Kabale)県で4人死亡を含む。
・ 2014年―1人。ウガンダ中央部ムピジ(Mpigi)県の医療従事者。

 10月24日現在、5人が確認されています(1人は確定例、1人は可能性例、そして3人は疑い例)。流行は局地的です。ウガンダの保健当局はこの事件に迅速に対応し、流行を制御するための対策が迅速に行われました。近親者を含む家族、医療施設そして伝統的な埋葬儀式において、接触者の多さは対応における課題です。さらに、入院した症例は厳格な感染制御措置を受けずに一般病棟で管理され、可能性例の1人は一定期間入院を拒否しました。

 感染発生地域はケニアとの国境にある農村山岳地域にあり、エルゴン(Elgon)山国立公園の北側の斜面にあるカンパラ(Kampala)の北東約300kmに位置しています。エルゴン山の洞窟は主要な観光名所であり、洞窟に生息オオコウモリの巨大集落があり、オオコウモリはマールブルグ病を伝染させることで知られています。ケニア国境に感染地域が接近していることや、感染地域とケニアの間で国境を越える往来があることおよびコウモリの集落間あるいはヒトへのウイルスの潜在的な感染があることは、国境を越えて広がるリスクを増加させます。これらの要因は、国や地域レベルで高いリスクがあることを示しており、国際的なパートナーの支援を得て迅速で調整された対応が必要です。洞窟やその周辺地域を含むエルゴン山への観光に対しては注意を払い、適切なアドバイスと警告を与えます。この事例について、グローバルレベルでの危険性は低くなっています。

WHOによるアドバイス

 マールブルグウイルスのヒトーヒト感染は主に血液や体液と直接接触に関連しています。そして適切な感染制御措置がとられていない場合、医療関連のマールブルグウイルスの感染が報告されています。

 医療従事者でマールブルグウイルスの疑い例や確定例をケアする際は、全ての血液や体液への曝露、および汚染された可能性がある環境に対して防具なしで接触を避けるため感染制御措置を講じる必要があります。

 感染の発生した全ての保健区域では、接触者の追跡や活動性のある症例の調査などのサーベイランスを強化する必要があります。

 マールブルグ感染おける危険因子について認識を高め、ウイルスへの曝露を減らす個人防護はヒトの感染と死亡を減らすための重要な措置です。重要な公衆衛生上の伝達事項は以下の通りです:

・オオコウモリの集団が生息している鉱山や洞窟への長時間曝露によって発生するコウモリ-ヒト感染の
 危険を減らすこと。オオコウモリの集団が生息している鉱山や洞窟での作業や調査活動または観光客が
 訪問している間は、手袋やその他の適切な防護具を着用すること(マスクを含む)。
・感染した患者、特に彼らの体液と直接または濃厚接触から生じる地域社会におけるヒト-ヒト感染の
 リスクを減らすこと。マールブルグ病患者との濃厚接触は避けるべきです。自宅で患者のケアを
 行う際には、手袋や適切な個人防護具を着用すること。自宅で患者のケアをした後と同様に、病院にいる
 病気の親戚を訪問した後にも定期的な手洗いを行うこと。
・マールブルグ病が発生している地域社会は、人々に十分な情報を提供するように努めるべきです。
 地域社会による偏見を避けるために病気の性質を伝え、また治療センターに早期に紹介し、死体の埋葬
 などによる感染流行の拡散防止措置を促します。マールブルグ病で死亡した人々は迅速かつ安全に埋葬
 される必要があります。

 WHOは今回の事例で利用可能な最新の情報に基づいて、ウガンダまたは感染地域へのいかなる渡航や貿易の制限も推奨していません。エルゴン山のコウモリ洞窟に入る渡航者はコウモリによる曝露やヒト以外の霊長類と接触を避けてください。そして可能な限り手袋やマスクを含む防護具を着用してください。マールブルグ病の予防および制御措置の詳細については、WHOのマールブルグ病ファクトシートをご利用ください。

WHO Marburg virus disease factsheet
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs marburg/en/

【出典】Emergencies preparedness,response
Uganda
Disease outbreak news 25 October 2017
http://www.who.int/csr/don/25-october-2017-marburg-uganda/en/